映画 「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」  平成23年10月7日公開  ★★★★★


読んで♪観て♪

アルツハイマーの薬を研究しているウィルは、チンパンジーに新薬を投与する。

目覚ましい知能の伸びを見せたメスのチンパンジーがいたが、

彼女は暴れだし、射殺されてしまう。

妊娠していた彼女が産み落とした赤ん坊チンパンジーを育てていたウィルは、

シーザーと名付けた彼に高い知能があることに気付く。

ある日、アルツハイマーを患うウィルの父親が隣人ともめているのを見たシーザーは、

彼を守ろうと暴れ、霊長類保護施設に入れられてしまう。 (シネマ・トゥデイ)

 

 

まずは、68年の「猿の惑星」の超有名なオチは共通認識として書かせて頂きますが、

あの映画は文明とか先進国とか人間社会に対する皮肉の針が

いたるところでチクチクしてましたね。

私たちはまだ子どもだったから、「猿の惑星ごっこ」で無邪気に盛り上がっていました。

今見るとお粗末ですけと、あの特殊メイクは、当時としては驚異的でしたから。

 

未来の地球は猿たちの惑星になるという信じられないけどありえなくもないというSFドラマは、

その後も続編やリメイクがつくられたけれど、ティム・バートン版はじめ

けっこうコケてましたよね。

で、またぞろこの派生映画を作るという。

え、マジ?

でも、ジェイムズ・フランコ出るしなぁ・・・・

で、乗り気になれないまま鑑賞決定。

 

前ふりが長くなりましたが、要するに「猿の惑星のエピソードゼロ」という印象だったので、

チャールトン・ヘストン(オリジナルの宇宙飛行士テイラー)たちが宇宙旅行してる間に
人類が滅亡するには、必ずや人間vs猿の大戦争が起きるような予感で

別に観たくもないぞ、って思っていたのですが、

予想は大外れ。

 

SF色はあんまりなくて、これ、ヒューマンドラマ、動物ドラマといえそうです。

とにかく猿の造形すばらしい!

どちらかというと最新技術てんこ盛りの映画は好みではないんですが、

もう猿たちの表情や立ち振る舞いの表現はパーフェクトで

「パフォーマンスキャプチャー技術」、バンザ~イ!であります。

 

ことの始めはアルツハイマー治療薬。

関係ない人には興味ないかもしれないけれど、

身内にこの病人がいる人だったら、思わず身を乗り出してしまいます。

日本で認可されてる治療薬はもう10年以上アリセプトだけ。

しかも全然効かないの・・・

そんな現実にいらついている人にはあまりに魅力的なアルツハイマー新薬。

 

ALZ112はチンパンジーに驚異的な知能を与え、開発者の父の認知症を完治させ・・

多くの人が待ち望んだ夢の新薬は製薬会社にも大きな利益を与え、

めでたしめでたし・・・とはもちろんいかず、その副作用が人類の命運を握ることになるのです。

 

ジェイムズ・フランコ演じる神経科学者ウィルは

思わぬアクシデントでアルツハイマー新薬の研究をつづけられなくなってしまいます。

「脳に詳しくても 脳の使い方を知らん男だ」

なんてイヤミな上司(社長?)は、会社が儲かればあとはどうでもいいという

倫理観皆無の分かりやすい悪役キャラです。

 

ウィルは死んだ母親猿の子どもを密かに連れ帰って育てるのですが

ジェイムズ・フランコですからあんまり科学者には見えず、愛情豊かな飼育員のイメージで、

子猿シーザーとのシーンは、そこいらへんの動物ドラマよりはるかにエモーショナルです。

シーザーの可愛らしさはもう、猿が好きとか嫌いとかのレベルを越えています。

 

 

シーザーのキャラクターは年齢別に3パターンくらいあるんですが(↑の画像は大人のシーザー)

ほんとにどれも素晴らしい。

あの可愛いシーザーに会いたくて画像検索してみたんですが、


読んで♪観て♪

 

↑こんな、チェブラーシカみたい(?)なのしか見つかりませんでした。

あとはどうぞ、映画館でみてください。


 

猿たちのCGの見事さはその技術力もですが、繊細な表情に愛情がこめられているようで、

なんかそれって嬉しいです。

たとえば、トヨタ シエンタのゴリラのまねのCMとか、APEたちに失礼なシーンが

日常には多すぎると思いませんか?

