今日、晩ご飯を食べている時に
カイが急にマジメな話を始めた。

俺、今はバイト頑張りよるけど
6月いっぱいくらいで辞めるけん、
試験に向けて、そろそろ頑張らんと
いかん思っとるけん。

カイの言う事はよくわかる。
消防士になりたいと常々言っている。
でも消防士になるのは
難関中の難関だ。
すごい倍率の中で合格するのは
並大抵な事ではない。

高校卒業後、専門学校へ行き、
まずは海保を受けた。
残念ながら、あと1問に泣いた。
たかが1問、されど1問。

本当は警察官になりたがっていた。
でも高校の時に、窃チャリで
補導された。
それに関して弁解はできないが、
少しだけ 言い訳をさせてほしい。
それまで何度もチャリを盗まれていた。
そのたびに購入。
何度も盗られて、もう私には
言えなかったのだ。
母子家庭で生活は決して楽ではない。
これ以上私に迷惑はかけられない、
盗られたのでまた買ってとは
口が裂けても言えなかったのだ。
チャリ通学だったので、
なんとかして手に入れないといけない、
俺も何度も盗られてるんだから
1度くらい…
それで、すぐに補導されたのだ。

この時点で警察官の夢をあきらめかけた。
でも、もしかしたらまだ可能性が
あるかもしれないと思っていた。

月日がたち、次は原付バイクで
交通事故を起こした。
それで、警察官の夢が消えた。
専門学校の先生からきっぱり
言われたそうだ。
事故を起こした時点で
警察官になるのは無理だ、と。

それでまずは海保を受け、落ちた。
カイはもともと体育会系だ。
そして、試行錯誤の中、
消防士こそが自分に適した
職業だ…そう思ったに違いない。

そしてその年の試験に落ちた。
その後、名古屋の会社に就職。
でもどうしても消防士の夢を
あきらめきれず、福岡に帰ってきた。

そしてバイトの日々を過ごし、
昨日の告白だ。
試験は9月にある。
本格的に勉強に没頭したいらしい。
本当は、4月にまた専門学校に
行きたいと言っていたが受講料が
高額なので断念した。

今はバイトをしながらきちんと
家にお金を毎月欠かさず入れてくれている。
今まで心配ばかりかけていたが
本当に親思いのムスコだと思う。
私は親バカだ~

バイト辞めて勉強するけど
俺だって少しくらい貯金はあるけん
お金は毎月入れるけん、
心配せんでいいけん、
俺、頑張るけん。

無理だから就職してと言うのは簡単だ。
でも、ダメだとわかっていても
親の私がカイを応援してあげないと
いけないと思う。

頑張ろうとする気持ち、
それが1番大事だ。

カイは忍耐力もあり人一倍、正義感が強い。
身長も190センチあり、体格もいい。
健康で視力もすこぶる良い。
消防士は天職だと思う。
そんなカイを認めてくれる
消防団があればいい…

成人式の前に家族写真を撮った。
ふたりで撮るのはきっとこれが
最後だろうと思う。
カイは私の宝だが、
このツーショット写真も
私のかけがえのない宝物だ。