第3章 そして最終同意へ・・・
確認検査を終えてから、2・3週間が経った頃だと思うが、
財団から郵便が届いた。
もちろん、提供者となるかどうかの案内であることは判っていたので、
イソイソと封筒をあける。
そこには、怪獣父が提供者として選ばれた旨が書いてあり、
率直な感想としては嬉しかったの一言に尽きると思う。
ある意味この感情は病気で苦しんでいる人がいるのに、
不謹慎な感情であるかもしれないが、それでも自分が人の役に立てる
と言う喜びが、怪獣父の中にふつふつと湧き上がって来たのは事実である。
その日のうちに財団の今田さんから連絡が入り、
最終同意の日程を決める打ち合わせを行った。
提供すると決まれば、早く最終同意をしてしまいたいと思っていたし、
仕事の都合上、早めに手術日までの検討をつけておきたい事もあった。
幸い、最終同意も近くの病院で行えるとのことだったので、
今田さんに希望を伝えて、先生との調整を取ってもらう。
最終同意は家族の了承も必要となるため、怪獣母に同席してもらうことにし、
いよいよ、大事な過程である最終同意を迎えることになる。
前にも触れたが、最終同意はとても大事な約束となる。
最終同意をもって、提供を受ける側は骨髄移植に向けた準備に取り掛かる。
体の菌を良いも悪いも全て殺し、無菌室に入り移植に向けて準備を進める。
最終同意後の移植提供の取り下げは、
すなわち提供を受ける側の生死にかかわる問題となり、
善意が悪意に変わる瞬間でもあるのだ。
財団の今田さんによると、それでも年間に数件は取り下げがあるらしく、
最終同意は本当に大事な約束であることを強く話していた。
怪獣父には反対する家族もいなかったので、気にはしていなかったが、
やはり、いざ移植する段階になって止めたいという人がいるのも、
財団の方々や提供を受ける方々には申し訳ないが、判るような気はした。
それは、移植に関する体験談などは基本的に移植に関して否定的な意見なく、
移植して良かった、的な体験談が大半を占めていることにあると思う。
そこには邪推すると、否定的な意見を黙殺しているようにも感じることが出来るし、
意図的に安全だと言う方向に持って行こうとさせる力があるように感じてしまうかもしれない。
怪獣父が移植後にどう感じたかは、後で述べるとして、
そのような作られたような状況に違和感を感じる人もいるかもしれない。
また、移植する本人や家族(奥さんや旦那さん)は最終同意に同席し、
詳細な話を聞くことが出来るが、それ以外の提供者の関係者は、
本人や最終同意に同席した人からしか話を聞くことが出来ない。
もし、聞いたことに本人が答えられないようなことがあれば、
不安になることは想像に難くない。
無論、全ての関係者に対して詳細な説明をすれ、と言うつもりは毛頭ないが、
少なくとも、提供者に選ばれたら、一通りのことは説明できるように
準備しておくべきだし、その際には良いことも悪いことも含めて
説明できなければならないと思う。
怪獣父も最終同意までの間、骨髄移植に向けて色々調べたし、
説明出来るように準備しておいた。
今田さんから最終同意の日程の連絡をもらい、
いよいよ怪獣父が骨髄提供となる日が近づいてきた。
骨髄ドナーになってみた!⑦へ つづく