映画「カプチーノはお熱いうちに」平成27年9月19日公開 ★★★☆☆



雨が降りしきるバス停で、カフェに勤務するエレナ(カシア・スムートニアック)はアントニオと出会う。
彼は同僚のシルヴィアの恋人だった上に、性格も全く違うにもかかわらず二人は恋に落ちる。
13年後、親友と一緒に始めたカフェが軌道に乗り、子供にも恵まれた彼らを悲劇が襲う。(シネマ・トゥデイ)

まえに「あしたのパスタはアルデンテ」というイタリア映画があって、グルメ映画と思いきや
料理は全然出て来なくて、パスタ製造会社の御曹司たちがゲイだとカムアウトする話でした。
本作も同じ監督で同じ配給会社なので、まったく同じパターン。
カフェをやってるうちの話なのでこんなタイトルになっています。
美味しいものが出てきてイケメンなイタリア男が出てくれば満足・・・
という偏差値低めの女子ばかりを釣ってどうすんだ

って思いますけど、実際はけっこう凝ったつくりの人生ドラマでした。

最初のシーンは雨のバス停で、移民に差別発言したオバサンをめぐって、初対面の男女が大ゲンカします。
気の強そうな黒髪の女性とオレサマ系の偏屈男。
女性はエレナといってカフェでてきぱき働くバイトリーダー的存在なのですが
そこへバイト仲間のシルビアの彼氏として現れるのが最初にケンカしたアントニオ。
彼は自動車整備士なんですが、識字障害で字が読めません。
それに気づかずエレナが差別的発言をしてしまい、それを謝りに行ったのをきっかけに
この二人が急接近!
友人の恋人でしかもエレナには金持ちの彼氏もいるのに、なんか関係をもってしまうんですね。

エレナはもうひとりのバイト仲間ファビオたちと自分のカフェを持つことが夢で
せっせと貯金している真面目キャラのはず、なのに、意外と下半身はゆるゆるで
アントニオに至っては、知性のかけらもないけど、マッチョな肉体が売りの野獣キャラ。
ふたりともタトゥーだらけだし、唐突にセックスしちゃうし、もうイタリア人にはついていけない~!!
と思っていると、いきなり十数年後にタイムスリップします。

そこはエレナのカフェの13周年記念日。
そばには髭をたくわえて貫録ついたファビオの顔があったので、
てっきりエレナとファビオが結婚して自分たちの店をもったのかと思ったら、
なんとエレナの夫はアントニオで、ろくに仕事もせず浮気三昧。
自慢の肉体も脂肪がついて見る影もなし。
カフェの経営はうまくいっているようですが、夫婦仲は最悪で、ケンカが絶えません。

カフェやるんだったら、ファビオと結婚すればいいのに~!と思ったら
何と彼は生粋のゲイで、その最初のお相手はエレナの自殺した弟だったんでした。
心優しいおだやかなファビオの存在がとっちらかった他のメンバーの緩衝材となっているんですが
ファビオ役のフィリッポ・シッキターノは、どこかで見たことあると思ったら
「ブルーノのしあわせガイド」のやんちゃなルカ少年でした。(すぐパンツ一丁になる子でした)



ある日、エレナは多重人格の叔母のドーラに誘われて乳がん検診に行くと
けっこう深刻なステージの癌を宣告されてしまいます。
まずは化学療法で小さくしてからでないと手術もできないという・・・
家にかえって家族に告げると、夫のアントニオは椅子を投げつけて家をでていってしまいます。

もうストーリーも登場人物も迷走してしまって大丈夫かい!と言う感じなんですが、
そのあと、空白の13年があとから示されて、過去と現代シーンがなんとなくしっくりまとまったり、
かなり雑ではありますが、一応伏線的なものの回収もあったりで、意外!

アントニオとエレナが付き合い始めの頃、バイクにのって海に向かった時、
車にぶつかりそうになるのですが、その車に乗っていたのは
10数年後のガンが発覚したあとのアントニオとエレナだった・・・・
というところにはドキッとしてしまいます。

チラシのうらに相関図がありましたが、これを見る限り、けっこう計算されているような・・・・




一番上のディアーナというのは、エレナがバイト時代のカフェの常連で、当時は医学生。
彼女の注文がアツアツのカプチーノだった、という・・・・タイトルの由来はそれだけです。
彼女が偶然エレナの主治医となって現代シーンで再登場するんですけど、
相関図に乗せるほどでもないと思いますけど、まあ登場人物はみんなそんな感じです。

ラテンのみなさんの思考回路は日本人にはついていけ無いと思ったんですが、
他人に共感しつつ少しずつ前進する日本とは違い、それぞれが自分の価値観で突っ走り、
ひたすらポジティブ。
なにか困難にぶつかった時にふと思い出して元気になれるような映画です。