映画「ゲット・アウト」 平成29年10月27日公開 ★★★★☆

(英語 字幕翻訳 種市譲二)

「ゲットアウト 映画」の画像検索結果

 

ニューヨークで写真家として活動している黒人のクリス(ダニエル・カルーヤ)は、

週末に恋人の白人女性ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に招かれる。

歓待を受けるが、黒人の使用人がいることに違和感を覚え、さらに庭を走り去る管理人や

窓に映った自分を凝視する家政婦に驚かされる。

翌日、パーティーに出席した彼は白人ばかりの中で一人の黒人を見つける。

古風な格好をした彼を撮影すると、相手は鼻血を出しながら、すさまじい勢いでクリスに詰め寄り……。(シネマ・トゥデイ)

 

一度見たら気になって気になってしかたなくなる予告編。

実際に観た人たちの評価も高く、2度3度とみたくなる映画だそうで・・・・

これはもう見るしかないと思って、大雨のなか行ってきました。

 

高級住宅地で道に迷った黒人男性。

一台の車が近づいて、あっという間に拉致されてしまい・・・・

というところでオープニングクレジット。

 

カメラマンのクリスは愛犬のシドを親友のロッドに預けて、恋人のローズの家を初めて訪問します。

恋人の実家で両親に会うのってかなりのストレスですが、それに加えて、

クリスは黒人。ローズは白人。

「今日連れてくのが黒人だって、親には話した?」

「それって必要?両親はオバマ支持で差別主義者じゃない。問題ないわ」

 

ローズの運転で向かう途中、いきなり降ってきた鹿をはねてしまい、動物管理局と警察に連絡。

やってきた警官は、運転していなかったクリスにも身分証明書の提示を求め、

人種差別だと腹をたてたローズは断固拒否。クリスを守ります。

 

ローズの父ディーンは脳神経外科医で母ミッシーは精神科医。弟も医学生というインテリ家族で、

ローズのいう通り、娘の彼氏が黒人でも全然気にならない様子にホッとするクリス。

ディーンが家の中を案内してくれます。(ここ重要!)

 

「父(ローズの祖父)は短距離の代表選手で、ベルリンオリンピックの時オーエンスに敗れた」

「母(ローズの祖母)はこの台所が好きだった」

「黒人の使用人(庭師のウォルター、メイドのジョージナ)たちは、親が雇ってたのを今更解雇できなくて働いてもらってる」

 

その夜、眠れないクリスが(禁煙中にもかかわらず)一服しようと庭に出ると、

庭師のウォルターがすごい勢いで走っているのに遭遇。

それを窓から眺めるジョージナの姿も異様です。

怖くなったクリスが家に入ると、母のミッシーにお茶を誘われ、催眠術で禁煙を成功させてあげると・・・・

クリスの子どもの時のトラウマを告白することになってしまいます。

 

クリスの母は仕事帰りにひき逃げされて死んだのですが、クリスはその時テレビを見ていて、

母の帰りの遅さを気にしながらも何もしなかった。

もしすぐに探しにいっていたら、母は死なずに済んだのでは?とずっと自分を責め続けていたのでした。

クリスはカップをスプーンでかき回す音で催眠状態に入り、「沈んだ池」で動けなくなる夢をみますが、

とりあえず、禁煙には成功します。

 

翌日、屋敷では祖父の古い友人たちが続々と集まり、パーティーが始まります。

裕福な白人ばかりでクリスは憂鬱になりますが、彼らはクリスをむしろ褒め称え、黒人特有の身体能力がうらやましいと・・・

クリスも良く知っている著名な盲目の画商、ジム・ハドソンも参加していて

「僕は君の写真のファンだ。君の目で世界を見てみたいものだ」といいます。

 

