KDDIが、販売代理店「auショップ」支援を大幅強化する。ショップ別に顧客向け会員制度を導入し、店舗が顧客の購買履歴などに合わせ、きめ細かな販促活動が行えるようにするほか、契約獲得時の奨励金支払い制度も拡充する。端末市況冷え込みを受け、業績悪化が懸念される代理店支援を強化する一方、顧客の囲い込みにもつなげる狙いがある。

 まず店舗向け会員制度を年初に導入。店舗ごとに顧客情報を詳細に管理できる体制を整えることで、顧客のニーズにあった販促活動を店舗自らが行えるようにする。

 例えば、本体の外側を取り替えてデザインを変更できる端末の購入者には、auショップが新デザイン発売時に直接ダイレクトメールを送るなどの販促活動を想定している。

 KDDIにとっても戦略商品が売り込みやすくなるメリットがある。対象商品の購入やサービス申し込みにつながった場合は、KDDIは店舗への報奨金を手厚くする方針。同様の制度は、NTTドコモが2004年から導入している。

 KDDIは来夏をめどに、契約に伴う販売手数料支払い期間などについても見直す。KDDIは現在、店舗が契約を獲得した後、アフターサービスなどの名目で基本的に6年間手数料を支払い続けているが、その期間を延ばす方針だ。契約者が2台目の端末を購入した場合、手数料を倍増させるなどの施策も検討している。

 国内の携帯電話市場は、長期間契約を前提に通話料金を引き下げる料金制度の導入が進んだことで、新端末の販売台数が急減。今年の端末販売台数は、前年比で約2割の減少が見込まれている。

 販売店の運営などを請け負う企業では、10月に最大手のテレパークが同業大手のエム・エス・コミュニケーションズを合併するなど、業界再編が進んでいる。そのため携帯電話事業者は、代理店への支援強化が急務となっていた。

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【予報図】

 ■支出拡大、体力勝負に

 携帯電話端末の一層の販売減少が予想されるなか、顧客との“接点”の販売店は、今後、携帯電話事業者各社にとり、さらに重要になると予想される。KDDIは今年7月に番号持ち運び制で初の転出超過を記録。10月も転出超過に陥った。今回、販売店支援強化に踏み切る背景には、単なる販売店運営企業への支援という側面だけでなく、KDDI自身の経営改善に不可欠という意識があるからだ。

 他社は「現時点では特に支援強化は検討していない」(NTTドコモ)、「販売店との契約内容は公開できない」(ソフトバンクモバイル)などとしているが、販売店支援が重要とする認識は各事業者とも一致している。ただ、店舗支援は大幅な支出拡大に直結するだけに、その度合いは事業者の経営体力により“格差”が生じる可能性も高い。(黒川信雄)