「5.今も信じてるよ」。「枯れない花」ですね。真梨子さんの記念すべき30枚目のシングルです。作詞は、真梨子さん。作曲は妹尾武で、「グレイスソフィーナ」TV-CMイメージソングやテレビ朝日系ドラマ、「京都鴨川東署迷宮課 おみやさん」主題歌として、耳にされた向きも少なくないと思います。

 「枯れない花」は高橋真梨子の「愛の時間」に対する大きなメッセージではないでしょうか。とも白髪までを誓った夫婦のような時間軸の長い愛を描いた作品になっています。人生は山あり谷ありです。しかし、寄せては返す小波のように男と女の愛は様々に互いの人生を織り上げるのです。

 「枯れない花」などないことは互いに分かっていますが、二人の舟がたどり着く岸は一緒に違いない。彼の心を知ってか知らずか、女は己の愛を彼に収束させようとします。灯台下暗しの喩えのように人間とは足元の幸せに気づかぬ愚かさを持ち合わせています。

 青い鳥の童話でも幸せの青い鳥は数々の回り道をしたあげくに我が家にいたという結末を迎えます。身近にある宝を悟ることのなんと難しいことか。

 「枯れない花」はそんな人間の愚かさと裏返しの至高の愛を歌い上げています。リスナーひとり一人の「枯れない花」が高橋真梨子の歌声とともに、それぞれの心に響くのです。リスナーの数だけの人生の回り道があり、愛があり、幸せがあるに違いありません。

 真梨子さんは「愛とは生きること」だと云います。「枯れない花」は永遠の愛を説くとともに永遠の生を歌っているのです。

 古代の王たちが不老長寿に血眼になったことを愚かなことと我々は笑えるでしょうか。少しでも永く愛し、少しでも永く生きたいのが人間の本性でしょう。「枯れない花」が流れる人生の川は仏教でいうところの三千世界に繋がっているのかも知れません。

 生死を越えたところの愛を「枯れない花」は表現しているのです。「枯れない花」は真梨子さん自身の思いであるとともに我々自身の思いでもあるかも知れません。真梨子さんと聴衆の心が重なって彼女のメッセージがリスナーの心に響くときこそが至福の時なのでしょう。

 「6.ママ ギラギラと太陽が照りつける」。これは、もう、ステージの真梨子さんの歌唱が瞼に浮かび上がります。

 「虹の水」。高橋真梨子作詞、作曲は、宮手俊雄・伊藤心太郎の共作です。「虹の水」は母性愛を歌っていることで異彩を放っています。命絶え絶えの子供たちを救えるのは母の愛だけでしょう。この作品はソマリアやアフガニスタン等で腹を空かせた幼児が栄養失調によるせり出した下腹を抱えて右往左往する様が見事に描かれています。

 真梨子さんはどこかでマザーテレサをイメージして詞を書いたと語っています。マザーテレサは1997年に87歳の生涯を閉じるまでインドはカルカッタの教会で孤児の救済に全身全霊を捧げたことで知られています。その功績でノーベル平和賞が授与されました。「虹の水」は、命に飢えた人間の雄叫びの様にリスナーの胸に響くでしょう。