①短編映画『彼女の告白ランキング』  2014年/21分/

ある日、男は彼女にプロポーズする。

すんなり承諾を貰えると思ってい た男だが、彼女に「告白したい事が17個ある」と告げられる。

果たして男は彼女の告白を全て受け止め、結婚を決める事 が出来るのか!?

 

②短編映画『ナポリタン』  2016年/19分/

人の話を聴かない会社員の川上は、ある日突然、

他人の言葉が「ナポリタン」としか聴こえなくなってしまう……。

 

③短編映画『テイク8』  2015年/19分/

自主映画監督の隆夫は、恋人の茜を花嫁役に「結婚」をテーマにした新作を撮影中。

残すは1シーンであったが、花嫁の父役が急遽来れなくなる。

やむをえず、見学に来ていた茜の本当の父、徹が代役を務める事になり…。

 

④短編映画『Last Wedding Dress』  2014年/24分/

上田貞夫(71)の妻 上田コトミ(70)は余命が近い。

貞夫がコトミに「最後にしたいことはあるか?」と聞くと、

コトミは「最後にウェディングドレスが着たい」と答える。

二人は結婚当時、金がなく結婚式を挙げられなかったのだ。

貞夫はコトミが死ぬ前にウェディングドレスを着せてやろうと奔走し始める…。

 

 

                                              (↑「テイク8」より)

 

イオンシネマは「カメラを止めるな!」の普及に力を入れているようで、まだ劇場公開が続いているうえに

上田慎一郎監督の過去作も公開してくれています。

 

 

このオムニバス映画に加えて、「恋する小説家」も全国のイオンシネマで扱っており、

板橋でも12月9日から公開するようです。

といっても、ミニシアターのようなロビー展示も手作りポップもなく、

あんまり応援してる気持ちは感じられず、客席もけっこうガラガラでしたけどね。

 

このショートフィルム4編は、すべて「結婚」「プロポーズ」に関するオムニバスで、

もちろんすべて、上田慎一郎脚本・監督・編集 ですが、作風はバラバラなので

どれかひとつでも気に入ってね!というチョイスなのかな?

 

①→ 荒唐無稽で度肝を抜かれる 

②→ 1つのアイディアで最後まで突っ切る

③→ 映画製作者たちのリアルっぽい体験

④→ いわゆる「いい話」

で、①と②はコメディ調、③と④は泣ける話になってます。


 

①「彼女の告白ランキング」 ★★★★★

 

実は、私はこれが一番ツボでした。

同棲生活の後に彼女にプロポーズしたら、指輪を返されてしまい

「どんなことがあっても好きと言ったけど、実は告白しなきゃいけないことがある」と。

しかも17も!

驚いていると、ちょび髭の変な司会者がやってきて、ランキング形式で発表するといいます。

ショックの少ないほうから発表していって、「許せない」と判断した時点で終了。

OKを出すと、次の順位を発表するということで、とりあえず、話を聞くことに・・・

 

まず、手始めの17位の発表。

「浮気してました」!!

過去形だから大昔のことかとおもったら、ごく最近のことで、しかも相手はこのちょび髭。

今はただの友人だけど、29,5回も関係をもったという。

これが17位と聞いて驚くも、もっと上位を聞きたい好奇心が先にたって、とりあえず許すことに。

 

「ゴリゴリに整形しています」

「日本人じゃありません」

「イスタンブールで出産経験」

「麻薬中毒」

「軽く超能力がつかえる」

「バツ7です」

「年齢は46歳」

 

ここまでくると悟りの境地で、やけくそになってOKを出しているうちに

 

第4位 「妊娠3か月です」

第3位 「あなたの子ではありません」

 

でも「あなたのDNAをもっている」と聞いて、次に進むと

 

第2位 「あなたのお父さんの子です」

(つまり、あなたの子どもではなく、あなたの弟だから、一応血のつながりはある)

そして、日付も変わったころ、第一位が発表されます。

第1位 「試験合格!」

 

なんだ!結婚への覚悟を試しただけなのか・・・と安堵もつかの間、

「試験」というのは、宇宙防衛軍の一員として認められるかの試験で、

これに合格したから、これからは本名のジンチャンムーとして

宇宙怪獣と戦って世界を守る使命があると・・・

 

同棲していた彼女は実は46歳の実の母であり、

それまでの告白もすべて真実だったのです。

・・・・という、ものすごい奇天烈な話です。

 

密室のシットコムでありながら、話は宇宙規模になる、ということでは

三谷さんの「ラヂオの時間」がよく例に出されますが、

これは、アパートの一室での会話から、宇宙怪獣まで出てくるんですから、もっとすごい。

しかも、全編21分で、製作費はわずか数万円だそうです。

 

前半の伏線がするすると回収される心地よさも格別で、

じっくり考えると辻褄があわないこともあるんですが、

そこはテンポの良さ、切り返しの鮮やかさで、全然気になりません。

シットコム好きにはたまらない作品ですね。

 

