同級生で飲んでいるときに、いろんなことを聞かれる。
 先日は、こんな質問だった。


 「会ったこともないおじさんが特攻隊で戦死したので国から毎年4万円もらっているが、いつまで続くのか。俺の子や孫までもらえるのか。」


 彼は、55歳である。
 67年前に戦争は終わっているので当然、そのおじさんには会っていない。


 恩給法にそんなこと規定されていたかなあ。
 不思議な仕組みだなあ。


 戦死したときには、生れていない甥まで、戦没者の遺族として、国からお金が支給されるとなると、年額4万円といっても全国では莫大なお金になるだろう。


 さらに、こんなことも言っていた。

 「おじさんは亡くなった父親の兄だが、父親が4万円をもらい始めたとき、10年分もらえるものとして、兄弟で旅行に行き、40万円使い、父親が支払った。」


 早速調べてみた。


 根拠法は、恩給法でなく、

「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法」(以下、法といいます。)だった。


 戦争に行った軍人などが戦争原因で死亡し、基準日に公務扶助料等の年金給付を受ける権利を有する遺族がいないことが支給要件だ。


 その同級生がもらっているのは、第8回特別弔慰金で40万円の国債が父親に交付されているようだ。
 10年間均等償還で償還期間は平成18年から平成27年の毎年6月15日だ。


 厚生労働省によると、特別弔慰金は、終戦20周年(昭和40年)、30周年(昭和50年)、40周年(昭和60年)、50周年(平成7年)、60周年(平成17年)という特別な機会をとらえ、記名国債を支給している。


 終戦何十周年の都度、法改正により、特別弔慰金の支給が決定されている。。


 おじさんは20歳で戦死したので配偶者も子どももいなかった。そこで、当初はおじさんの母親が受け取っていたらしい。おじさんの母親がなくなったのでつぎはおじさんの兄弟である同級生の父親が受け取ることになった。


 特別弔慰金が受け取る対象者は、おじさんの兄弟になるが、法では、こうなっている。
「同一の死亡した者について特別弔慰金を受ける権利を有する者が数人ある場合においては、その一人のした特別弔慰金の請求は、全員のためにその全額につき、したものとみなし、その一人に対してした特別弔慰金を受ける権利の裁定は、全員に対してしたものとする。」
 
 つまり、国債40万円は、同級生の父親が存命中の兄弟全員の代表として受け取ったことになる。
 だから、兄弟全員で旅行し、40万円を飲み食いに使い果たし、同級生の親が支払っても理にかなう。立て替えて、あとで毎年4万もらうということだ。


 特別弔慰金は国債で支給され、亡父親の相続財産だから、通常の相続財産と同じく、名義変更をして受け取る権利を同級生が得たのである。
 だから、平成27年6月15日で終了となる。相続が開始しない限り、子や孫へは支給されない。
 
 また戦後70周年として、平成27年に法改正されて、特別弔慰金が支給されることになると、生存している兄弟が支給対象者になる。


 兄弟が戦死した悲しみは、何十年経っても癒えないことは理解できる。


 しかし、戦争の体験もない、戦死した当人ににも会ったことがない、甥や姪まで受給できる制度が不思議でならない。

 誰もいわないが、これ以外にも、戦争にまつわる国からの支給がまだあるような気がする。

 総理が命がけで増税するという時代に、そういう予算を支出できる国の状況なのかと考えてしまう。