映画「空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎」平成30年2月24日公開 ★★☆☆☆

原作本「「沙門空海 唐の国にて鬼と宴す 1~4」  夢枕獏 徳間書店

 

 

7世紀、唐の時代の中国。若き日の空海(染谷将太)は、遣唐使として日本から唐へ向かう。

密教の全てを会得しようという決意に燃える中、ひょんなことから詩人の白楽天(ホアン・シュアン)と出会う。

交流を重ねていく一方、権力者が連続して命を落とす不可解な事件が唐の都で起きていた。

その真相に迫ろうとする空海と白楽天だが、二人の前に歴史が生み出した巨大な謎が立ちはだかる。

                                                    (シネマ・トゥデイ)

 

日本では、タイトルは「空海・・」となっていて、主役は留学僧時代の若き日の空海(染谷将太)、

ダブルキャストで、もうひとりは、阿倍仲麻呂(阿部寛)というようなプロモーションになっています。

 

ふたりとも確かに唐には行ってたけど、

阿倍仲麻呂→奈良時代

空海→平安時代

で、一緒に出るのはおかしくない?

って、小学校6年生以上の人は気づくと思います。

(正確に言うと、仲麻呂が亡くなった4年後に空海が生まれています)

 

実は、この話は2つの時代をまたいでいて、空海の相棒をつとめるのはあの長恨歌で有名な白楽天。

二人が、あの絶世の美女といわれた楊貴妃の死の真相にせまるため、

何十年もさかのぼって、玄宗皇帝の時代(楊貴妃や仲麻呂も同時代)に思いをはせる・・・って話です。

映画の主役は空海と白楽天で、ホームズとワトソンみたいに歴史の謎解きをしていくんですが、

実は真の主役は「黒猫」なんですよ!

元々のタイトルも「妖猫伝」(Legent of  the Demon Cat)、つまり「化け猫伝説」ってわけです。

 

のっけから、核心を書いてしまいましたが、さんざん「王朝絵巻」的なものをみせられるも、

要するに、猫の祟りがメインの怪奇映画であります。

 

804年、 留学僧として唐に渡った空海でしたが、密教の教えを乞うため青龍寺をおとずれるも門前払。

しかたなく、都で祈祷師のバイト(?)なんかをしてるのですが、これがけっこう評判がよく、

皇帝の病の祈祷にも呼ばれるのですが、すでに逝去してしまい間に合わず。

 

そのころ都では政府高官の謎の死がつづいていて、その原因を空海と白楽天が解いていくのです。

(夢枕獏の原作では空海の相棒は、いっしょに唐に渡った橘逸勢だったんですが、

中国映画だからしかたないのかな?)

現場には決まって猫の毛が落ちており、怪しい黒猫の姿が目撃されていました。

一方、30年前の阿部仲麻呂の日記をみつけ、読んでいくうちに、

楊貴妃の死と関係があるのではないかと・・・

 

だいたい、絶世の美女の死に関しては、後々、いろんな説がでてくるのはよくある話で、

楊貴妃の場合、誰でも知ってる「通説」みたいなものだと、

「安史の乱(安禄山の乱)」(755年~63年)とよばれるものののなかで、安禄山たちにより、

大きな権力を握っていた楊貴妃の楊一族が狙われ殺されました。

皇帝を惑わした罪で楊貴妃にも死罪が求められ、玄宗皇帝は、泣く泣く高力士に殺させた・・・

本作ではこれに新説を唱えるのかと思ったら、ほぼそのままで、逆にびっくりしました。

 

ただ、これには黄鶴という幻術士がかかわっていて、彼は楊貴妃に針をさして仮死状態にさせて

一旦埋葬して、あとで掘りかえして針を抜いて蘇生させる・・・という案を出して実行に移すんですが、

そのままほったらかしにしてしまうんですね。

つまり、(楊貴妃にしてみたら)目が覚めたら、棺の中と言う訳。

これ、私のような閉所恐怖症でなくても、トラウマになるような最悪な事態です。

 

このことを知らされていなかった黄鶴の弟子の白竜が知って怒り、彼は皇帝のペットの猫に憑依して

事件にかかわった人をかたっぱしから呪い殺し、直接手を下した本人だけじゃなくて、

その子孫までずっと呪い続けていた・・・・・ということだったんですね。

 

登場人物は結構多いので↓もっと複雑な話なのかもしれないけれど、

とにかく話の中心にいるは「妖猫」で、あとは「賑やかし」ですね。

 

 

なんで、話が分かりづらい、というか、頭に入ってこないのかと思ったら、

それはきっと、全編字幕なしの吹替だからですね。

(染谷翔太クンが長い中国語のせりふをがんばったことを聞いていたのに

彼のセリフはすべてセルフ吹替の日本語でした)

 

吹替だと、字幕がないから、人名はすべて耳からしかはいってこないので、

アンロクザン(安禄山)とかコウリキシ(高力士)とか歴史上の有名な人物はいいんですが、

チンウンショウとかチンゲンレイとかオウカクとかチンゴエンとか・・ああ、わからない。

 

固有名詞でなくても、例えば、空海が黒猫を追って遊郭で踊ったりするんですが、そのときの「ギロウ」遊び。

これは『妓楼』ですよね。

新鮮な生肉で呪術を解くシーンも何度かでてくるんですが、この時にいわれる「コドクのむし」

これは『蠱毒の虫』ですね。

これは私がぎりぎり聞き取れたケースですが、聞きそびれたのもたくさんあるし、ホント、疲れます。

 

「字幕で見れば良かった」と反省したんですが、なんと日本では字幕公開はされず、

聴覚障碍者用のスクリーンだけだそうです。なんと!

 

6年かけてつくったという、ご自慢の壮大な長安のセットが見どころみたいですが、

これも、べつにCGでも良かったかな。