 

 

 

この先、↑のあらすじ以降をそこそこ書いてしまうので、

これから観ようという人はご注意ください。

 

 

保護施設にいれられたシーザーは、最初は家に帰りたがっていたものの

「新入りはいじめられる」はずのAPE集団のなかでボス的存在にのぼりつめ

ある「決意」をします。

そして決行!

普通に考えて人間よりはるかに運動能力の高い彼らのこと、

それに頂点には、とてつもなく賢いボスもいるわけだから

人間が武器やら薬剤やら使ったところでそうそうはやられません。

 

で、APEvs人間の全面戦争と思いきや、

皆殺しをねらう警察とか軍隊にたいして、APEたちは

「基本、人間は殺さない」というヒューマニズムにあふれたスタンスなので

きっちり殺すのは「ホントに悪い奴」だけなんですね。

ちゃんばらでホントに強いお侍は、

「峰打ちじゃ、安心せい」

とか言って、殺さないんですが、ホントにそんな感じです。

「悪い奴だけやっつける」というのも

イラク戦争のピンポイント爆撃なんかよりずっと正確ですよ(笑)

 

ゴールデンブリッジでの攻防のあと、

「家に帰ろう」とウィルがいうのを振り切って、

「ここが家」といって、森に帰るシーザー。

 

俯瞰で映し出されるサンフランシスコの郊外には広大な森が広がっていました。

今もこんなに自然が残っているのかな?

ともかく、人と動物たちがすみ分けできるような

ちゃんとした自然がこれからも残ることを心から願います。

 

街中でヒグマが出没するようになってしまった札幌とか、

森が住みにくくなってしまった日本では、

なんかのはずみで「ALZ112」を摂取してしまったヒグマが仲間を連れて・・・

って、それものすごい映画になりそうですね。

 

そんなことはともかく、

シーザーたちが森へ帰った時点で、

「これじゃあ 地球は「Planet of the Apes」にはならず、

全然創世記じゃないじゃない!」

ということに、はたと気付きました。

 

そう、人間はAPEたちに滅ぼされるのではなく、自滅してしまうんです。

あの怒りんぼの隣人の善意の行動をきっかけにして・・・・

 

世界中をむすぶ航空路線網の図が

最初にでてきた人間の脳神経シナプスを思わせて、

洒落た終わり方だなと思いました。

 

オチの部分は、ほとんどエンドロールにかかるくらいの感じで

早めに席をたってしまうと見逃してしまうかもしれないので

最後までしっかり観て下さいね。

 

 

いちおう主演はジェイムズ・フランコなんでしょうが、

実質的主演は絶対シーザーですよね。

CGだから主演男優賞はとれないけど。

表情だけでなくて、木のてっぺんにすっくと立ち上がった姿なんて、

歌舞伎の見得ポーズみたいで、思わず掛け声かけたくなるくらいでしたよ。

 

そうそう、ハリーポッターのドラコ(トム・フェルトン)を発見。

笑っちゃうほどぴったりの役柄で、でも

これから先こんな役ばかりだったら気の毒だな。

 

 

えっと、これだけネタバレしておきながら、

観るのをススメルのもアレですが、

小学生から年配の人まで幅広い世代で

絶対に楽しめる作品だと思います。

 

SFとして考えると、ご都合主義だし、つっこみどころたくさんあるのですが、

そういうこと全部差し引いても、

「観るべき映画」だと思いますよ。オススメです。