映画「世界一キライなあなたに」平成28年10月1日公開 ★★★★☆

原作本「ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日」ジョジョ・モイーズ 集英社

 
「世界一嫌いなあなたに」の画像検索結果
 
イギリスの田舎町で、ルーことルイーザ・クラーク(エミリア・クラーク)は失職を機に、
交通事故で車いすの状態になってしまった青年実業家ウィル・トレイナーの介護と話し相手をする期間限定の職に就く。
活力を失っていた当初は冷たい態度を取るウィルだったが、彼女の明るさに徐々に心を開き、二人は惹(ひ)かれ合う。
そんなある日、ルーはウィルの秘密を知ってしまい……            (シネマ・トゥデイ)
 
邦題の意味がよくわからないんですが、第一印象の悪かった同士のよくあるラブストーリーかと思っていたら
まさかの尊厳死を扱ったものと知って驚きました。
不治の病に侵された男性の介護をすることになった女性とのラブストーリーなので、言ってしまえば
「最強のふたり」と「君がくれたグッドライフ」を合わせたような話ですね。
 
ルイーザ(愛称ルー)はカフェで働いて、失業中の父や、シングルマザーの妹たちを支えていたんですが、
そのカフェが店をたたむことになって職を失い、働き手がいなくなってピンチ!
 
6か月限定の介護の仕事を見つけるのですが、介護するのは高齢者ではなく、なんと大富豪のイケメン実業家ウィルでした。
彼は2年前のオートバイ事故で脊髄を損傷し、以来、首から下がほとんど動かない重度の障碍をもっています。
生きる希望を失った彼は周囲に心を閉ざしていて、その彼の話し相手がルーの仕事。
リハビリや下の世話などは、療法士がやってくれるから、特別与えられた仕事はないんですが
「ともかく15分以上彼をひとりにしないで」と両親から強く言われています。
「ぼくにかまうな」というのがウィルの言い分なので、ひたすら戸惑うルーでしたが、
それでも持ち前の明るさで、少しずつウィルの心を打ち溶かしていきます。
 
主演のエミリア・クラークは、何年か前に「理想の女性世界一」になったこともある美女なんですけど
ルーを見る限り、下がりまゆのブスにしかみえないし、スタイルもいいとはいえず、
そして何と言っても笑うしかない、ものすごいファッションセンス!
 
検索して出て来る画像は↑のドレスか真っ赤なワンピースがほとんどなんですけど、
ルーの日常のファッションはこんなかんじ↓
 
 
あ、この画像はかなりマシなほうで、たいていはごちゃごちゃした柄のトップスにミニスカートにカラータイツ、といういで立ち。
原宿系の若くて細い子が着るならともかく、26歳は着ないだろ!というレベルです。
 
彼女はおしゃれに無頓着というわけではなくて、毎日違う服を着てくるし、ただセンスがないだけ。
でもこのセンスがウィルにはけっこうウケているようです。
 
ルーは、子どもの時に履いていたミツバチの縞々タイツが大好きだったのに、大人用はどこを探してもないと嘆きます。
それを覚えていたウィルはなんとルーの誕生日にプレゼントしてくれるのです。
その時のルーのうれしそうな顔!
 
 
ルーにはパトリックという恋人がいて、彼もそのとき「パトリックの名前入りのペンダント」をプレゼントしていたから、
この喜びようをみて、激しく嫉妬してしまいます。
 
一方ウィルにもかつては恋人がいたんですが、障碍者となった彼を捨てて、違う男と結婚を決めてしまいます。
現実から逃げたくないウィルは彼女の結婚式に出席するといい、ドレスアップしたルーと車椅子でダンスしたりして・・・
 
このころからルーとウィルの間にはほのかな恋心が芽生えるのですが、このころ、ルーはウィルの秘密を知ってしまいます。
実は、彼は尊厳死の認められているスイスにいって、人生を終わらせようと考えていたのでした。
それが6か月後。
もう絶対に治ることのない病気。息子の意思の固いことを知っている両親は、せめて最後の6か月を楽しく過ごせるように
(専門のカウンセラーとかではなく)能天気に明るいルーを雇い入れたのです。
また、ウィルから目を離すな、と言われたのは、自殺するのを見張る目的があったのかも・・・
 
ショックを受けたルーでしたが、なんとか残された時間を素敵なものにして、できることなら彼の決心をかえられるかも?と
モーツアルトのコンサートに行ったり競馬を観戦したり、そして最後にはいっしょに旅行にも行くのですが
幸せの絶頂で自殺を図ろうとするウィルに失望し、彼の元を去ってしまいます。
それでもウィルが安楽死する日に、もう一度彼を追ってスイスの自殺ほう助機関ディグニタスに向かうのです。
 
愛する人たちに囲まれて、お別れの言葉を伝えて旅だつウィル。
彼の遺産の一部はルーに引き継がれ、彼女は憧れのパリに出て、自分の夢をかなえる・・・・
みんなにwinwinのハッピーエンドになってますけど、安楽死がまだ「殺人」の日本からすると、
ちょっともやもやしてしまいます。
 
延命治療についてだって、
自分の意思も伝えられない患者に苦しいだけの命を永らえさせて、
「最後まで頑張った」と称えるのは、医者や家族のエゴにも思えますが、
心臓の動いている人から呼吸器を外すのも勇気のいることです。
もう100%意識は戻らないといわれたって、わずかな望みにすがりたくなってしまいます。
ましてや、今は元気な家族や愛する人が尊厳死を考えていたら、どんなにかショックなことでしょう。
 
ヨーロッパでも尊厳死が合法な国はそれほど多くはなく、「君がくれたグッドライフ」ではベルギーに、
「母の身終い」ではスイスに行って、「自死ほう助」をしてもらっていました。
アメリカでもいくつかの州で合法のようですが、日本でもこれから先、どうなるかはわかりません。
 
考えてみれば、陣痛をひたすら待っていた自然分娩が当たり前の時は、日時を決めて帝王切開するのは邪道!
みたいに思われてたけれど、今はそれほどでもありません。
誕生日を決めていいなら、命日を決めたっていいのかも、なんて思ったりして・・・・