うつ病の引き金
うつ病が広く世間に出回るようになってから、
型にはめたかのように「うつ」の診断が下った。
自分が実際にうつの診断が下る前は、なんとなく、「精神病」に
憧れを抱いていた。
少しオカシナ感じ。イカレタ感じ。ハカナイ感じ。
健康体で、見た目も激しく悪いわけじゃない。
一般的な健康だった。
壊れたのはいつだろう。
一応、会社には過労と言ってある。
でも、引き金はもとちゃんが自分の事を隠していた所為が大きい。
もとちゃんはゲイだった。
一緒に暮らしていて、しかも好きあって暮らしていた普通の男女なのに、
何も無い。セックスって鬱陶しいと思っていたけど、あまりにもなにも無くて
そしてキスさえも拒むもとちゃん。
「何かある」
そう思って、もとちゃんの部屋をのぞいた。今から思えば最低な奴だと思う。
でもその時はとにかく、もとちゃんのことを知りたかった。
詳しい手口はまだ書きたくない。今のところ書く気もない。
結果だけ言うと、100%もとちゃんはゲイ、ホモだった。
脳天を突き抜けるような衝撃というのはこういうことを言うのだと思う。
手足が震え、涙が出てきた。体の力が抜けるというのはこういうことを言うのだろう。
もとちゃんはいつもわたしに優しい。もとちゃんはいつも笑顔を見せてくれる。
だけど、それが、全て偽りだったのだ。笑ってしまう。
もとちゃんをずっと大事に思っていた感情が、あまりにも無駄で、くだらなくて、
粗末にされてしまった。
悔しいとか、怒るとかそういう類の感情は当初無かった。
ただただ、脱力。全てが虚しくなった。もとちゃんの本当の姿を知らないで
ただただ好きな感情に任せて一緒に暮らし始めた自分の軽薄さに絶望した。
絶望。
それが一番当時の私に似合った言葉だろう。
大きな挫折とでも言おうか。
こんなに苦しい思いをするくらいなら、いっそのこと、もとちゃんが死んでしまえばいい。
そうすればわたしは楽になる。楽しい思い出だけで飯を食って生きられる。
身勝手な思いがその日から毎日繰り広げられることになった。
もとちゃんは何食わぬ顔して、いつもどおりの笑顔をわたしに向ける。
騙されている振りをして毎日顔を合わせて、おどけてみせた。
騙されている振りをすることが、もとちゃんに対する唯一の反抗だった。
…あー、いやいや。まだこんな事書いちゃうんだ。
自分が嫌になるな。
今のもとちゃんはとても大事な人生の指導者。壊されてたまるか。
少しだけ、ほんの少しだけ、もとちゃんのおかげで強くなった。
今度こそうつ病のこと書くぞ~。ほな。