書き込まれていく日常

今日は何があったのか



戦争がー終わって暫し時間がー過ぎました

あれだけ酷く傷んだ城壁もー大分修繕が進んで、人のー復興へ向ける力にはー感心させられるばかりーなのです

けれど、目に見えない部分に見える部分ーと、確かに傷跡は残ってー居てまだまだ平和な頃にはー戻れない事をー教えてくれるのです

久方ぶりにー同属へ挨拶をするためにー森へ向かいました

ガイロナのー外れにある私の生える場所からー近い森に

焼けた者、削れた者、倒れた者、無事だった者、皆様ー一様に迎えて下さって、私はー彼らと人の話をーしたのです

エルフも獣人も人も魔族も悪魔もー生きる為に戦ってーそれは当然の事で、そのエネルギーの大きさにはー驚きを覚えます

破壊する力もー再び作り出す力もー彼らは持っていて、まるで避けられぬー濁流のよう

故にー私たち植物はー其れらを天災とー呼ぶのです

隣人のー引き起こす災

けれどーそれに罪は無くーただ通り過ぎるのを受け入れ、我らはー日々変わらぬー生を送るのでした

それをー彼らと話してー再び思い出せたのはー幸運なのーでしょう、ね


時折ー森の傍に佇むエルフの方をー何人も見かけました

彼らはー戦禍を受け入れるー森を見て、後にー何を思うのーでしょう?

願わくばー心平穏であってー欲しいものです




ここで文字は途切れている

今日は此処までのようだ

普段より更に汚い字で文字が書き込まれていく

筆者の感情のせいか、ペンを持つ手が震えているようだ



待っていた方がーふらりと帰っておいでーなのでした

お会いするのはー本当に久しぶりで、ただ、走りよる事しかー出来なかったのです

少しだけー体が大きくなっていた彼はー笑って下さって、誕生の祝いをー言って下さいました

それは、とても嬉しいー事なのですけれど、それ以上にーこうして再びお顔を拝見出来てー御話できた事が嬉しく

どうー言い表せば良いのーかしら

嬉しいよりもー嬉しいのです

まだまだ言葉のー勉強が足りてーいません、ね

人ならばーもっと良い表現をー知っておられるのでしょうーけれど


夜、セラにーお会いしました

久しぶりにー話した彼は眠たげでーそれでもゆっくり御話に付き合ってー下さって

ぬいぐるみをー頂く事にーなったのです

ああ、でも、今はー物が一杯でー掃除をしないととても置けないのでーぬいぐるみを引き取るにはーもう少しだけ時間がーかかりそう

あの杖、何処かへー持って行きましょうか、ね



ああ、それにーしても……この感謝の気持ち、何処へー届けましょう

友達とーまた出会えた事の感謝を



ここで文字は終わっている。今日は此処までのようだ

コレは戦時下の一風景

さして珍しくも無く語られる事も無い一枚絵


ああ、でも


きっと誰かが傷付いている



ビチャ


熱い


そう思える物が顔を覆う鋼鉄の隙間を抜けて鼻を濡らす
ぬるりとした感触
だが、ソレに構っている時間など無かった
ただがむしゃらに腕を振るう
荒い息は興奮のせいか、それとも内から溢れ出しそうな恐怖の為か

ビュッ、ビュッ

手にした鉄塊が振るわれる度、こびり付いた赤い色が辺りをも同じ色へ染めようと手を伸ばしていく
其の合間を縫って時折甲高く耳障りな音
気付けば周囲はソレと怒号、そして悲鳴に支配されていた


何でだよ、何で急に


彼等に言い渡されたのは安全な任務のはずだった
どうして自分が今こうして武器を振るっているのか解らない
彼の頭を支配していたのは混乱と恐怖
そして僅かな高揚感


どうしてこんなっ


腕だけが異質に重く感じる
持ち上げるのが辛い、振るうのが辛い
彼等はかれこれ1時間は戦い続けていた

もう嫌だ、もう動けない。そんな事を彼は思う

動きを止めれば腕は楽になり、絶え絶えな息も吸えるだろう
だが、彼が止まればきっと目の前の敵が其の手に持つソレを…

悲鳴と肉の潰れる音がする
今直ぐ傍で刃を振るっていた仲間が倒れてる
赤い色を撒き散らして
ソレは若い兵士の意識を砕くには十分すぎる狂気


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死ぬのは嫌だ


がむしゃらに剣を振るう
彼が生きているのは運が良いとしか言えなかった
振るう剣筋を見れば直ぐに訓練も出来ていない新兵だと解るだろう
ソレが何故剣を振るう事となっているのか


エルフィネスの森の中
前線から遠く離れたこの場所での懲戒任務
新兵の任務としては有触れたものだった
彼等もそう思って余裕を持って、だが緊張は忘れずに任務に望んでいた
けれど前線から遠く離れているという事で油断もあったのだろう
暫くするとひそひそと雑談をする者も現れた

