合同会社を作って、そろそろ一人では回らなくなってきた。人を雇いたいけれど、合同会社の「社員」と従業員は何が違うのか、アルバイトと正社員で手続きはどう変わるのか、という疑問を持つ代表社員の方に向けた記事です。雇用形態ごとの違いを、労働条件の明示、雇用保険、社会保険という3つの線引きで整理します。2026年10月時点の基準で書いていますが、短時間労働者の社会保険は段階的に対象が広がっている途中なので、採用のタイミングで必ず最新の情報を確認してください。
Q1. 合同会社の「社員」を雇うことはできる?
まず言葉の整理からです。合同会社でいう「社員」は、会社法上の出資者のことで、会社に雇われている人ではありません。株式会社でいえば株主と取締役を兼ねたような立場で、定款に名前が載り、登記にも業務執行社員として記録されます。一方、求人を出して採用する人は「従業員」で、会社との間で雇用契約を結ぶ労働者です。
この違いは税務上もはっきりしています。国税庁のタックスアンサーでは、合同会社の業務執行社員は、使用人以外で法人の経営に従事している者として役員に含まれるとされています。つまり社員に払うお金は役員報酬、従業員に払うお金は給与という扱いになります。「社員として雇う」という言い方はよく聞きますが、合同会社では成り立たない表現なので、出資して経営に加わってもらうのか、雇用契約で働いてもらうのかを最初に決める必要があります。
Q2. 従業員の雇用形態にはどんな種類がある?
従業員の雇用形態は、大きく「契約期間」と「労働時間」の2軸で分かれます。
正社員は契約期間の定めがない無期雇用で、フルタイムで働くのが基本です。契約社員は半年や1年といった期間を区切った有期雇用ですが、労働時間はフルタイムのことが多く、正社員との違いは主に契約期間にあります。パート・アルバイトは有期と無期のどちらもあり得ますが、労働時間が正社員より短い点が特徴です。最後の業務委託はそもそも雇用ではないので、契約期間の考え方も労働時間の指定もありません。
合同会社だからといって、使える雇用形態が制限されることはありません。株式会社と同じく、正社員もアルバイトも契約社員も雇えます。注意したいのは最後の業務委託で、これは雇用契約ではなく請負や委任なので、労働基準法の保護も雇用保険も対象外です。実態が指揮命令を受けて働く従業員と変わらないのに業務委託の形だけ取ると、あとから雇用とみなされるおそれがあります。
どの雇用形態でも、雇い入れるときには労働条件を書面で明示する義務があります。2024年4月からは、就業場所と業務の変更の範囲、有期契約の更新上限の有無、無期転換を申し込める旨などが明示事項に加わりました。厚生労働省がモデル労働条件通知書を公開しているので、それをベースに作るのが早いと思います。
参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
Q3. アルバイトでも雇用保険に入れないといけない?
雇用保険は、雇用形態の名前ではなく労働時間と雇用見込みで決まります。厚生労働省の案内によると、1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上引き続き雇用される見込みがある人は、パートでもアルバイトでも被保険者になります。期間の定めがない契約、31日以上の契約、更新規定がある契約は、いずれも「31日以上の見込みあり」と扱われます。
逆にいえば、週15時間の学生アルバイトのように20時間に届かない人は、2026年10月時点では雇用保険の対象外です。ただし、この週20時間という線は引き下げる方向で法改正が進んでいるので、2028年以降に雇う場合は改めて確認が必要になります。
合同会社特有の話として、代表社員や業務執行社員は労働者ではないため、雇用保険にも労災保険にも入れません。従業員を1人でも雇った時点で会社は労働保険の適用事業所になりますが、社員自身は対象外のままです。
参考:厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」
Q4. 健康保険と厚生年金はどの雇用形態から加入になる?
合同会社は法人なので、社員1人だけでも健康保険と厚生年金の強制適用事業所です。従業員を雇った場合、その人が被保険者になるかどうかは、日本年金機構が示す「4分の3基準」で判定します。1週の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、正社員など通常の労働者の4分の3以上であれば、パートや契約社員という名称に関係なく加入です。
4分の3に満たない短時間労働者については、週20時間以上、学生でない、2か月を超える雇用見込みがある、といった条件を満たし、かつ会社が特定適用事業所(2026年10月時点では被保険者数51人以上)に当たる場合に加入対象になります。この規模要件は、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上へと段階的に下がる予定です。設立したばかりの合同会社なら当面は4分の3基準だけを見ればよいケースが多いものの、数年後には小さな会社でも週20時間のパートが対象になる、という流れは覚えておいたほうがよいでしょう。
参考:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
Q5. 雇用形態を決めたあと、最初にやる手続きは?
雇用形態と保険の線引きが決まれば、手続きは窓口ごとに整理できます。労働基準監督署に労災保険の保険関係成立届、ハローワークに雇用保険の適用事業所設置届と資格取得届、年金事務所に健康保険・厚生年金の被保険者資格取得届です。年金事務所の資格取得届は雇い入れから5日以内と期限が短いので、入社日が決まったら先に書類をそろえておくと慌てません。
従業員を初めて雇うときの労働保険の手続きは、合同会社が従業員を雇うときの労働保険と雇用保険の記事で窓口と期限を一覧にしています。合同会社の社会保険と雇用に関する記事はこちらのカテゴリーにまとまっていますので、一人会社の加入義務から順に読むと全体像がつかめるはずです。
参考:日本年金機構「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」
まとめ
合同会社の社員は出資者であって従業員ではなく、人を雇うときは必ず従業員として雇用契約を結びます。雇用形態は正社員・契約社員・パート・アルバイトのどれでも選べますが、保険の加入は名称ではなく時間と期間で決まります。雇用保険は週20時間以上かつ31日以上の見込み、社会保険は通常の労働者の4分の3以上が基本線で、短時間労働者への適用は会社規模に応じて拡大中です。雇用形態を決める前に、この2本の線のどちら側に置く働き方なのかを考えておくと、あとの手続きも給与計算も迷いません。迷ったら年金事務所やハローワーク、社会保険労務士に早めに相談するのが確実です。
