「ヨコのカギ」を続けます。「3.でも、部屋は今日も 夢を見てる」。これも、歌い出しでは無かったので、少々、苦労しました。

 「スフィア」です。作詞は、真梨子さん、作曲は、かつてのパートナー浜田金吾です。「スフィア」とは、英語の「sphere」で、「球、球体、球面、天体、星、月、範囲」等の意味だとか。

 2000年にNHKで放送された、バレーボールをテーマにしたドラマ「マッチポイント」の主題歌として真梨子さんが書き下ろした作品です。

 室井滋扮する実業団チームのセッター兼主将が、弱小バレー部存続の危機に奮闘するドラマでした。廃部推進役の監督として会社が派遣したのは、彼女のかつての恋人で、おまけに新しい彼女同伴と云う複雑な人間模様です。

 「スフィア」と云うタイトルは、バレーボールのボールを象徴しているのかも知れません。真梨子さんの詞には、他にもバレーボールを暗示するキーワードが散りばめられています。曰く、「悲しいサイン」やら「白いライン」。

 真梨子さんが綴った詞には、元カレに対するヒロインの未練が際立っています。愛するパートナーを喪った女の悔恨が痛いほど感じられます。もう一度、戻って来て欲しいと云う、叶わぬ彼女の熱い思いが胸に刺さります。

 「4.あなたが残したものなら 数すれない」。「Sincerely」です。作詞は、真梨子さん、作曲は三井誠。ちなみに、三井さんは、浜田さんと同じく、「クラフト」の元メンバーだとか。奥様は、俳優で作家の高橋洋子さんです。

 「Sincerely」。1993年6月に発売された、この作品は真梨子さんにとっても思い出深い作品ではないでしょうか。この年7月に、晴れてヘンリーさんと結婚し、カーネギーホールでの海外公演も成功させています。

 また、「Sincerely」、「そっと… Lovin'you」、「So in Love」と続くシングルはUNIMATのイメージソングとなり、UNIMATグループの強力なバックアップで英国アルバートホール、香港コンベンションセンターでの海外公演も実現しました。

 真梨子さんは、円熟の40代を迎えて正に脂の乗り切った音楽活動を充実させていました。その証左となるのは、この時期、彼女は90本~120本のコンサートをこなしていました。「Sincerely」はそんな真梨子さん充実期の1作です。

 Sincerely」と云うのはご存知の方も多いと思いますが、手紙の最後などに使う決まり文句で、あえて日本語にすれば「心から」といった意味合いの助動詞でしょう。歌の内容も、別れた元恋人への女性らしい心の葛藤が柔らかく表現されています。

 「Sincerely」では、真梨子さんにしては珍しくMVが製作されています。純白のワンピースを纏って、溌溂と歌う真梨子さんは光り輝いています。かつての恋人に対する私信の様なバラードですが、どこか心弾む印象です。真梨子さんの優しさが滲み出た、大人の女性の魅力を感じさせる一曲だと思います。