「かおちん、最近若い人たちの間で、感謝日記っていうのが流行り始めてるらしいよ」

みゆちんが唐突にそう切り出してきた夜、私は正直「なにそれ、宗教?」と身構えました。毎日3つ、感謝したことを書いてから寝る。それだけ。

そう聞いて拍子抜けしたんですよね。

「感謝日記」、そんなに大層な話じゃなかった

てっきり「世界中のみんなが幸せでありますように」みたいな、スケールの大きい話かと思っていました。でも実際はもっと地味。「仕事が予定より早く終わった」とか「コンビニの店員さんが感じよかった」とか、そのレベルでいいらしいんです。

毎晩3つ探すことをミッションにすると、だんだん「今日の感謝ネタ、何にしよう」って考えながら1日を過ごすようになる。ポケモンGOで街を歩くのと同じ感覚で、いいことを探すクセがつくんだそうです。

なるほどね、と思いました。

気づいたら「恵まれてるな」しか出てこなくなっていた

油断すると、恨み節ばかり数える毎日になりがちなのは、正直よくわかります。ネガティブを数えるほうが、なぜか楽なんですよね。

でも改めて振り返ってみると、私は最近、感謝することばっかりなんです。

離婚したせいもあるのかもしれません。

日々の細かいことでは相変わらず困っているし、将来を想像すると「やばい」という気持ちも普通に降りてくる。でも目先のことで言えば、いろんな人からたくさんの恩恵を受けて生かされてるな、と思うことのほうが増えました。

年に4回しか行かないヨガでも同じことを感じます。無理のない範囲で体を少し動かすだけの、いわば「寝るためのヨガ」。最後に手を合わせて、日々の自分と万物すべてに感謝して終わる。あの数十分だけで、なぜかすごく満たされるんです。

感謝って、心が満ち足りるために本当に必要な作業なんだな、と。

ポジティブ、行き過ぎると危ないらしい

ただし、ここからが本題です。感謝日記の話をしていて、ふと気づいたことがありました。

「ポジティブなことを考えたほうがいい」というのと、「ポジティブに考えすぎるのは危ない」というのは、実は両立するらしいんですよね。

思い出したのが、うちの父の話です。

「次の日曜日、みんなで買い物行こう」

そう言われると、子どもの頃の私はワクワクしていました。でも父は、喜ぶ子どもたちを見た時点でもう満足してしまう人でした。

次の休みには、行かない。

言っただけで、脳内では「もうやってあげた」ことになってしまうんです。アウトプットが行動じゃなくて、言葉で完結してしまう。

これ、笑い話のようでいて、結構怖い話だと思うんです。

ネガティブな娘とポジティブな息子

対照的なのが、うちの娘と息子です。

娘は生粋の心配性。海沿いのホテルに泊まった夜、「津波が来たらどうしよう」と本気で眠れなくなるタイプです。でもそのぶん、不安を消すために事前にとことん調べ上げる。だから物事はちゃんと終わらせる。

一方の息子は「なんとかなるさ」タイプ。パソコンを失くして玄関で泣き崩れていたのに、翌日にはもう笑っている。

さて、どっちがいいと思いますか。

楽天的でいられるならそのほうが楽そうですが、失敗を反省しないぶん、同じ失敗を繰り返しがちでもあります。人に迷惑さえかけなければ、それはそれでいいのかもしれません。

娘には昔、心理学の本を作っていた時に知った「認知行動療法」の考え方を話したことがあります。物が倒れた時、「今度から置かないようにしよう」で終われる人と、「なんであの時気づかなかったんだろう、自分はダメだ」と自分を責め続けてしまう人がいる。後者は思考の癖なので、薬と併用しながら考え方そのものを変えていく必要がある、というやつです。

話したところで、直るものでもないんですけどね。

感謝とポジティブ妄想、決定的な違い

ここでようやく、感謝日記に話が戻ってきます。

感謝日記も、AI(チャッピー)に聞いてみたら「グラティチュード・ジャーナル」という名前でちゃんと心理学の研究に使われている手法らしく、続けていくと守備範囲がどんどん広がって、最終的には冷蔵庫を開けて食べ物があることにまで感謝できるようになるそうです。

森羅万象への感謝。

そこまで行くと、もはや悟りの領域な気もしますが。

そして気づいたんです。感謝は「すでに起きたこと」に対するポジティブな捉え直しだから、いくらやっても害がない。過去は変えられないけれど、見方は変えられる。それだけの作業だから。

でも父のポジティブ妄想は「まだ起きていないこと」を、脳が勝手に「起きたこと」として処理して満足してしまう。そこが違うんですよね。

過去への感謝はやりすぎていい。未来への期待は、行動が伴って初めて意味を持つ。

たったこれだけのことなんですけど、なんかいいこと言ってる気がしてきました(自分で言うのもなんですが)。

……で、ふと我に返ったんです。

まだ片付いていない仕事を「片付いた図」として想像して、なんとなく満足して終わらせていないか。

それ、父と同じでは……?

エキゾチックな結末

ちなみに今回のエンディング曲、テーマが「感謝」なだけに、シルクロードとか異邦人とか、妙にエキゾチックな方向に話が転がっていきました。50代なら「北ウイング」で通じるあの空気感です。実際どんな曲になったかは、ぜひ音源のほうで確かめてみてください。

感謝日記、とりあえず今夜から始めてみようと思います。3つ目のネタに困る日がきたら、また番組で報告します。

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この記事は、Podcast「カイワレ帝国」#118のトークをもとにしています。 音声では、みゆちんとの掛け合いをそのまま楽しめます。

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