映画「MEG ザ・モンスター」 平成30年9月7日公開 ★★★☆☆

原作本「MEG ザ・モンスター」 スティーヴ・オルテン 角川文庫

(英語 字幕翻訳 アンゼたかし)

 

 

地球で最も深い海とされるマリアナ海溝以上の深海が発見され、

探査チームが最新の潜水艇で調査に乗りだす。

チームは世紀の発見に沸き立つが、突如巨大な何かの襲撃を受け、動けなくなってしまう。

深海レスキューダイバーのジョナス・テイラー(ジェイソン・ステイサム)が助けに向かうと、

200万年前に絶滅したはずの超巨大ザメ、メガロドンが出現する。  (シネマ・トゥデイ)

 

(以下のあらすじは完全にネタバレですので、ご注意ください)

 

 

 

フィリピン海港で遭難した潜水艇の生存者救助に向かうジョナス。

「外になにかいる」

「体当たりしている」

レーダーは巨大ななにかを捕えているがその正体は判明せず。

ただ、ジョナスはそれが絶滅したはずの古代生物メガロドンだと認識。

11人の乗組員の救助に成功するも、何人かの生存者を見捨てる結果になるのですが、

それは、ジョナスが「居もしないメガロドンに動揺して正気を失ったから」と。

非難を浴びた彼は表舞台から姿を消します。

 

5年後の上海。

マナワン海洋研究所に訪れたスポンサーのモリスをミンウェイ所長とその娘のスーインが迎えます。

スーインは50歳くらいに見えるハンサムな所長の娘だから、また学生かと思いきや、

幼い娘を育てるシングルマザーで、超美人!

 

最新鋭の研究所では、

マリアナ海溝に潜水中のオリジン号に搭乗しているローリー操縦士と交信中。

水深1万1000メートルと言われていますが、海底と思われている冷水層の下に、

未知の温水層の領域があるという説を証明するために、オリジン号はさらに深く「挿入」していくと

そこには科学的に未知の種の生命体が多数存在し、なんとも美しい世界が広がっていました。

 

ところが、オリジン号に突然巨大なものが接近し、追突し、通信が突然遮断されてしまいます。

乗組員3人のバイタルは確認できたものの、18時間以内の救助が必要で、

それができるのはジョナス・テイラーしかいない!ということになりますが、

彼は5年前の事件以来姿を消していて、どうやらタイにいるらしいと。

 

「仕事をやめて、遠い国で酔っぱらっている」

というのは、ジェイソン・ステイサムのいつものパターンですが

それにしても、18時間しかないのに、探しに行くか?って思いますが。

 

断固拒否するジョナスでしたが、操縦士が元妻のローリーと聞いて、

救助要請に応じ、やってきます。

 

ただ、オリジン号は酸素漏れを起こし、ジョナスを待ちきれないスーインは、自分が救助にいくと申し出、

娘のメイインに

「お友だちが海で困っているから、ママが助けにいくのよ」

といって、救助艇に乗り込んでしまうのです。

研究所に到着したジョナスもスーインの後を追い、

生命維持のパワーをすべてエンジン出力に回して、すごい勢いでおいかけていきます。

 

オリジン号を発見したスーインが磁気フックを発射しようとした瞬間、巨大いかに体当たりされ

イカの大きな吸盤で視界を遮られますが、そのうしろには巨大なメガロドンが控えていたのです。

 

スーインを浮上させ、ジョナスが潜水艇とドッキング、ハッチを開いてひとりずつ救助しますが、

ここでも時間切れで日本人クルーのトシ(マシオカ)を助けることができず。

 

でも、メガロドン(以下、MEGと表記)の存在が明らかになり、

5年前の事件でジョナスを責めていたヘラー医師とも和解出来て、

とりあえずはひと段落。

 

その後、研究所内に、メイインの悲鳴と、衝撃音が響き、あわててかけつけると、

なんと水面近くまでMEGがやってきて、、研究所で飼っていたクジラの親子を食べてしまったのです。

 

どうやら、オリジン号が海水の幕を破って潜入したため、温水の道が出来てしまったということらしく、

その後、MEGの仕業と思われる海難事故も発生します。

襲われたのはフカヒレの密漁船で、ヒレだけをとって捨てられた大量の死骸が。

そして、MEGに襲撃された食いちぎられた人間も散乱しているけれど、

「サメの報復」ということで、おとがめなし??

 

今後船の往来も危険になるので、GPSをつけよう!誰が?ということになり、

またジョナスがシュノーケルだけでMEGに近づくことになります。

射程距離は30m。

体長20m以上あるMEGに、30メートルまで近づくのって、ありえないと思うんですけどね。

 

とりあえず、成功したものの、ワイヤーで船に戻すときの振動でMEGに気づかれ、

ジョナスは「生餌」状態になりますが、なんとか生還。

 

そして今度は強力な毒薬を打ち込んで毒殺しようということになり、

絶対にこわれない強化プラスチックの檻に入ってスーインが向かいます。

強度は十分だったけれど小さいからそのままMEGにくわえられ、振り回されますが

ジョナスが助けにはいって、危機一髪、毒殺にも成功します。

 

MEGの死骸を船に乗せてふざけていると、なんとさらに大きなMEGが襲ってきて、船は木っ端みじん。

乗員は全員海に投げ出されます。

仲間も2人失い、モリスは

「もう我々はこのプロジェクトから手を引き、中国政府にゆだねる」と宣言します。

 

