日曜の夕方、将棋部の1年生が自宅にやってきて即席研究会。
この1年生は将棋部若手の有望株で、メキメキ力をつけていて自分より強い練習相手を求めて時折彼の家にやってくる。
3年前、医学部に編入した際に、自分の居場所作り一つとして作った将棋部は、かなりほそぼそではあるが存続していて、都道府県単位の団体戦などに出場している。
最初は5人の団体戦に3人しかエントリーできなかったり、
彼以外の部員がなかなか勝ち星をあげられなくて悔しい思いをしたりしたが
年を追うごとに少しずつ人数も増え、レベルも上がってきている。
20代の若者の中で50代のおじさんが違和感なく居られるはずはないが
せめて所在ない孤独の苦痛が、少しでも和らぐように勇気をだして作った将棋部だった。
彼は中学高校と将棋部だったことと、社会人になってからも熱は冷めず、趣味として続けながら年を経た。
パチリパチリと無言の格闘が続く。
終盤、巻き返しを狙う1年生を振りほどいて彼が逃げ切り、投了。
スポーツと同じで、勝利を掴みにいく感覚がなければ将棋も勝ちはないのではないかと感じることがある。
彼は医学も同じかもしれないと言う。
今死にかけている人と向き合うとき、決して諦めず、終盤の勝ちに行く気概で立ち向かうかどうかで、その結果が変わってくるのではないかと。
わたしたちは根性とか気合とかが恥ずかしくなってしまう年齢になったが
それでも
「絶対に負けない」と自分に課す瞬間がまだあってもいいと思う。
