こんにちは。

絵本作家のいわたかいと言います。

覗いていただいてありがとうございます。

深く感謝いたします。

 

 


少しばかり、絵本が面白くなる

絵本に綴りこぼれた背景

お話しさせてください。

 

 



となりの芝生さえ青い人間の僕らは

遠く遠く離れた友達の芝生さえ、

簡単に覗ける情報に溢れた現代に生まれ落ちて

 

 

画面を覗けば、いつだって羨ましくて

お店を覗けば、「イイもの」選びはキリがない。

 

 

選択肢が多くなったことは

すごく恵まれて幸せなことだけれど

「自分の幸せを、自分で決められること」が交換条件になった。

 

 

誰かに「あなたは幸せなんだよ?」と

言われたいわけじゃない。

 

 

のに、

自分の選んだ生き方が

本当に「一番幸せ」なのかな?

なんて、不安になってしまうことが

今の世の中では、往往にしてあると思うんです。

 

 

だからこそ、

「自分で選んだ道が、正解だったと思える」

そんな生き方を提案できたらなと思って、

この本を描きあげた次第です。

 

 

 

あなたの生き方が

少しでも前向きに、明るくなりますよう、

心から願っております。

 







 

「カラーオブキャラメル」


いわたかい







 



 


「あなただからできることが、きっとあるはずよ。」

 

 




 


二人の冒険家、タロベル青年とパレット爺がこの島を発見して、

もう何十年もたつけれど、

島の奥の奥深くでは、まだまだ森がおいしげり、動物たちがあっちやこっちや。

生き物たちの楽園です。

 

 

 


 

カメレオンの住む森の学校では、周りの色と同じになるように教えられます。

葉っぱの上なら葉っぱの色に、枝の上なら木の色になるように、教えられるのです。

色を変えるのに得意不得意はあっても、そうやって自分の身を守っているのです。

                

カメレオンの青年、キャラメルは、カメレオンなのに体の色はまっかっか。

おまけに、体の色を変えることができないのです。

日が昇り、また今日もカメレオンたちの一日が、始まります。

 

 

 

 


キャラメルの通う学校では、今日もカメレオンたちが体の色を変えて遊んでいます。

「やい、俺の方が変わったぜ」

「いや、わたしの方が」

 

そんな中、キャラメルは今日も色を変えられません。

「お前はいっつも、まっかっかだな」

「へたっぴだなあ」

毎日あびせられる、心無い言葉。

キャラメルは、自分の体が嫌いでした。

 

 

 


 

むかし、キャラメルの住む山で火事がありました。

大きな大きな炎の中、キャラメルは、山一番の巨大樹が倒れていくのを、炎と同じ赤に体を染めて、ただ立ち尽くして見ていました。

いつも遊んでいた巨大樹でした。

思い出の詰まった巨大樹でした。

その日のショックから、キャラメルの体が赤色から戻ることはなくなってしまったのです。

倒れた巨大樹は、キャラメルの住む町ととなり町をつなぐ道をふさいでしまうほどでした。

 




 

 




ある日、キャラメルのクラスは“シロノキの森”に遠足に行きました。

ここの木は、木の枝がどれもまっしろけ。普段と違う色になる練習をするのにもってこいです。

「おいキャラメル、今日もお前は赤いまんまだな」

「俺らみたいに白くなれよ」

大きな体のボルボと、ひょろながのジョーが言います。

今日も、全く色を変えられないのはキャラメルだけ。白い森の中、まっかっかが目立っています。

キャラメルは、みんなの輪をはなれ、ひとりになりました。

「僕もみんなと同じがいいよ……。なんでこんなに目立つ、赤色なんだ。みんなと友達になりたいのに……。」

もう一度力をふりしぼります。それでもずーっとまっかっか。

 

 

 

 

 

「あなたはいいわね、まっかっかで。」

後ろからした声は、となり町から通う女の子の、クレハでした。

となり町から学校へは、巨大樹が倒れたせいでたいへんな回り道をしないといけません。猛獣たちの住む森を抜け、大きな川を渡ってやっとたどり着くのです。まだ小さいカメレオンにとっては、命がけなのです。

そんなクレハを、キャラメルは木の強そうな子だと思っていました。

 

「どこがいいんだい。まっかっかなんだぞ?からかってるのか」

キャラメルは少し腹が立ちました。

「からかってなんかないわ。ステキな赤色じゃない。その体を『いいな』と思ったことないの?もったいないわ」

キャラメルには、どういうことかさっぱりでした。

 

 

 

 

 

クレハは、キャラメルのとなりにひょいと座り、続けます。

「あなたはまっかっかなその体のおかげで有名なのよ。たくさんの友達を作るには、たくさんの子に知られるのが一番簡単じゃない。」

キャラメルはハッとしました。この体の“おかげで”なんて、考えたこともなかったからです。確かに、キャラメルに全く友達がいないわけではありません。

「アタシなんてあなたの逆。自分で思っていなくても、勝手に体の色が変わっちゃうのよ」

クレハは、他の誰よりもキレイな白をしていました。

「昨日なんて、そのせいで先生がアタシに気付かなくって、『クレハは休みか?』だって。ひどいと思わない?」

「それはひどいね」

二人はハハハ、と笑いました。

それから二人はたくさんおしゃべりしました。

 

