第5話「峠の海」
今回は伴所長フィーチャー回? 峠が海没するという物語的な面白さもあって、好きな回の一つになりました。
ではでは、見どころをば。
・所長のキャラクターを通して描かれる、SKIPの「調査」模様。
今回の「峠海没」事件は、終盤まで怪獣被害かどうかが判明せず、SKIPと牧野博士の調査の様子が話の大半を占める。何かしらの異変が起きた時にそれが怪獣によるものであるかを詳しく調査するのはこれまで同様の展開だけれど、今回は、そもそも怪獣が関連している可能性を探ることからスタートしていて、この調査や議論検討するところがリアル。怪獣という存在が日常の中に浸食している世界の中での「異変への対応」に説得力があった。
怪獣被害であることが確認されないので、住民避難が延長できない等、実際に陥りそうなジレンマをしっかり入れているところも見事で、アーク自体は昭和2期ウルトラマンのような、「おとぎ話」的な雰囲気を持っているけれども、その世界を作っている諸々の要素は、時にはシビアにすら感じるほど現実味がある。そこが面白さの一つでもあると思います。
・「調査する」って楽しい、そんなことを考えさせてくれる第5話。
ゲストキャラ牧野博士は、伴所長の恩師。二人が互いに抱く微妙な想いが、これまた「怪獣」に関連して浮かび上がってくるのも面白い。でも何が一番素晴らしいって、この二人の「調査」の姿勢。残り1%でも可能性があるならば、とことん調べる。想像力を働かせ、日常のどんなところからでもヒントを掴もうとする。それが分かる「卵のシーン」は、石堂さんのキャラに笑わされつつ、二人が同時にあることに気づくシーンに明確なカタルシスがあって、不覚にもグッと来てしまいました。これは怪獣調査を主としているSKIPだからこそ描けるものだと思うけど、一番近いのはたぶん、僕が大好きな『怪奇大作戦』のSRI。「フィギュア王」のインタビューでも言及していたみたいだし、今後も科学技術や論理を駆使して怪獣被害や怪獣の生体を調査していく展開になれば良いなと思います。
・久しぶりの「想像力」+マン兄さんを思わせる戦い方と笑い方。
巨鯨水獣リヴィジラ登場。周りが良く見えない水底での戦闘で、全体像は中々把握できませんが、かなりでかい。ソフビも現行規格ではなく、アドバンスサイズで作って欲しかったところ。
アークとの戦闘では巨大な口を駆使したダイナミックな突進が見物。かつ水中を暴れて視界を塞ぎ、自らは鯨のように超音波を使って相手を補足するなど、パワーファイターであるというだけでなく、中々の策士。また体内で生成した塩化ナトリウムの「塩」吹きによって淡水を海水に変え、さらには自分以外の魚すら棲めない塩分濃度に変えてしまうという、まさに「怪獣災害」規模の厄介者。さらにはこの能力によって、自分の生息環境を作るだけでなく外的対策として安全地帯を作ることも目的なのでは――と示唆されるなど、生物的な設定が光る怪獣。
リヴィジラとアークの対決は専ら水中で。しかしただの水中ってだけでなく、海没した電線やクレーン車、トンネルなどが底に横たわっている中での戦闘。見えにくくてもちゃんとミニチュアが組まれている。そんな中で、体格的にも能力的にもリヴィジラが圧倒。状況を打破するため、今回のアークトリッキーテクニックとは!? ここが最大の見どころ。
一つ前にアーマーが出たから、今度もアーマー頼みかと思いきや、ちゃんとトリッキーテクニックで解決してくれるところが、アークの良いところ。今回の、バリヤー+スラッシュによる即席スクリューは、さすがに想像できなかった! このシリーズ、バリヤーの応用力がヤバすぎる。しかもそれが決め手になるんじゃなくて、スクリューで視界を良くした後で、樹を引っこ抜いて塩吹孔を塞ぐという、ここまで来ると初代マン兄さんを思わせる戦い方(このために峠水没という設定したのかも知れず、作り手の伏線の貼り方のうまさに感心してしまう)。今回は、『帰マン』とか『タロウ』を飛び越えて、マン兄さんっぽいなあと思っていたら、やっぱり!! 笑いましたよ、アークさん。『謎の恐竜基地』でマン兄さんが見せたのと同じ、低くて不気味な笑い。リヴィジラの目が開くところのサウンドと言い、今回は初代ウルトラマンを髣髴とさせる要素に富み、それでいて戦い方や世界観、そしてトリッキーテクニックなどの戦闘上の工夫はちゃんと新時代にアップデートされている。見どころの多い、とても楽しい回でした。
第4話目が、個人的にピンと来なかったこともあってか、逆に第5話はとても面白く見れました。『ウルトラマンアーク』は、目玉である怪獣との戦闘にも勿論たくさんの工夫があって楽しいですが、それと同じくらい世界観や設定、物語的な展開にも面白味のあるシリーズだと思います。往年のウルトラシリーズを彷彿とさせながら、決して「二番煎じ」と思わせない数々の創意。とっても面白いです!