手術日の午前8時、病院に怪獣母と怪獣母母が来てくれた。
手術が終わるまでいてくれると言う、特段心ぼそさは感じていなかったが、
いてくれると言うのはとても心強かった。
8時半くらいになって手術室に歩いて移動する。
初めての手術、緊張は特に無く、体験談で読んだような浣腸もなかった。
病院や個人の状態によって、変わるのだとは思うが、
浣腸があるよりは、無い方が良いに決まっている。
さきほど装着したT字帯(ふんどしのような布)が妙にスースーする。
病院によっては、パンツで手術室に行って終わったらT字帯と言うところも
あるらしいが、怪獣父の場合は事前装着であった。
手術室に入る前で怪獣母たちとはお別れ、手術室の前の場所で
入って良いと言われるまで少し待つ。
やがて、手術室に呼ばれストレッチャーの上に横になる。
目線の先にはドラマで良く見る、照明の化け物みたいなのがあり、
麻酔医の先生が『緊張してませんか?』と声をかけてくれる。
全く緊張していないと言えば嘘になるが、かなり穏やかな心境であったし、
落ち着いていたと思う。
中には、なれぬ手術室の様子に動悸が激しくなる人もいるそうだ。
自己血のパックが自分の物であるかを(パックに署名してある)確認し
麻酔医の先生が麻酔の準備をする。
まず最初に注射での麻酔、痛いですよ、と言われたがそれほど痛くは無かった。
『どんどん意識が遠くなります。意識が無くなったら違う麻酔をかけます』と言われる。
注射をしてから1分くらいは何でもなかったが、徐々に先生の顔が2個3個と増えていく、
幸い、綺麗な女性の麻酔医だったので、増えてもご機嫌になれたのは運が良かった。
くだらない事を思っているうちに、完全に意識はなくなっていた。
意識が無くなってからは、導尿されマスクされ手術台に移され、
3箇所の場所から300箇所くらいの穴を開けて少しずつ骨髄を抜いていたのであろう。
怪獣父が起こされたのは、9時に手術室に入ってから2時間後の11時だった。
骨髄ドナーになってみた!⑬へ つづく