でも、これはモリスの嘘。

ことが大きくなると訴訟問題でもめるので、公にはせず、こっそり自分の部隊で

MEGを殺そうと思っていたのでした。

 

ヘリからGPSを打ち込み、空爆にも成功したと思われましたが、それはクジラの死骸で、

MEGには逃げられてしまいます。

 

MEGはそのまま三亜ビーチへ。

たくさんの海水浴客でにぎわうビーチに近づき、あの懐かしい「ジョーズ」的展開へと。

クジラの鳴き声で誘導してMEGの進路を変え、最後はジョナスとの一騎打ちへ!・・・・・

 

 

もうつっこみどころありすぎで、ストーリーを書いていくのは非常に苦痛なんですが、

とりあえず、こんな感じの流れです。

 

 

①絶滅したはずの幻の巨大鮫が海溝のそのまた下の深海に生息していた。

②ジョナスがあまりに超人的で、生身の身体で23メートルのMEGとサシで戦ってしまう。

 

この2点に関してだけは、まったくOKと思います。

 

①はまさに原作の設定で、未知の世界に足を踏み入れたい人間たちが、

その地獄の扉を開けてしまうのですよね。

 

②原作では、ジョナスは古生物学者で、ここまでの身体能力なかったけど、

なんといっても、われらがジェイソン・ステイサムですから、これはいいんです。

ノー・プロブレム!

 

 

ところが、研究所の中国人親子がやたら美化されていて、

もう「家族愛」の映画みたいになってるのは、本当に邪魔に感じました。

 

日本人の研究者親子(原作ではタナカ研究所)を中国人の設定にするのはいいとしても、

何人かの女性の登場人物の優れたところを、すべてスーインという女性ひとりに集約させています。

科学者として有能で、身体能力も優れていて、勇敢で何事にもおびえず、娘を愛していて

そして何より、半端なく美しい!!

 

 スーインを演じたリー・ビンビンは大変な美女ですけど、一応これ、パニック映画ですからね。

海中でおぼれて心肺停止になっているのに、バッチリメイクにつけまつげクルンクルンしてるのは

どう考えたってヘンです。

すぐそばに、リー・ビンビン専属のメイクさんがスタンバイしてるんだろうな、というのが気になって

話に集中できないんですよむかっ

サンゴ礁の海をスキューバダイビングするならいいけど、

長い髪をなびかせて海底で巨大鮫と戦うか!って思ってしまいます。

 

父親のミンウェイ所長も必要以上にかっこよくて、

本筋とは関係ない、親子の感動シーン(でもわざとらしくて感動はできない)がてんこ盛り。

しかもこういうところだけは中国語で、 (エンドソングの「ミッキー」も中国語Ver)

完璧、中国市場に忖度してますね。

 

8歳くらいの女の子が極秘情報も多そうなこの最先端の研究所を自由に歩き回り、

遊び場がわりにしているのも、気にはなりましたが、

メイインはほんとに可愛い!

 

 

大人たちの会話を完全に理解していて、なんでも知ってるおしゃまな女の子。

「8歳の子は地獄耳なのよ」とニコニコしています。

ジョナスのことは「クレイジー」と呼び、ママが彼を好きなことを察知していて

ラストで、「これからどうする?」と聞かれたジョナスが

「オレはバケーションに行く」というと、間髪入れず

「ママも誘う?」と、持ち掛けるあたり、

こんな可愛いキューピットがいたら、さすがのジョナスも断り切れないよね~♡

 

 

パニック映画では、まわりの緊張を解くためにジョーク言ったりするのが、

大物感あって、けっこうカッコイイんですが、

ここに登場するわき役たちは常にふざけていて、それがうっとうしいです。

まあ、ふざけている奴には死亡フラグがたって、そのうち食われちゃうんですけど。

 

MEGのサイズについて。

確か、体長23メートルといっていたけれど、2匹目のはそれよりも大きかったような。

いずれにしても、6メートルとか8メートルとかの「ジョーズ」よりはずっと大きいはずです。

こんなのが子どもたちが浮き輪で泳いでいるような海水浴場にはやってこないと思うけど・・・

 

また、毒殺したMEGをカジキマグロの釣果よろしく、船の上に吊るしていましたが、

23メートル、20トンのMEGをひきあげて、船に乗せられるか?とも思いました。

 

まあ、展開が常識の範囲を超えて、「それはないだろ!」というほうへ行くし、

クライマックスも何回もやってくるので、少なくとも退屈はしませんでした。

つっこみどころは多いですが、けっこう楽しめはしました。

画面には迫力あるけど、それほどグロくはないので、R指定もつかず、

PG-13だから、小学生でも親子で鑑賞可能です。

 

 

ともかく、中国に忖度した映画であることは間違いないですが、

反日ではなかったから、とりあえず、安心。

 

ただ、マナワン研究所の海上に出ている部分は、

あの、違法な中国の海洋開発のプラットホームを連想させて、嫌な気持ちにはなります。

今後の中国、

海底をほじくり返して資源を漁っているうちに、MEGを目覚めさせてしまうかもね。

その場合も、中国のフカヒレや赤サンゴの密漁船だけを狙って

ぜひとも壊滅させて欲しいものです。