映画「残像」 平成29年6月10日公開 ★★★☆☆

 

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1945年、ポーランド。

アバンギャルドな作風で知られる画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、全体主義に従うことを

拒んだことから、大学で教授職の退任に追い込まれ、美術館からは作品が撤去されてしまう。

しかし、学生たちの協力を得て、ヴワディスワフは権力と戦うことを決意する。(シネマ・トゥデイ)

 

去年亡くなったポーランド映画の巨匠、アンジェイ・ワイダの最後の作品です。

亡命することもなく、ひたすらポーランドを題材に映画を撮り続けました。

1作くらいみたものがあるかと思って調べたら、「カティンの森」がワイダ作品でした。

当時ナチス関連の映画はユダヤ人が被害者のものしか知らなかった私には大きな衝撃でした。

 

本作は、第二次大戦後、ソ連の勢力下にあったポーランドに実在した前衛芸術家、

ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの晩年を描いています。

 

彼は第一次世界大戦で片腕と片足を失いますが、精力的に活動をつづけ、

妻のカタジナ・コブロなどとともに、美術館を創設して、アバンギャルド美術の収集をしたり

ウッチ造形大学の教授もつとめており、彼の講義は学生たちに人気がありました。

 

タイトルの「残像」というのは、モノを見た後に網膜に残る色で、

「人は見たものしか認識していない」というが彼の持論でもあります。

 

彼は温厚な教授で学生たちからも慕われていたのですが、

作品を作っているとき、窓の外に掲げられた赤い垂れ幕を切り裂いてしまいます。

それは単に赤い色が制作の邪魔だったのか、それはわからないですが、

その垂れ幕はスターリンの肖像だったから、警察が乗り込んできて、ストゥシェミンスキは逮捕されます。

肖像の右側の赤い部分が切り裂かれています

   ↓

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別にスターリンの旗でなくても、器物損壊はよろしくないとは思いますが、

彼が反逆的ともとれる行動をするのは映画のなかではこの時だけ。

 

この時から彼への締め付けが厳しくなっていきます。

大学に文化大臣がやってきて講演をし

「イデオロギーなき芸術は労働者の利益に反する」と、「社会主義リアリズム」を強要するのですが、

ストゥシェミンスキは手を挙げてそれに堂々と反論するのです。

彼の方が正論なのは明らかなんですが、このタイミングでいわれては、文化大臣の面目丸つぶれです。

 

彼に協力してタイプ打ちを手伝ったり、彼に好意的な人たちも次々に当局に目をつけられてしまいます。

大学もクビになり、芸術家協会の会員登録も抹消されてしまい

これがないと、学校以外の仕事をすることも、絵の具を買うことさえできなくなり、

配給券の支給もストップされると、食事にもことかくありさまです。

賄いのオバサンが、お金が払えないと言ったとたん、お皿によそったスープを鍋に戻してしまい、

皿に残ったスープを舐める・・・・なんていうシーンは辛くてみられませんでした。

 

離婚していた妻が亡くなり、一人娘のニカが彼のところに来るのですが、お金がなくて何もしてやれない。

生活のために店の装飾のプロバガンダの肖像画を書いたりするのですが、その仕事もできなくなり・・・

と、そのくりかえしで、ついには死んでしまう、というそういう話です。

 

理不尽に殺害されたり投獄されたりすることがなくても、

じわじわと少しずつ締め付けられ、追い詰められいくのは、それ以上に残酷なことです。

そして人々から「忘れられていく」ことで、二度殺されることになります。

監督はそれを恐れて、この映画を撮ったのでしょうか?

 

「共産党政権下で弾圧されても、こころざしを曲げなかった人物がいた」

ということなんでしょうけど、志を貫くのなら、もうちょっとやり方があったのでは?って思ってしまいます。

あのタイミングで文化大臣にはむかったのは、誰へのアピール?

学生たちなら、それは指導者としてアウトでしょうし、

可愛い教え子に「反体制文書のタイプ打ち」なんて手伝わせたらダメです。

アンナとは身体の関係もにおわせるような描写もあったような・・・・?

 

素直に彼の一途さに感動できればいいんですが、そうできないのは、

連日報道合戦が続いている、あの暴行事件に対するある親方の言動が気になっているせいかも。

「あのお方」も信念を貫く一途さを称える声も一部にはあるけれど、

私には単なる社会不適合者としか思えなくて。

 

事実関係がはっきりしないので事件については何もいえませんけれど、

プロの世界は結果を出すのがすべて。

「あのお方」は、弟子をなかなか育てられなかった親方としての自分のポンコツさをまずは自覚して、

謙虚な気持ちと、正しい日本語を学んで欲しいと思います。

(話が脱線してすみません<(_ _)>)