映画「グッバイ・クリストファー・ロビン」 劇場公開なし 平成30年10月DVDリリース ★★★★☆

原作本「グッバイ・クリストファー・ロビン くまのプーさんの知られざる真実」 アン・スクエイト 図書刊行会

 

 

1941年、ミルン夫妻の元に悲痛な内容の電報が届いた。

その詳細が明かされる前に、物語は過去へと遡る。

1916年、徴兵されたミルンはソンムの戦いに従軍していた。

ソンムでは両軍合わせて100万人以上が戦死したが、ミルンは何とか生きて帰還することができた。

帰国したミルンは妻のダフネと生活を立て直そうとしたが、空爆の音が聞こえるたびに、

戦場での経験がフラッシュバックしてミルンを苦しめるのだった。

そんな中、ダフネが妊娠したことが判明する。

ダフネは女の子を望んでいたが、生まれてきたのは男の子であった。

2人は息子にクリストファー・ロビンと名付け、子守としてオリーヴを雇った。

クリストファーはオリーヴのことをノウと呼んで懐くのだった。

ミルンは文筆業に復帰しようとしていたが、

反戦を訴える論考を思うように書き進めることができずに苦悩していた。

気分転換もかねて、ミルンは田舎町に引っ越すことにしたが、

それに不満を抱いたダフネはロンドンの実家に帰ってしまった。

ノウが子守以外の仕事をしている間、ミルンがクリストファーの面倒を見ることになった。

ミルンはそれを億劫に思っていたが、息子と森で散歩しているうちに、

児童向け小説のアイデアを思いつくという僥倖を得た。

ミルンはイラストレーターの知人(アーネスト)と一緒に小説の執筆に取りかかった。

そうして完成したのが『クマのプーさん』である。

その後、ミルンはダフネと仲直りすることができた。

『クマのプーさん』はミルンが想定していた以上の人気を博し、ミルン家の家計は一気に潤った。

しかし、この成功が原因で親子関係が悪化することになった。

自分が小説の中に登場していると知ったクリストファーが不快感を募らせていたのである。

恋人ができたノウは子守役を辞すことになったが、

その際、ミルンとダフネに「クリストファーのことを考えてあげていますか」と苦言を呈した。

反省したミルンはプーさんシリーズの打ち切りを決めたが、時すでに遅かった。(Wikipedia)

 

 

 

今、『プーと大人になった僕』という映画が公開中ですが、それとは別物。

これはノンフィクションバージョンで、原作者のAAミルンの息子である

実在の少年、クリストファー・ロビンとその家族のドラマです。

内容はディズニー版とは真逆に近い内容なので、つづけて観てしまうと非常に紛らわしく、

この時期に劇場公開しなくて正解かも。

とはいえ、クオリティが低いわけではけっしてなく、いい映画でしたよ。

 

あらすじはWIKIの抜粋が詳しいので省略しますが、

もともと劇作家だった父親がたまたま書いた児童書が世界的に大ヒットしたために

お話のなかの登場人物として親に連れまわされ、メディアに翻弄されてしまうのです。

今だったらありがちな話ですが、当時は予測不能な悲劇でしょうね。

 

クリストファーにぬいぐるみあそびを最初に教えてくれたのは母のダフネでしたが、

パーティ好きで、日々の子育ては乳母まかせで、すぐに家を空けてしまうような人でした。

父は「もう続編は書かない」と約束してくれますが、すでに手遅れ。

乳母のオリーブにだけは心を開けたのですが、

そんな彼女にも結婚相手ができて、クリストファーの元を去ってしまいます。

 

プーさんのお話は、もともと父が息子のために書いたきわめて個人的な話だから

深く考えずにクリストファー・ロビンと本名を出してしまったこと。

しかも、挿絵を描いたアーネストは父の親友で、実際のスケッチをもとに書いているから

かなり本物に似ています。

 

 

これだけ似ていたら、

「本物の動いてるクリストファー・ロビンに会ってみたい」

って読者は思ってしまうよなぁ~!

 

 

 

 

 

プーさんとその仲間たちも、当然

クリストファー・ロビンが実際に遊んでいたぬいぐるみがモデルになってます。

 

母のダフネは女の子を望んでいたことから、息子の髪をあまり短くせず、

当時としては、女の子っぽい可愛い服を着せていたように見えます。

児童書の主人公としては

「可愛い!」と受けるでしょうが、

現実世界では、これが寄宿舎のいじめの理由になってしまうのです。

 

メディアに私生活までずけずけ入り込まれて苦しむことは、今にも通じますが、

裕福な家庭の乳母任せの育児とか、戦争のトラウマとか、

全寮制の寄宿舎での壮絶ないじめとか

1930年代のイギリスの時代背景を感じさせられました。

 

 

ところで、「ディズニークラシックス」と呼ばれる長編アニメ映画の題材は

当初は白雪姫やシンデレラなど民話が多いですが、

「ピーターパン」や「不思議の国のアリス」、そして「くまのプーさん」などは、児童文学が原作です。

多くの子どもを喜ばせてヒットするように、ディズニーが原作をかなりいじり倒すのはおなじみですが、

問題なのは、ディズニーの影響力が強すぎて、

多くの人から、すでにそれがオリジナルと認識されてしまうのは困ったものです。

この辺のことは多分前にもかいたかも・・・

 

 

 

 

ディズニーのプーさんは一応、

アーネストHシェパードの挿絵を意識しているようにも思えますけどね。

 

当然私の子ども時代には日本には(テレビではやったかもしれないけれど)

プーさんのビデオなんてなかったので、

はじめてであったのは、岩波書店の児童書だったように思います。

 

 

昔読んだ本は家にはないので、図書館で岩波書店の単行本と少年文庫を借りてきたんですけど

(左側はこの映画の原作本です)

昔読んだのは、どっちでもないような・・・・

 

全編挿絵がカラーになってたり、横書きになったり、見た目は変わってしまったけれど、

翻訳は石井桃子さんとあるから、文章はそのままですよね、きっと。

 

虎が 「ティガー」じゃなくて 「トラー」

豚が 「ピグレット」じゃなくて 「コブタ」・・・・

やっぱりこっちのほうがしっくりくるな~

 

映画の字幕翻訳もこちらの訳語を採用しているようなので、

ディズニービデオでなくて岩波の本で入った人は「プーと大人になったボク」より本作がいいかも。

 

ところで、ディズニー映画ができた66年には

本物のクリストファーは存命だったと思うんですが、

映画化の話がもちあがったとき、いやじゃなかったのかな?とか・・・

それにしても、50年後にディズニー映画の「続編」で大人になった自分が登場するなんて

夢にも思わなかったでしょうね。