静かな任務
部隊長も眉を潜めるが軽く咎めるだけで酷く叱りはしない
それはこれから育つ彼等のやる気を削がない為だったのかどうなのか
其処には新兵部隊ならではの甘さが漂ってた
男は軽くため息を漏らす

こいつらが一人前になる頃には戦況は動くだろうか

見えぬ先行きを思いながら、部隊長を任された男は一人油断なく辺りを探りながら部隊を率いていく
ベテランとして、隊長としてやるべき事は全て行い、新兵にもそれを叩き込むつもりだった
任務も中盤に差し掛かった頃


「小休止!各自休め」


彼の其の言葉を合図に新兵達は各々短い休憩を始める
彼自身は腰は下ろさず副官と続きの詳細を詰める
だが、彼らの行いは結局は実を結ばなかった
これから進む道を指差し確認をしていたまさに其の時、彼ら2人は血の詰まった肉袋となっていたのだから


「敵襲ーーー!」


誰が叫んだのか
声への反応は様々だった
状況を理解できない者
武器を取りすぐさま動ける体勢をとる者
冗談と思い今だ休憩を続ける者
慌しく逃げ出そうとする者

彼らは一様に何とも解らぬ敵の襲撃を受ける
胸を貫かれ、腕を切り落とされ、目を抉られ
対応出来たのは武器を持っていた者か距離があった者だけだった
突如の襲撃は年若い新兵達から思考力を奪い、襲撃者達はただ淡々と彼らを狩って行く
上がり続ける悲鳴
だが、時と共に応戦する者の怒号もソレに混じり、暫くすれば辺りは鉄の打ち合う音と雄雄しき叫び、そして悲鳴とが溶け合い、狩場から一転戦場へと変化していた


「畜生、畜生、死ねよっ。くんなよ」
「何だよ、何なんだよお前らっ」
「あぁあああぁあぁぁああっ」
「何で帝国がここまで。どうやっ…」


いくらか状況を把握出来るようになった彼らの目に写ったのは帝国軍旗
こんな奥地までどうやって?
そんな疑問を浮かべる間も無く戦いは加熱していく
考える前に剣を


やがて辺りに響いていた音が止み、静寂が現れる
後に残るのは森の緑と茶の合間に混じった赤
そして、人だったであろう肉の塊

それは戦場ではごく当たり前の光景
力持つ者が生きる事の出来る世界の一幕

書き込まれていく日常は時折思わぬ世界を見せる

それは、柿の木が望む望まざるに関わらず


深夜、歓声が上がりーました

それは、終わりを告げるー声で


戦争というー時間を過ごしていた方にとって、区切りとなるー物

そうして一つの結果がーでました。エルフィネスの勝利という

国内はー喜びに沸いて、頑張っていた方はー報われる思いだろうとー思いました

私もー勝利出来て本当にー良かったと思うのです

ただ、やっぱりー引っ掛かりを覚えずにはー居れません

淘汰は自然な事でー疑問に思う事は無いはずなのーですけれど、人と共にー長く過ごしたせいか、考え方にー影響を受けているーようです

それが良い事ーなのか悪い事なのーかは今はー解りません


ただ、そうやって色々な事をー覚えて行く内に私はー精霊として酷く歪な者にーなるのではないかという不安をー覚えます

木で在りー続ける事、精霊でー在り続ける事

人に関わり続けるとしてもーこれだけは忘れないように

私はー彼らと同じ者にはーなれないのですから

感情も考え方もーそして種としても



そうそう、丘でー近道のお話を頂いたのーです

丁度手元にー手記がなくて近道を記録できなかったのーですけれど、今日漸くー近道を記録したのでこれからいつでもーお伺いできるのーです

コバチさんの所とーカジカさんの場所、それからーNAぁさんにークライさん

ふふっ、一気に沢山ー増えて凄く嬉しい気持ちにーなってしまいます

これからもー宜しくお願いー致します、ね。皆様





ここで文字は途切れている

今日は此処までのようだ

木が書き込むのは彼の歩む歴史

自身が関わった出来事をそっと記していく



手紙をー頂きました

心が騒ぐー手紙を

始め、私の元へー近づいてくる其の足音が聞こえたー時、聴覚をー疑ってーしまいました

だって彼はー彼女の傍から離れるはずがーないのですもの

その彼がー手紙を口に銜えて私の元までーやってきたのです

受け取って、差出人の名前をー見た時になんともいえない感情にー支配されてしまいーました

とても優しいー字、言葉

彼女そのものがー手紙には詰まってー居りましたから

彼はー私が受け取ったのを確認するとさっと踵を返してー帰って行きましたけれど、其の背に何度もーお礼を言ったのです


手紙に書かれていたのはー祝いの言葉

覚えていて下さった事にー驚き、そしてー心から何かが溢れそうにーなりました

人が涙を流す時はーもしかしてこのようなー時なのでしょうか?

読み終えた後にーそっとそれをしまいました

大事な大事な友人からのー祝いの手紙


再び眠りに付いた彼女の事を思いながらーそっと空を見て願うのです

彼女が見る夢がー良い夢でありつづけーますように、と




ここで文字は途切れている

今日は此処までのようだ