手前味噌な話で大変恐縮ですが、最近私の勤める出版社 でこんな本を出しました。


かいたん☆かいたん 八ヶ岳縄文人への道
「ドキュメント口蹄疫」
宮崎日日新聞社 著


この本に関する共同通信配信の書評が、昨日(1月23日)神奈川新聞に載りました。

かいたん☆かいたん 八ヶ岳縄文人への道

2010年4月に宮崎県で起こった口蹄疫は、29万頭もの牛と豚を殺処分にした畜産史上で類を見ないような大惨事でしたが、今では東日本大震災や原発事故という大きな災害があったこともあり、記憶の彼方に霞みつつあるかと思います。

しかし、あの時畜産農家や地域に起こっていたことは、問題の性格は違うとは言え、ちょうど東日本大震災や原発事故によって起こった大惨事と同じような状況を生んでいました。

この本は、宮崎のローカル紙「宮崎日日新聞」が総力を挙げてこの事件と取り組んだ記録です。

大惨事に大きく揺れた宮崎県内の畜産農家
や地域の状況を丹念に取材し、現場の苦悩や事件が抱える問題点などを浮き彫りにして大きな反響を呼び、その復興に至る過程まで描いた長期にわたる連載は、関係者のみならず、県民全体にも大きな感動と励ましを与えました。

その連載記事と関連記事は、現在宮崎日日新聞の「再生 口蹄疫」 というページにもすべて掲載され、誰でも見れるようになっています。関心のある方このサイトをぜひご覧下さい(本の内容は、このサイトに載っている連載記事を編集したものです)。

まさにローカルジャーナリズムらしい、地に足の着いた素晴らしい仕事だと思います。


(追伸)

昨日取寄せた「畜産の研究」2012年1月号 では、
「東日本大震災下の動物たちと人間の記録」と題して、心

ある獣医師の人たちが、原発事故の下で動物たちに起こった災禍を記録し、報告しています。


かいたん☆かいたん 八ヶ岳縄文人への道


宮崎の口蹄疫のときとは局面が異なりますが、警戒区域において多くの家畜たちが命を落としています。そのうちの多くは畜舎に繋がれたまま無残に餓死し、また飼い主の善意によって野生に放たれた家畜(やペット)たちも、国の指導によって捉えられた後には強制的に安楽死させられた実態が、現場に入った獣医師たちによる悲痛な言葉と目を覆いたくなるような現場の悲惨な写真とで報告されています。

その中に掲載された写真の一枚に、
飯舘村で愛情を持って育ててきた牛を死なせてしまったことを悲しんだ酪農家が、 死んだ牛を畑に埋めて、供養の意味で手作りの祭壇まで作った写真がありました。

この写真を見て思い出したのが、口蹄疫のあった宮崎県川南町での話。養豚家のそのお母さんも、殺処分になった豚を山野に産業廃棄物のように埋める(捨てる)のは忍びないと、家の一番環境のよい畑に埋葬してあげたそうです。

こうした畜産農家の悲しみや苦悩を思うとき、もう少し早く動くことで、少しでも家畜の命を救うことはできなかったものか。ともに当時の行政の対応やその裏付けとなる家畜伝染病予防法などの法律や規則の内容に対して、疑念を持たざるを得ません