 

 

今日は、カメレオンたちのかくれんぼ大会。

“ウジャウジャの森”に集まるかくれんぼたち。もうかくれる練習をしているカメレオンもいます。

それでもやっぱり、キャラメルはかくれるのが苦手。森の中に、赤いものもありません。

「やいキャラメル、どうせお前はすぐ見つかるんだろうな」

ジョーがいつもの調子で言います。

その言葉の通り、何回やってもキャラメルはすぐに見つかってしまいました。

「お前がいると、うちのチームがすぐ負けるじゃないか!」

「あっちのチームへ行けよ!」

ひどいことを言われ、キャラメルはまた、一人ぼっちになりました。

 

 

 

 

 

ひとりで涙を流していると、クレハがやってきました。

「あなただからできることが、きっとあるはずよ。」

クレハがはげまします。

「もういいよ!君は色がかんたんに変わるんだろう?僕の気持ちなんてわかりっこないんだよ!」

キャラメルは声をあらげていいました。

「あっちへいっててよ……。」

クレハは、そっとその場を離れました。

それからしばらく、ふたりが会うことはなくなりました。

 

 

 

 

 

ある雨の日のこと。キャラメルが学校へ行くと、

そこには、体じゅう傷だらけで弱ったクレハがいました。

「どうしたんだい!?その体……。」

「今日学校へ来る途中、川の洪水に巻き込まれて、岩にひどく体を打っちゃったの……。」

確かに、今日はいつもより川の水は増え、流れも速くなっていました。

いつも気が強いクレハが悲しい目をしているのを見て、

キャラメルは心がしめつけられるような気持ちになりました。

 

クレハは、入院することになりました。

 

 

 

キャラメルは、なんとかしたいと思いました。

思い返すと、クレハは初めて、自分を認めてくれた存在でした。

そんなクレハを、絶対に手放したくないと思ったのです。

「クレハのために何かできないだろうか。…でも、自分の色さえ変えられない僕にできることなんて……。」

キャラメルはひとり、“シロノキの森”にいました。クレハと初めて話した場所です。

(「あなただからできることが、きっとあるはずよ」)

クレハの言葉がふいに頭に浮かびました。

「そうか」

 

キャラメルは、急いでクレハのもとへ走りました。

 

 

 

 

 

「僕だからできることがわかったよ、クレハ。君のためにできることがあったんだ。」

キャラメルは、これからクレハのためにしようとしていることを、いっしょうけんめい話しました。

「やっぱりあなたはステキね。病室からだけど、応援するわ。」

「待っててね、クレハ。」

そう言い残すと、キャラメルは学校へと走り出しました。

 

 

 

 

 

キャラメルは、運動場にみんなを集めて言いました。

「あの巨大樹を、もう一度立てよう!」

すると、

「何言ってんだよ!まっかっか!」

「できるわけないだろ!」

心ない声がたくさんとんできます。

しかしキャラメルは、クレハの言葉を信じていました。

(多くはバカにしてくる。けれども、知ってくれている子がたくさんいるんだから、わかってくれる子もたくさんいるはず。 たとえ、バカにされる方が多かったとしても。)

キャラメルは、確かに見たのです。静かに頷いてくれる仲間がいたのを。

「今日の夜、となり町の道をふさぐあの巨大樹のもとへ集まってほしい。」

そう言い残し、キャラメルは去っていきました。

 

 

 

 

 

日が落ちた頃、巨大樹の周りには、数え切れないほどたくさんの仲間が集まっていました。

「…よし。やろう!」

そういってみんなで根っこを持ち、枝のほうはツルをくくりつけ、

巨大樹を立ち上がらせる準備にとりかかりました。

「みんな、思いっきりひっぱるよ!せーのっ!」

カメレオンたちは、力いっぱい引っ張りました。

 

 

 

 

次の日の夜、キャラメルは退院したクレハとふたりで、シロノキの森にいました。

「アタシのためになんて、ありがとうね。」

「ありがとうなんて言われたら、照れるよ。」

キャラメルは、心がドキドキしていました。

 

 

 

 

「キレイな星空ね。」

「う、うん。」

「まだ照れてるの?」

クレハは笑いました。

「いや、そ、そんなんじゃない。」

キャラメルは、心のドキドキが止まりません。

「なによもう。…

 

 

 

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絵本版では

①質感の良い紙を使用しています。

絵本といえば、絵本らしい質感の紙です。

ツルツルとした、絵本らしい質感の紙を使用していますので

作品を手元に持つ感触を実感してみてください。

 

 

②気に入った絵を飾ることができます。

一枚一枚の絵を大切に描いたので

気に入った絵を飾れるように、カードになっています。

読んだ後は「絵」として楽しんでいただけます。

 

 

③いわたかいからの、絵本に込めたメッセージが

載せられています。

絵本の巻末に、ここにしか載せていない僕からのメッセージがあるので

少しでも心を温めてもらえると、嬉しく思います。