映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」 平成29年7月29日公開 ★★★★☆

原作本 「成功はゴミ箱の中に」 レイ・クロック プレジデント社

 

1954年、アメリカ。

シェイクミキサーのセールスマンである52歳のレイ・クロック(マイケル・キートン)は、

8台もミキサーをオーダーしてきたマクドナルドというドライブインレストランに興味を覚え訪ねてみる。

そこでレイは、経営者のディックとマック兄弟による、高品質、コスト削減、合理性、

スピード性などを徹底させたビジネスコンセプトに感銘を受ける。

契約を交わしてチェーン化を進めるが、ひたすら利益を求めるレイと兄弟の仲は険悪になっていき……。

                                               (シネマ・トゥデイ)

 

 

 

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この映画、ミニシアターで連日満員だったことも知っていたし、

この本がベストセラーになっていたのも知っていたんですが、観る機会がないまま年を越してしまいました。

今日、DVDで初鑑賞。

 

日本マクドナルドの創始者が藤田田氏だということは有名ですが、

アメリカでのそもそもの創始者については、今まで考えたこともありませんでした。

ケンタッキーフライドチキンの創業者カーネル・サンダースは自身が広告塔になるくらい超有名ですが

彼はケンタッキー州の田舎町のガソリンスタンドの片隅に小さな一号店を出し、そこからの全国展開。

圧力鍋を使ったレシピも彼自身が考案したもののようで、まさに「創業者」。

本作の主人公レイ・クロックがマクドナルドにおけるカーネル・サンダース」だと思って観ていると、

事実を知って、あまりの違いにびっくりしてしまいます。

 

レイ・クロックという人物は、野心満々ながら、52歳まではうだつの上がらないセールスマン。

紙コップとかミキサーを戸別訪問で売り歩いていたんですが、

ある日、サンバーナディーノのドライブインから、8台ものシェイクミキサーのオーダーを受けます。

当時こういうレストランは、車までスケートを履いたウエイトレスが料理を運ぶことが多かったんですが、

注文を間違えたり待たされたりすることが多かったようです。

 

ここでは、レジで料金を払って料理を提供し、自分で運ぶセルフサービス。

ただ、「30秒」というありえない速さで料理が提供されます。

そのために、15セントのバーガー、10セントのポテト、20セントのシェイクにメニューを絞り、

調理のプロセスを極限まで合理化していたのでした。

火加減や加熱時間、調味料の量などの完璧なマニュアルを作り、どんなバイトが作っても

常に安定した品質のものを短時間で提供できる、素晴らしいものでした。

 

これに感激したレイは、店主のマクドナルド兄弟に話を聞くことに。

温厚な兄のモーリス(マック)と、仕事には厳しい弟のリチャード(ディック)。

二人は試行錯誤しながらも、最も効率のよいマニュアルをイチから作っていくんですね。

テニスコートに厨房の図面を書き、実際にスタッフを動かしてシミュレーションを重ねていく姿や

常に最適量のケチャップが押し出される器具を開発していくシーンとか、ぞくぞくするほど感動的!

 

「この完璧なシステムをここだけで使うのはもったいない。ぜひ全米に展開するべき」

とレイはしきりにフランチャイズをすすめます。

実は兄弟はこのほかにも何店舗か事業展開はしていたんですが

「自分たちの目の届く範囲の店舗数に抑えて、責任もって仕事したい」

と、全国展開には難色をみせます。

それでも、しつこくレイの説得はつづき・・・

 

びっくりですよね。

レイは店のメニューや手順については、なにひとつ、作っても考えてもおらず、一番驚いたのは、

しがないセールスマンだから、かんじんの資金すらないんですよ。

知り合いに片っ端から資金提供を頼み、妻にも無断で自宅を抵当に入れて金を借り・・・

糟糠の妻エセルをローラ・ダーンがやっていましたが、本当に気の毒。

映画の中ではけっこういい家に住んでましたが、

それまでは鳴かず飛ばすのセールスマンだったようです。

家庭に全く興味をもたないばかりか、浮気で妻を泣かせることもあったとか。

ホントにこんな夫、許せません!

