景気が急激に冷え込んでくると、倒産回避のために解雇に踏み切る会社が増えてきます。
社会がそろって、「解雇が悪」 のように罵っています。
解雇する会社は、働き手の生活など省みず、利益のことしか考えていないように
言われますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
解雇が悪い行為だと多くの人が言いますが、解雇 = 悪 なのでしょうか?


そんな筈ないだろ!

「解雇は悪だ」、そんな馬鹿な話はありません。考えてみて下さい。
解雇というのは、会社全体が傾いていて、このままでは倒産してしまう、
そうなれば従業員全員が職を失い路頭に迷うことになります。
こういう状況を防ぐためにやむを得ず断行する解雇が 「悪」 だというのは、
おかしな話です。

会社には、従業員の生活を守る義務があります。盲目的な世間の風評を
恐れて、必要な人員整理をしなかったばかりに、会社全体が潰れてしまって、
従業員全員を 「皆殺し」 にしてしまうことこそ本当の 「悪」 です。


考えてみてください

解雇を断行せずに会社が倒産した場合、解雇される予定だった従業員も
「職を失う」 という、同じ末路をたどります。しかも、退職金も出ない、
解雇手当も出ない、その会社の再就職支援も受けられないという
更に悪い条件での失職です。従業員全員がこうした皆殺しの目にあって、
これ以上悪い状況があるでしょうか?

解雇は悪だ、というのは明らかに間違いです。

あくまで悪いのは、不当解雇であり、不可抗力によって生じたやむを得ない状態から
会社を守るために行う解雇は悪ではありません。むしろ逆です。会社が一時的に
何人かの従業員を解雇して、経営を再編して、不況が去ったのちに
業績を伸ばしたとします。そうなれば、仕切り直してより多くの従業員を雇用できるわけです。

会社状態を健全に保つことで、長期的な視点で見ればより多くの従業員を雇用し、
税金も納め、それが社会的な貢献となります。潰れていれば、新たな採用も、
残った従業員の手当ても、社会貢献も何もありません。
しかし、いかに回避不可能な解雇とはいえ、人を切るわけですから、その苦しみに
相当する手当支給や、やり方というものがあります。解雇にも美学はあります。


解雇にも美学がある

やむを得ず解雇しなければいけない状況であっても、どういった手順
で人員整理を進め、誰をどのタイミングで、どういう待遇で解雇するか
というのには、「最低限守るべき美学」 というものがあります。
幾らやむを得ないといっても、切られる相手にも生活があります。扶養義務や、
ローン、将来への希望と不安、そうしたものを持っている 「人間」 を
切るわけですから、切り捨て御免では済まないのは当然です。


美学と法律論は違う

この額さえ支払えば違法にはならないから、その最低額だけ支給して
切り捨てよう... 乱暴な扱いをして訴えられても慰謝料を払って
裁判を乗り切れるならそれでもいい...

法律上は、それで片付くのかもしれませんが、これでは経営者として
失格です。法的に問題がなければ社員をどう振り回してもいいという
わけではありません。法律は誰もが守るべき「最低限のルール」で
あって、不当な扱いを正当化する充分条件にはなりません。


会社そのもの、会社に残る従業員、会社を去る従業員、
全員の不幸せの和を最小化し、将来長い目で見た全員の
幸せの和を最大化させる

これが解雇のあり方であり、そもそも、この目的のために
解雇を断行するのではないでしょうか?

例えば、6ヶ月以内に30人の解雇をする場合に、まずは早期退職、自主退職者を募り、
結婚退職を考えている社員、そろそろ転職をと考えている社員、一身上の都合で
退職を考えている社員、30人が離職を自ら希望すれば、この人員整理には
「強制された不幸せ」 は一切ないわけです。逆に、唐突にリストラ勧告をして、
半ば強制的に辞めさせる、嫌がらせをする、などという卑劣な解雇は、
法的にも美学的にも問題ありですし、
こうした解雇は、間違いなく トラブルを招きます。

会社存続のための解雇であっても、解雇は誠意と注意を持って行いましょう。
下手な解雇をしたばかりに、会社が傾いた、倒産した、では元も子もありません。


解雇で倒産

解雇、リストラは、やり方を間違えれば会社の業績を逆に悪化させたり
信用を落としたりする原因になりかねません。不況下において、法律も
美学も顧みず、大量解雇(指名解雇)を断行する企業がちらほら
出てきました。特に外資系企業は、日本の企業に比べてドライで、
人情や世間体等を重要視せず、どんどん切っていきます。
確かに厚めの手切れ金(通称「パッケージ」)の提示などもありますが、
なりふり構わず従業員を斬りまくる姿は、社会的印象が悪いのは事実です。


しかし、いったん景気が回復してきて、優秀な人材を企業が取りあう状況になった時に、
こうした乱暴なリストラを実行したことで有名になった企業はどうでしょうか?
優秀な人材は、その有無を言わせぬ大規模リストラで有名になった企業に
入りたいと思うでしょうか?

