「◯◯くん、受験受かったんだって」


子供がそうわたしに何気なく伝えてきた。

◯◯くんは保育園の頃から一緒だった子だ。

ただ、一緒だっただけだけど。

一度保育園のPTAで役員をやって、その時に少し仲良くなって家に呼ばれたりしたけど

特にそれ以上の仲になることはなく、会ったら挨拶してちょっと話すだけの関係。



「そうなんだ、良かったねえ」



それなのに、どうしてこんなに胸がザワザワするんだろう。


うちは双子だし、夫はボーナスも出ない会社に勤めてるし、わたしは派遣だし。

だから中学受験なんて絶対に、絶対に出来るわけないんだけど。


◯◯くんが受験することは秋に◯◯くんのお母さんとちらっと立ち話した時に聞いた。


「受験するんだ!すごいね〜!」

「あはは、記念受験だよ。塾にも行かせないから多分無理なんだけどさ。まだ全然勉強してないし。中学も一緒になるはずだからよろしくね」


そう言ってたのに。



「◯◯くんのお母さん、看護師で大学出てて頭良いからお母さんが勉強教えたんだって」




殴られたような気持ちになった。

結局母親が中卒で馬鹿だと子供がかわいそうだっていうのはこういうことなんだと思う。


「そうなんだ。ママは馬鹿だから、教えてあげられなくてごめんね」

笑って言った。馬鹿はヘラヘラするしかないのだ。割を食うのは子供。



◯◯くんのお母さんは誰とでも分け隔てなく話して、みんなから好かれていた。

わたしはPTA役員をやったけど、誰の役にも立たなかったし知り合いも出来なかった。そもそもママ友もいない。



🐰も🐱も発達障害なんだから、受験なんか出来る訳ないのにね。何もかも棚に上げて、人を羨んで生きるのは疲れた。


子供は「◯◯ちゃんも受かったって!良かったね〜〜」と他人の合格を喜んでいた。せめて心だけは綺麗でいてくれるなら、わたし以上の人生は送れるに違いないね。

早く地獄に落ちたい。