黒人である使用人ふたりと仲良くできればいいんだけど、ウォルターはクリスに反感をもっているみたいだし、

ジョージナも勝手にスマホの充電を切ったり、急に態度が変わったり、妙な感じ。

共通しているのはふたりとも今の境遇に満足していて

「家の人たちは家族同様に扱ってくれて感謝している」とそれだけは一貫しています。

 

クリスはパーティの出席者のなかに黒人を一人見つけて、嬉しくなって声をかけます。

彼は年配の白人女性のパートナーで名前はアンドレ。

クリスがスマホで写真を撮ろうとすると、フラッシュに反応して彼は突然凶暴になります。

 

庭ではビンゴ大会がはじまりますが、クリスはローズに誘われて外出。

そのビンゴ大会がちょっと奇妙な代物で・・・・・

 

と、あらすじで書けるのはこの辺まで。

この先は「ネタバレ」しているので、これから観るつもりのある方はご遠慮ください。

 

 

ここまでで一番違和感があるのは、

クリス以外の黒人の様子がとにかく変だということ。

今の生活に満足しているといいながら、急に態度が豹変したり、動揺したり。

ウォルターとアンドレは常に帽子をかぶり、ジョージナの髪もウイッグぽい・・・

 

 

 

 

で、ビンゴ大会ですが、なんと賞品の場所にクリスの大きな写真が飾られています。

ゲームというよりは、オークションぽい。つまり、クリスを競りで落としてる感じ。「奴隷売買」を連想します。

そしてそれに勝ったのはあの画商のハドソン。

そう、彼はクリスの視力と感性を羨ましがっていましたからね。

でも、ミッシーの催眠術だけでは人格の入れ替えはできるはずなく・・・・

そう、ディーンの職業は、脳神経外科医でした!

つまり、秘密裏に

「アプカリプス」「クリミナル」「セルフレス」なんかの映画の中に出てきたことがここでも行われていたのでは?

と想像がつきます。

当然、ウォルターもジョージナも、別人の身体に祖父母が「入れ替え」られていたわけです。

 

アンドレの写真をスマホでロッドに送って調べてもらうと、なんと彼は行方不明のジャズ奏者だったことがわかります。

(彼が冒頭の拉致された人だったわけ)

 

「飼い犬が病気になっちゃったので、クリスは帰るの」

ローズが言い訳を作って一緒に帰ることにしましたが、

準備をしている間に、クロゼットの中にショッキングな写真を見つけます。

それは、ローズが何人もの黒人男性といちゃついている写真でした。

信頼していたローズまでもが、ターゲット捕獲係だったとは・・・!!

 

クリスは地下室に拘束され、まさにハドソンの脳が移植されようとしています。

一方、ロッドは警察に駆け込みますが

「白人家族が黒人を拉致してロボトミー手術で性奴隷にしている!」

といっても、みんな笑ってとりあってもらえず。

 

さて、クリスの運命やいかに???

 

って、ここまででほぼネタバレしていますが、そういうストーリーです。

 

かなりエグイ話ですけど、コメディモードなので、とても楽しく見られました。

特に親友のロッドのキャラでほのぼのさせられます。

彼は一見アホなお調子者に見えますが、

断片的な情報だけで、かなり最初のうちから真相を見抜いていたわけで、

この洞察力には降参です。

 

ラストはちょっとハッピーエンドっぽくなってましたが、実際このまま逃げ帰れたとしても、

クリスはいろいろやらかしてるわけで、無罪放免とはならないんじゃないの?

陪審員はクリスに有利な評決をだしてくれるのか?

こういうところにはまだ黒人差別が残ってるのでは?と思ったら、恐ろしくなりました。

 

「二度三度見るごとに怖くなる」というキャッチコピーでしたが、

二度三度観たら、むしろ粗がみえちゃうんじゃないかと思います。

ただ、とても良くできた脚本で、お薦めはできます。

有名俳優もキャサリン・キーナーくらいで、撮影にもお金かかってなさそうで、

コスパ高い作品ですよね~!