始まりの一振り | 怪奇な僻地

怪奇な僻地

川谷圭による二次創作小説中心のブログです。

Attention!! 創作政府職員が登場します。

「どうか、この国の歴史を守る為に力をお貸し下さい」
 ――最初は、頭を下げる人の子の正気を疑った。
 この国を守る為に助力を乞うにしても、自分ではなく他に適任がいる筈だ。
 炎に焼かれ、真贋さえはっきりしない時間が長かった自分は、嘗ての守り刀としての力を失っている。
 ――それに、自分は持ち主の命を守ることが出来なかった。
 そんな縁起の悪い刀を持ちたがるものなど、今更いないだろう。
「いいえ。むしろ、貴方様ほど強い逸話――物語を持つ方は、この戦に欠かせません。
 我々時の政府が戦う相手は、歴史の流れが大きく変化する時代に多く現れます。
 そして、貴方様はこの国の中枢が変わる切欠を作った人物の最期を見届けた存在です」
「つまり、その歴史修正主義者が『わし』を消す可能性があると?」
「もしくは、貴方様を自分たちの味方に引き入れようとするか、です。
 おそらく、あちらは貴方様に『歴史を変えたくはないか』と甘言を囁くでしょう」
「……」
「――恐れながら申し上げます。
 我々は、貴方様を失う訳にはいかないのです」
「……ほぉか」

 刀剣男士として顕現し、歴史修正主義者と戦うか。
 要保護対象として、時の政府の監視下に置かれるか。

 ――まさか、刀の付喪神である自分が、自らの進む道を選ぶ日が来るとは思わなかった。

「――わしは陸奥守吉行。坂本龍馬の佩刀として知られちゅう」
「っ……有り難う御座います!」
「おん、よろしゅう頼むぜよ」
「はいっ!」

 《終わり》
始まりの物語