映画「LIFE!」平成26年3月19日公開 ★★★☆☆
原作本「虹をつかむ男」 ジェイムズ・サーバー 早川文庫


雑誌「LIFE」の写真管理部で働くウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、
思いを寄せる女性と会話もできない臆病者。
唯一の特技は妄想することだった。
ある日、「LIFE」表紙に使用する写真のネガが見当たらない気付いたウォルターはカメラマンを捜す旅へ出る。
ニューヨークからグリーンランド、アイスランド、ヒマラヤへと奇想天外な旅がウォルターの人生を変えていく。
                                        (シネマ・トゥデイ)

「虹をつかむ男」といったら、あの寅さん映画の後釜映画(主演 西田敏行)を連想しますが、
60年以上前のダニー・ケイ主演の映画に同じ邦題の映画がありまして、
その原作本(原案本)であるジェームズ・サーバーの短編「虹をつかむ男」を元に
本作もつくられたわけだから、まあ、リメイクともいえなくもないですね。

でもこれ、(原作も映画も)虹をつかみにいく話じゃありません。
たぶん、「雲をつかむ(ような話)」みたいな、英語圏の慣用句だ!と最初思ったんですが、
原題は「THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY(ウォルター・ミティの秘密の生活)」!
ともかく、(原作は)ウォルター・ミティという名前の空想癖のさえないおじさんの話。
彼は満たされない日常を埋めるために、奇想天外の妄想というか、白日夢を観るのですが、
それがだんだん現実の世界にも現れる・・・というような話なんですが、
個々のエピソードは映画化された時点で全くオリジナルなものになっています。

本作(2014年版)は原題の一部「LIFE」に、グラフ誌LIFEの廃刊をひっかけて、
同社の社訓を軸に、そこで働くネガ係が世界の秘境を訪ねる旅に出るストーリーになっていますが、
ウォルターは現実逃避しなければならないほど追いつめられてもいないし、
一流企業の正社員で(会社がなくなりそう、というのはあるにしても)
決して「冴えない中年男」でも、特別不幸といえるような事情もないし、
私にはいまいち共感も同情もできなかったなぁ・・・
ウォルターは会社の気になる女性シェリルの「eハーモニー」のプロフィールに
「ウィンクする」ボタンを意を決して押したものの、「実行できません」の表示が出てしまう。
管理人に電話すると、それは体験談が空白だからと言われるも、自分にはたいして書くことがないのに気づきます。
今日もまた駅でぼーっとして、遅刻して会社に行くと、最終巻をだしてLIFEは廃刊だと聞かされます。
紙媒体に代わってウエブ事業にして人員も再編すると。
そしてカメラマン、ショーンが最終巻の表紙にと指定した写真のネガが抜け落ちていることに気づき
ネガの管理責任者のミティは、そのネガを取り返す旅へと向かうのです。

ショーン(ショーン・ペン)は世界を放浪する神出鬼没のカメラマンで、携帯も持っていない。
困ったウォルターは、前後のネガなどを手掛かりに、アイスランド・・グリーンランド・・ヒマラヤ・・・
大海原でサメに追われ、火山の大噴火に遭遇し、雪の岸壁を登り、ユキヒョウに出会い・・・
ここいらへんはすでに「妄想癖のおじさんの話」を超越して、普通にネイチャー映画でしたね。

で、その探していたネガには何が映っていたか??
っていうのが一番気になりますが、
「予想できなかったけど納得できる」オチを待ってたのに
「十分予想できるけど、これだったらイヤだなぁ」という最低のパターンでした。
(何かはいいませんけど)

ウォルターは永年ライフ誌を支えてきた実直な仕事人という設定のようですが
いつもぼーっとしている遅刻常習者のようで、
特別の才能や発想をもつクリエーターならまだしも、事務方としてはそれだけでアウトでしょ!
「大事なフィルムをなくす」というのは職務としてあってはならないことなのに
それをバックアップするマニュアルが何もないのにも唖然。
彼の数少ない才能のひとつは子供のころからやってきたスケートボードのテクニックで、
絵的に見せ場にはなっていましたが、そんなことじゃなくて、
ウォルターの仕事に対する真摯な思いや情熱、的確な判断力・・・具体的になにもなかったので
想像力に欠ける私には伝わるものはありませんでした。

でも、ライフの社訓はとてもいいですね~

To see the world,             
things dangerous to come to,
to see behind walls,
to draw closer,
to find each other
and to feel.
That is the purpose of life.

いろんな世界を見に行こう
壁を超える勇気を持とう
いろんな人と出会い、
もっともっと分かり合おう


ウォルターはもともとSNSのプロフィールの体験欄を充実させるために勇気をだしたのですが、
いろんな世界を見て言葉も通じない人たちと触れ合ううちに
デジカメで風景を切り取り、その中の自分を強調して、その地を征服したかのような情報をネットに流し
「いいね」をもらって満足するのなんて愚かしいことだ、とわかるんですね。

プロカメラマンのショーンでさえ、苦労の末に幻のユキヒョウの姿をとらえたのに
カメラのシャッターをきることはせず
「その一瞬を楽しむ。カメラに邪魔されないように」
だって!

ショーン・ペンが登場するといきなり画面が引き締まり説得力がでてきますね。
でもそれ以外はぐだぐだで、とんでもない秘境で携帯が楽々繋がったり
国際電話で長々と身の上話なんかしますか?
いつ充電したんでしょうか?
あの携帯、海に沈んでなかったっけ?
とか、突っ込みどころも多数。

実は私がこの映画を観たいと思ったきっかけは、予告編で流れていた
クイーンの「ボヘミアン・ラプソディー」の冒頭部。

Is this the real life-
Is this just fantasy-
Caught in a landslide-
No escape from reality-


ここから音楽はめくるめく展開をするのですが、
予告編ではここまで。
もう最後まで聞きたくて、のこりのパートは劇中でどんな使われ方をするのか
気になって気になって仕方なかったのです。

ところが、本編では、まったく登場せず。
この曲は私が今までの人生で最も衝撃を受けた曲でしたから
かなり期待していたのに見事に裏切られました。
「写真のオチ」も裏切られたから、まったくもって怒り心頭です。


お口直しに本編で登場したシナボンの画像を張っておきます。

 
昔中毒になった6こ入りのエクスプレスパックを買いた~い!!
一度日本撤退して、今は六本木店しかないけれど、ぜひぜひ巻き返して欲しいものです!