これが4つのうちの1作品ということで、どんどん期待が膨らんだのですが、

あとの3つはそうでもなかったので、あらすじは短めで・・・・

 

②「ナポリタン」 ★★☆☆☆

人の話をあんまり聞かない、といつも彼女からいわれている彼氏。

彼女の実家に行って結婚の許しをもらおうという日の前日、

眠っているうちにナポリタンの麺が耳から入り、

他の人のことばがすべて「ナポリタン」としか聞こえなくなってしまう・・・という、

ほぼ最後までそれで押し通す話。

 

③「テイク8」 ★★★★☆

結婚式場を舞台に映画の撮影中。

最後のシーンは、結婚式の当日、花嫁の父が花婿に

「娘を頼む」という一言で撮影終了なんですが、連絡ミスで花嫁の父役の俳優が来ていないのです。

そこへ、たまたま花嫁役の女優アカネの父親が撮影の見学にやってきます。

 

実はアカネと監督のタカオは結婚を前提に交際しており、

アカネの父は売れない映画人と結婚しようとしているアカネのことを心配しています。

当然、突然のアカネの父の登場にタカオはびっくりするも、

ぎりぎりの予算で今日中に撮影を終えなくてはいけないので、

アカネの父に衣装を着せて代役を頼むことにします。

でも、私情がじゃまをしてどうしてもセリフが言えず、やり直しを重ねるうちに

時間切れで新郎役の俳優は、バイトに行ってしまいます。

「お前には幸せになってほしい」と言う父にアカネは

「幸せになりたいのなら、ほかの人と結婚する。

不幸になってもいいからあの人と一緒になりたいの」と言い切ります。

そこへタカオが衣装を着て、自分が新郎役をやるといいだします・・・・

 

自主製作映画では、俳優のドタキャンに対応できず、家族をまきこむことは本当にあるんでしょうね。

そういえば、「カメラを止めるな!」でも、

監督役とメイク担当の役を急遽、本物の監督とその妻がやっていました。

 

いつ売れるようになるかもわからない身で

「お嬢さんを私に下さい」と父親に言いに行くときの葛藤はどんなものなのか。

文化放送の大竹まことの番組のなかで、上田監督がゲストで出ていた時に、

「自分が結婚するときにちょうど撮っていたのがテイク8です」といっていたので、

実体験をもとにした作品ということは確かなようです。

「不幸になっても一緒にいたい」というのは真実の心の叫びだったんでしょうね。

 

④「Last Wedding Dress」 ★★☆☆☆

 

4世代が同居する大家族上田家のひいおばあちゃんが病に倒れ、余命宣告されます。

ひいおじいちゃんが最後にやりたいことを尋ねると

「ウエディングドレスを着て結婚式がしたかった」と。

それはだんだん家族の知るところとなり、結婚式場と病院で働く孫夫婦をはじめ

みんなの力で願いがかなう・・・・という直球な感動作。

 

「泣ける映画」を目指したのかもしれないけれど、私にはちょっとダメでした。

孫たちが「結婚式をあげなかったおばあちゃんたちにサプライズで結婚式を!」

というならわかります。

最初は恥ずかしがっていたけれど、きれいにお化粧してもらって、気分が高揚し

体調も良くなって・・・・というのは(ありきたりだけど)ありえる話。

 

でも老い先短いおばあちゃんが、(ことばの弾みでもなく)

真剣に「ウエディングドレスを着たい」なんて・・・

そんなこと思うわけないじゃないですか!

 

それ以前に、最初から結末が見えているから、

たった24分とは思えない程、テンポが悪くて長く感じました。

 

気になったのは、この家族の姓が上田だということ。

ひいおじいちゃんとおばあちゃんは上田サダオと上田コトミで、

もちろん演じるのは俳優さんですが、

エンドロールのスペシャルサンクス?の中に、上田サダオ 上田コトミ とあり、

もしかして、上田監督のホントの身内の話なのでは????

 

とすると、これは肉親への日ごろの感謝を込めた、

きわめてプライベートな映画なのかな?

エキストラ的な人もたくさん登場して、ある意味豪華なんですが、

えらく素人くさかったのも、もしかして身内を総動員したとか??

 

それからエンドロールに「八王子日本閣」のテロップが何度も出てきたように思います。

式場内のあちこちを必要以上に長く映していたのは、ひょっとしてタイアップ?とも思ってしまいました。

すべては私の思い込みかもしれませんけどね。(??ばかりですみません)

 

私の好みでは①が最高に面白かったのですが、きっと人それぞれでしょうね。

ちなみに映画レビューサイトの評価では

 

Yahoo映画  ①2.71  ②2.33  ③1.33  ④1.50

Filmarks    ①3.4   ②3.3    ③3.5   ④3.7

映画,com     ①2.8   ②3.3   ③3.2   ④2.8

 

と、なんの傾向もつかめませんでした。