映画 「アルバート氏の人生」 平成25年1月18日公開 ★★★☆☆



読んで♪観て♪

19世紀のアイルランド、アルバート(グレン・クローズ)は、

ダブリンにあるホテルでウエイターとして働いていた。

だが、人付き合いが苦手で、もの静かなアルバートには

誰にも明かすことのできない大きな秘密があった。

ある日、アルバートはホテルの改装工事にやって来た陽気で端正な容ぼうの

塗装業者ヒューバート(ジャネット・マクティア)と出会い……。(シネマ・トゥデイ)


原題の「アルバート・ノッブス」に聞き覚えがあると思ったら、

去年のアカデミー賞の女優賞2つとメーキャップ賞ノミネート作品でしたね。

↑の右側が主演のグレン・ローズ、左がジャネット・マクティア。

二人ともホントは女性なのにそれをかくして男性として生きている役なので

そこはかとなく女性的なのはOKとしても、(185cmのジャネットはともかく)

小柄で華奢なグレンローズの男装はちょっと厳しい感じでした。

もともとは舞台劇ですから、その辺は目をつぶって・・・・


アイルランドのモリソンズホテルの女主人ミセス・ベーカーは

客には愛想よく、従業員にはめちゃくちゃ厳しい、老舗の鬼女将みたいな人。

「ナイフに指紋をつけないでちょうだい!」

「にやにやするんじゃないの!」

失敗したウエイターやメイドには容赦ない叱責が飛ぶなか、

常に気配りを忘れず完璧なサービスのアルバートはウエイターの鑑です。

まじめで無口で堅物。

なじみの客からのチップの額を手帳に記録して床下にため込むのだけが

アルバートのひそかな楽しみでした。


「彼が実は女性だった」という秘密がたまたま相部屋になったペンキ屋のヒューバートにバレ・・・

というのはすでに予告編でやっていたのでOKですね。

(以下はネタバレになるので、これから観る方は気を付けてくださいね)




ヒューバートも実は女性で、DV夫から逃れ、夫の服と道具で塗装業で独り立ちし、

なんと女性の妻と結婚もしているとか・・・・

彼との出会いがアルバートに大きな将来の夢を持たせます。


ミセス・ベイカーのことを

「クソババァだわね~」と笑う陽気な妻と囲む食卓、楽しい会話、

素性知れずの孤児で、男性として仕事にありつくしか生きるすべのなかったアルバートにも

将来の夢が大きく広がります。

床下のコインを元手に小さな店をもち、土地が値上げしたら売って海辺で暮らしたい。

そばには可愛い妻がいて、幸せに暮らすんだ・・・・


「メイドのヘレンはあのホテルの花だ」

というヒューバートの言葉に、(この辺がよく分からないんですが)

伴侶はヘレンと決め、度々デートに誘って、貯えから無理してプレゼントを重ねるアルバート。

ヘレンはボイラー技士のジョーと付き合っていて、その気などまったくないから、

目的は「じいさん」扱いのアルバートに散財させることだけ。

アルバートにとっては無意味な初期投資だったわけですが、

それにしても彼の考えていることがわかりません。


彼は性同一性障害というわけでも同性愛者でもなく、

ただ生活のために性を偽って生きてきたのだから、

第二の人生は女性として生きたっていいはずだし、

ヘレンはしつこくプロポーズして嫌われるよりは従業員としてきてもらえばいいのに、ね。

親子ほど年の違う同性の女性にプロポーズするって、どういうことなのか、

心から教えてほしいです。


実はこんな疑問は序の口で、

住込みの生活の中で(シャワーや着替えもあるだろうし、病気にもなるだろうし)

なんで女性だとバレなかったか?とか

度々登場する彼の大事にしている母親の写真は結局なんだったの?とか

最後は病死ではなく明らかに「殺人」なわけで、なんでおとがめなし?とか

頭の中に湧き上がる無数の「???」に関しては、スルーするしかないのでしょうか。

「どうしてかくもあわれな人生を選んだのか?」

と、ホロラン医師にも嘆かれた、アルバートの痛ましい一生に

追悼の祈りをささげることとしましょう。



あとで調べたら、この時期のアイルランドは、

イギリスに搾取されるばかりのヨーロッパの最貧国で、

さらに飢饉や疫病のために人口が半分まで減ってしまったとか。

なので、故国を捨て、ジョーのように新天地アメリカを夢みる若者が多かったのでしょう。

でも、モリソンズホテルのなじみ客たちは羽振りもよさそうだし、

従業員たちの生活も質素ながら食べるに苦労している感じもないし、

画面からはそこまでの悲惨さは感じられませんでした。

アルバートとヘレンとジョーの、共感を得づらい、低次元の三角関係ばかりが目について、

結局何を言いたかったのかしら??


女性(それもれっきとした女優さん)二人が「女装」して、それで、ものすごく不自然で滑稽・・・

という短いシーンがあるのですが、

あえていえば、それが「見どころ」でしょうか。