映画「キル・ユア・ダーリン」 平成26年6月27日リリース予定 ★★★★☆

1944年、コロンビア大学に合格したアレン・ギンズバーグ。
大学の正統な姿勢に不満を覚えたアレンは、ルシアン・カー、ウィリアム・S・バロウズ、ジャック・ケルアックのような
聖像破壊の友人に引き寄せられていく。
中でもルシアンへの想いが自分の創作活動の原動力になっていくのを強く感じていた。
しかし彼らの創造のための欲求と選択は、重大な過ちを招くことになるのだった(amazon)

ハリー・ポッターのハリー(ダニエル・ラドクリフ)とスパイダーマンのハリー(デイン・デハーン)の「からみ」があるという・・・
たしかに人気者ふたりのディープな「からみ」は衝撃的でしたけれど、
それより驚いたのは、登場人物は全員ビートニクに詳しくない私でさえ名前をきいたことあるような有名人で
しかもかれらは非常に近しい関係だったんですね!

① アレン・ギンズバーグ(ダニエル・ラドクリフ) 代表作「吠える」
② ジャック・ケルアック(ジャック・ヒューストン) 代表作「路上」
③ ウィリアム・バロウズ(ベンフォスター)   代表作「裸のランチ」
この三人はビート文学の代表作家。
デイン・デハーン演じるルシアン・カーは、作家ではないけれど、
コロンビア大学に入学したアレンを奇妙な仲間たちに引き合わせ、
ゲイの世界にもひきいれる魅力的な学生です。
ルシアンは元恋人のデビッド・カマラー(男)の束縛を嫌ってアレンとつきあうようになったのですが、
ほどなくジャックに乗り換え、しかも恋人の男たちには大学の課題の論文を代筆してもらうという・・・
コロンビア大学に合格してるんだからおバカで書けないわけではないんでしょうけど、ずいぶん勝手な男です。
女性だったらファムファタール、ですかね。
デイン君の美貌なら許せるけど、実物は似たりよったりのメガネ男子だちでした。

 
左から、ウィリアム、ルシアン、アレン。

ルシアンがデビッド・カマラーを殺したというのは本当で、「カマラー殺人事件」は有名な事件だったそう。

 
↑当時の新聞記事。
映画の中では、この顔写真がデイン・デハーン風に修正されてました。

アレンの父は高名な詩人でしたが、母は精神を病んでおり、アレンが家事や母の世話をしていたようですが、
大学入学後、家に戻ると、父は母を精神病院送りにして、新しい妻を迎えていました。
それまでは真面目な優等生だったかれの中で何かがプツンと切れて、
ペルビチン(ヒロポン)やハッパを常習し、図書館内での奇行とかに走っていきます。
ルシアンとの関係も「一線をこえてしまう」のですが、
男女間以上に、男色の世界は一旦泥沼にハマるとめんどくさそう。
でもそういうイカレた環境に身を置いたり、変なクスリを常用したり・・・
創作の世界ではそういうことが効果絶大なのでしょう。

「ビートジェネレーション」と呼ばれる世代は1914 - 1929年生まれくらいで
日本で言うとほぼ「大正生まれ」なので、「新しい波」と言われてもピンとこないのですが、
たとえば詩の世界でも、アレンの父たちが書いていたような押韻や暗喩などのレトリックにしばられた
調和のとれた古典的な詩から外れて、ホイットマンのような自由な形式を採用し
(読んだことないけれど)多分内容もかなり猥褻だったり不条理だったりしたんでしょうね。
でもそれが時代の最先端でもあり、アレンが大学に課題として提出した「問題の夜」という小説も
単位は認められずに退学になってしまいましたが、
教授は個人的にはその小説の価値は認めていたわけで、
「新しいこと」にチャレンジするのには犠牲が伴なうということでしょう。

去年公開された「オン・ザ・ロード」という映画の原作はジャック・ケルアックの「路上」だし、
ウィリアムの「裸のランチ」もクロネンバーグ監督で映画になっています。
それよりも、アレンの「吠える」が「ハウル/Howl」のタイトルで最近映画になっているんですが、
残念ながら日本公開も日本語のDVDもないようです。

 
アレン役はジェームズ・フランコ。
ダニエルより適役だと思うんですが・・・・

「キル・ユア・ダーリン」も当初のキャスティングでは
アレン役はジェシー・アイゼンバーグだったそうで、
ルシアン役がベン・ウィショー、ジャック役がクリス・エバンス。

ジェシーとベンのラブシーンもあまり見たくないですが、
ダニエルとデインのだって、「美しい」とあおってる割にはちょっと・・・でした。
「ハリー・ポッター」の呪縛から抜け出そうともがいている事情はよくわかりましたけどね。