結局エセルとは離婚するも、渡したのは不動産と保険だけで、営業権(株のことらしい)は

死んでも妻には渡さない、私のモノだ、と主張したらしいです。最低!

 

さて、1954年にマクドナルド兄弟と契約を結んだレイでしたが、

契約では「経営内容の変更には兄弟の許可が必要」という条項があり、これが意外と面倒。

アイスクリームのために使う電気代を節約するため、水に溶かせばできるインスタミックスを提案するも、

「インチキパウダーなんか使うな!」と兄弟は大反対。

 

いちいち口を挟まれるのが面倒なレイは、飲食業界に詳しい経営コンサルトのハリーに相談します。

それは、マクドナルドという名を冠した不動産会社を立ち上げ、ハンバーガーの会社を傘下に置いてしまい

実質マクドナルド兄弟を無力化してしまう、というひどいもの。

 

今のマクドナルドも、ハンバーガーの材料を卸してマージンを得たり、

ロイヤリティを請求して利益を上げることよりも、フランチャイズ店の家主となって、

フランチャイジーに利益をのせた賃料でリースすることで儲けているそうです。

 

結局、契約を結んでから7年後の1961年、ディックとマックにそれぞれ135万ドルの小切手を渡して

すべての営業権はレイに移され、兄弟は自分の名前「マクドナルド」を店名につけることさえできなくなります。

 

 

前半は、熱々で美味しいバーガーをどうやったら安く速く提供できるか?

「とにかくお客に喜んでもらいたい」という強い思いから、

かつてない効率的なファストフードのノウハウを作り上げていくディックとマックのパートは

ひたすら楽しかったんですが

後半は、利益優先・事業拡大しか頭にないレイとのバトルがメインで、だんだん憂鬱になってきました。

 

たしかに、いちいち承諾をとるのは面倒かもしれないけれど、

「契約の抜け穴」を利用して、本当の創業者を追い出すなんて・・・・

 

兄の糖尿が悪化して、引退を考えていた時期と重なったこともあるでしょうし、

270万ドルというのはとてつもない大金だとは思いますが、あの兄弟、これで満足だったんでしょうか?

 

一番ムカつくのは、レイ・クロックがマクドナルドのファウンダー(創業者)を名乗り、

「マクドナルド 設立」と検索すると

         1955年4月15日 イリノイ州デスプレーンズ

 

と出ること。

これはマクドナルド兄弟とは無縁の第一号店で、

ほんとうに兄弟が創業したのは、1940年だったんですけどね。

 

レイ・クロックがマクドナルドを乗っ取ったのは間違いないんですけど、

そもそも兄弟のアイディアを盗んで同じような店舗を作ればいいようなものだと思ったんですが、

それをやらなかったのはなぜか?

 

作中、レイは、

「システムじゃなく、大事なのは輝かしい名前だ。

マクドナルドという名前をどうしても欲しかった」

というんですが、ほんとかな?

単に彼が飲食業界に疎かっただけとしか思えないんですけど・・・・

 

ただ、そんなにいい響きだと「創業者」がいうのなら、

「マック」とか「マクド」とか省略したらダメかもしれないですね。


本作はけっして今の巨大企業になったマクドナルドコーポレーションを称える仕上がりにはなっていません。

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↑この自伝は、自画自賛で、日本のユニクロやソフトバンクの社長も本のなかで絶賛していて

金言満載の「経営のバイブル」みたいな感じなんですけどね。

Amazonのサイトで、けっこう中身が読めるので、興味があったら・・・   → こちら

 

私はけっしてヘビーユーザーではありませんが、マックシェイクはけっこうお気に入り。

そのシェイクがインチキパウダーを溶かしただけだったら、ホントにショックなんですが、

エンドロールで、「(かつてはパウダーだったが)今はちゃんとアイスクリームから作ってる」

と説明があったので、ホッとしました。

 

マクドナルドは汚い手で世界に広まったのかもしれないけれど、

「お客様第一主義」の兄弟の心は、世界中、少なくとも日本全国のマクドナルドの店舗のスタッフ、

いや、クルーたちに引き継がれていると思いたいです。

 

最後に、もう一度WIKIでマクドナルドを調べると、

 

 

設立が両方ともちゃんと書かれていましたね。よかった!