映画 「悪の教典」 平成24年11月10日公開 ★★★☆☆
原作本 「悪の教典」 貴志祐介 文芸春秋社 →悪の教典②
ハスミンというニックネームで呼ばれ、
生徒たちから圧倒的な人気と支持を集める高校教師・蓮実聖司(伊藤英明)。
生徒だけでなく、ほかの教師や保護者も一目を置く模範的な教師だったが、
その正体は他人への共感や良心を持っていない反社会性人格障害者であった。
学校と自身に降り掛かったトラブルや障害を取り除くために、
平然と殺人を犯しては校内での地位を強固なものにしていく蓮実。
しかし、ささいなミスから自身の凶行が知られそうになってしまう。
それを隠そうと悩んだ彼が導き出した答えは、クラスの生徒全員を殺すことだった。
(シネマ・トゥデイ)
貴志祐介の原作本はちょっと厚すぎて、躊躇しているうちに劇場公開されてしまいました。
だいたい、クラスの生徒を殺しまくるだけの話がこんなに長いの?
というわけで、原作未読のまま観たのですが・・・
「全員殺せば証言者がいないから、完全犯罪」もないと思うんですが、
決定的な証拠となったのが保健室の「アレ」というのは、
昨日の「モンスター上司」の「プリウスのナビ」とかなり近くて
オチはそれかよ!って思っちゃいましたが・・・・
「避難袋」とか「さすまた」とかおなじみの防災グッズとともに
学校生活ならではの伏線となっていました。
ひとりひとりの心理描写がどうの、というより、
ゲーム感覚で一方的に殺しまくるエンターテイメントですね。
生徒たちに人気のあるさわやかなイケメン教師ハスミンが
実は・・・という話で、それ以上でもそれ以下でもない。
ただ、伊藤英明の鍛え上げられた体とか、ネイティブっぽい英語の発音とか、
「ちゃんとがんぱっているところ」が結果にでていました。
必要ないのに女性のヌードがサービスで出てくる映画は多いですが、
「全裸で懸垂?必要ないでしょ!」と思いながらも、
無駄な裸をなんか喜んで観てる私・・・
ハスミンの自宅がワンルームマンションとかじゃなくて、
山の中の廃屋でボロの軽トラで出勤というのも不自然ではありますが、
謎につつまれた魔物の巣窟みたいですね。
民話なんかでは情報収集する二羽のわたりカラスは必須ですが、
ハスミンの情報源は盗聴器や学校の裏サイトでしょ?
カラスもオーディンも雰囲気作りだけだったようですね。
R15指定は流血量の多さなんでしょうが、
途中からはゲーム感覚になってしまうし、
韓国のバイオレンス映画なんかにくらべたら、
「決定的に残虐なシーン」は間接的にしか映していないから、
そんなに心配するほどじゃないですよ~
「4組の生徒の生徒の魂を救うためだった」
「オーディンによろしく」
というハスミンの最期のセリフの意味がちょっとよくわからなくて・・・
そして To be continued・・・・
これ、続編あるんでしょうか?
手元に期限間近の図書館の本があるので、それだけでも確認しておきます。
実はこの映画のなかで、一番、というか、唯一素晴らしかったのは
冒頭のレコードの音楽。
「メキ・メッサーのモリアート」
どこかで聞いたことあると思って、しばらくして
ジャズのスタンダード「マック・ザ・ナイフ」だったことがわかったのですが、
英語で歌われるジャズよりも、
ブレヒトの戯曲「三文オペラ」の劇中歌ほうが格段に素晴らしい。
ドイツ語だから歌詞もわからないんですが、もうゾクゾクしてしまいます。
いっぱい殺してるシーンより興奮したというのは皮肉ですが。
まさに
Magnificent‼
であります!
ところで、ラストに流れた貧相な歌は何?
いろんな「大人の事情」なんでしょうが、
エンドロールに流れる楽曲は映画の価値を決定づけるってこと、
日本映画はもっと考えてほしいと思います。