最近はウマ娘の人気に伴いその知名度は抜群に高く、ここで彼について詳しく綴る必要はないでしょう。今回は2012年クラシック世代の牡馬の代表、ゴールドシップが皐月賞で見せたいわゆる「ゴルシワープ」にまつわる話と検証をしていきます。

 

「ゴルシワープ」とは
実際の動画を見てもらうのが手っ取り早いかと思います。

 

 

クラシック初戦、ゴールドシップは共同通信杯を制したものの、グランデッツァ、ワールドエース等の有力馬よりは評価を下げられ4番人気。当時は芦毛に対する「皐月賞は走らないのでは?」というイメージが強かったのも事実です(この年はゴルシの他にカレンチャン、ホエールキャプチャなどがG1を制し、芦毛の評価がさらに変化した一年だったと思っています。)開催最終日、前日の雨が重なってインコースの馬場はかなり荒れた状態。ゴルシの土の飛ばしっぷりを見てもらえば分かる通りです。それを回避するためにほとんどの馬が進路を外に取ったわけですが、ではゴルシと他の馬とではどれほどの距離の差があったのか、気になってしまい夜も眠れない方も多いと思います。もちろん距離ロスがいくら少ないからと言ってもそこには馬場とのトレードオフが生じます。だが超一級品のパワーを持つゴルシにとっては最適のコース取りだったのかもしれないですね(ウチパクさんの判断力も然り)

 

3頭での比較

ここから本題に入っていきましょう。まずは移動距離の比較を行うため、1着のゴールドシップ、2着のワールドエース、3着のディープブリランテの3頭のコーナリングの軌道を見ていきます。(以下橙がゴルシ、赤がディープブリランテ、黄がワールドエースです)

上記の動画とパトロールビデオを見る限り、3コーナー入り口付近では3頭とも同じくらいの位置から。ゴールドシップの場合、内ラチとの間隔をほぼ一定にしてコーナーを曲がりそのまま直線に入ったイメージ。ワールドエースは既に600m地点で、自身とターフの端の中点をゴルシに置くような形に。そこから直線ではより膨らんでディープブリランテを挟む隊形になりました。(図1)

 

 

 

(黒い縦線は内ラチを表す)

 

これを念頭に置きつつ、JRA公式のコース平面図に3頭の動きを楕円に近似させてプロットすると以下のようになります(図2)

画像はJRA公式ホームページより引用。

(外ラチが上の画像には正確に記入されていないので、ワールドエースが枠線からはみ出してしまいました。)

 

ここで、コーナーにおける各馬の移動距離を上図の楕円の円周の半分と仮定します。縮尺に留意しながら短半径、長半径、円周の半分を計算すると以下のようになります。なお計算が煩雑になるため高低差は考えないものとします。単位は全てメートルです。

 

 

 

結果

上記より、ゴルシが約502mで回ったコーナーを、先行していたディープブリランテが約526m、ワールドエースは約552mで回ったことが分かります。直線でのロスはなかったとするとディープブリランテとの差は24m、ワールドエースとの差は50mとなりますが、1馬身は約2.4mなのでそれぞれ10馬身差、20馬身差です。コーナーだけで他馬と20m以上優位に立ったわけですから「ワープした!」と思われても仕方がないでしょう。もちろん荒れた馬場を走ってスタミナは相当削られたはずなので大きな着差がついたわけではありません。それでもここまで力強い走りができるのはやはりゴールドシップの素質故でしょう。今後同じようなシチュエーションに出くわす機会は意外と多いかもしれません。これほどの距離差が出るわけですから、パワーに自信のある馬はインコースを強引に攻めるのも有力な作戦かと思われます。
 

(高1K.Y)