なにもしてやれない、と思ったとき、自然と顔が歪んでいた。
3年近くもいっしょにいたアイツが今日限りでここを去るという。
大人は最後に歌を歌って送りだそうなんて暢気なことを言っている。
音にあわせて歌うつもりが、声がでない。
知らないうちに歯を食いしばっていたらしい。
ようやく開けた口からでてきたのは、歌ではなく咆哮だった。
そのとき、初めて自分が大声で泣いているのを知った。
知りはしたが、止めようなどない。
ひらいた唇の間から、ただ嗚咽があるれるにまかせるだけだ。
他になにができる?
俺の叫びに似た泣き声にみなが追随しはじめた。
歌わなきゃ、あいつに悪い。
でも、もう涙であいつの顔すら見えないじゃないか。
いいか、あいつだって泣いているんだから。
家に帰るとなぜかママがホットミルクティを淹れてくれた。
インスタントには違いないが、今はこの甘さに浸っていたい。
「今日はNくん、最後の日だったんじゃないの」
「うん」
とだけ答えた。さらりと言えたはずだ。
ママはもっといろいろ聞きたかったのだろう。やけにあっさりとした俺の返事に鼻白んだ気配が左から漂ってくる。
どうせ、俺の気持ちだとかみんなの様子だとか、おそらくは俺が泣いたのかなど聞きたかったに違いない。
涙は、友のためでいい。
記憶の中ではなく、友の前で泣く。
俺はミルクティの湯気のなかにそっと鼻をひたした。
よんちゃん6歳。友達が幼稚園をさることになり、大泣きしたそうです。
「よんちゃんは優しいから」
先生たちも泣いたそう。
でも家ではそんなそぶりも見せず。大して仲良くなかったんかな?と思わせるくらい。
よんちゃん、、、がんばってるな。
聞いた話を再構成して一番似合わない(ちょっぴり)ハードボイルドでよんちゃんを描いてみました。