思うはずはありません。長い目で見れば、その場凌ぎで大幅な人員削減をして、
急場を乗り切ったとしても、長い目で見れば、大幅な信頼の落ち込み、人材の質の低下、
即ち競争力の低下につながることは目に見えています。これまで数え切れないほどの
会社が倒産してきましたが、信頼の低下、競争力の低下が要因でどれだけの会社が
潰れてきたのでしょう?御社がその道を進んではダメです。


御社は解雇できるのか(自滅の解雇)

そもそも御社は解雇できるのでしょうか?
仮に、景気悪化により不可抗力で解雇するとしても、又は刑事犯罪
を犯した問題社員を解雇するとしても、問題なくその解雇を実行できますか?

御社がコンプライアンスを守っていなければ、上記のような
解雇であっても、解雇の取り消し、莫大な上乗せ金の支払い命令が
裁判で言い渡される可能性は極めて高いと言えます。それを承知の上で
解雇通知が出せるでしょうか?


特に 「残業問題」 は深刻です。
解雇されると聞いた従業員は、これまでは黙っていたかもしれませんが、
切られると決まった以上会社に気を使う必要はないわけですから、
未払いの残業代があれば、是が非でも支払いを要求してきます。
実際にニュースで様々な紛争を聞く機会があると思います。大手企業が続々敗訴して、
莫大な残業代の支払い命令が出ていますよね。 これは理論ではなく、
現実に起こっている問題なのです。

御社は残業代を払っていますか?
払っていなければ、御社は危険な大爆弾を抱えているようなものです。
致命傷になる前に御相談下さい。私にでなくてもいいです。顧問の社労士なり
弁護士にでも構いません。
御社の問題解決が最も大事なわけですから。

一人にこれまでの未払い残業を払うことになると大変です。他の従業員全員が、
「私も、俺も」となるのは目に見えているからです。しかし残業代未払いを
続けるわけにもいきません。かくして八方塞になった経営側は、潰れ行くのを
ただ待つのみ、ということになります。

しかし、このような八方ふさがりの状態でも解決策はあります。
うちはコンプライアンス100点じゃない・・・ そういう場合には、自滅の解雇を
断行する前に、トラブルを起こさない解雇の仕方を知った上で、解雇に踏み切って下さい。

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「解雇するというなら言わせてもらいますが...」 
いかに仕方がない状況での解雇でも、解雇するということ自体がトラブルを招きます。
それが、不可抗力でやむを得ず行う整理解雇であっても、刑事犯罪を犯した問題社員の
懲戒解雇であってもそうです。 しかし、解雇する時にはしなければいけません。
トラブルを恐れて何も決断しなければ、会社全体を潰すことになり、全従業員が
職を失うことになるからです。

解雇すれば労使トラブル・紛争に発展する、解雇しなければ会社は潰れる。
御社を苦しませているこの苦境を乗り切るには、トラブルから会社守れるように
解雇を進める 以外に方法はありません。そしてそのためには、正しい知識と理解が必要です。

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実際の整理解雇、懲戒解雇、リストラによる労使間トラブル・紛争の現場で培われた、
御社にとってベストな解雇の仕方をぜひ学んだあとで解雇に乗り切って下さい。
会社が、残る従業員が、去る従業員が、できるだけ幸福で生産的な状態になるような
解雇をする。これは会社の義務なのです。


著者: 特定社会保険労務士 渋谷康雄

・東京商工会議所 経営安定特別相談室 専門スタッフ
・東京都社会保険労務士会 台東支部所属
・適年解決ネットワーク 城東支部支部長
・中小企業福祉事業団幹事社労士
・労務問題研究会 リーダー
・ (有)人事・労務 チーフコンサルタント

執筆: ビジネスガイド、労政時報、労務事情、年金時代


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