『帰ってきたウルトラマン』第11話~第20話 ざっくり感想
【第11話】
「毒ガス怪獣出現」(毒ガス怪獣モグネズン登場)
金城哲夫氏最後の円谷特撮脚本作品で、「ノンマルトの使者」に沖縄がどうのこうの言うんだったら、まずはこのエピソードについて語れと言いたい。旧日本軍の忌むべき遺物によって、大変な被害が出る。少しでも吸い込んだら即死すると言う恐ろしい毒ガス、それを吐き出す怪獣。しかもその毒ガスを開発していたのが自分の親父で、兄はそれが原因で自殺しているーー。親の因果が子に報い……って展開が、岸田隊員の中だけで自己完結せずに怪獣というフィクションの形を取って、より普遍的なものに昇華されている。戦争の生々しい傷跡により苦悩するポジションに、職務に実直でプライドが高く、叔父が長官という家柄、それ故に他の隊員と衝突することの多かった岸田隊員を持ってきたのが上手く、これまでのような凡ミスに対して責任を取るというドラマにはなっていないし、ここで岸田隊員の悩める姿を出しておくことで、他の隊員との関係にも風通しが良くなりそう。ウルトラマンとのモグネズンの戦いは、予告編でも登場したウルトラスピンキックがハイライトーーだとは思うのだけれど、個人的にはその手前のやたらとチャカチャカした早い動きのアクションが、変でもあり、面白くもあった。
【第12話】
「怪獣シュガロンの復讐」(音波怪獣シュガロン登場)
中々救いようのない話で、全体的にどよーんとしている。白神山の奥に住む不思議な娘、そこに現れる怪獣と、谷までの攻防。この辺が注目点で、予告編であったマットの3カ月に一度の訓練とか、正直序盤も序盤であんまり関係ない。あんだけ火の輪くぐりをフィーチャーしたんなら、たとえばウルトラマンの戦い方の中に、マットの強化訓練での成果が分かるような技なり展開なりを入れるとか、そういった工夫はできたと思うんだけど。谷間のバイパスを破壊するシュガロンの特撮は、中々堂に入っていて良かった。ただ、個人的にはこのシュガロンのデザインが昔から好きじゃなくて、カッコいいと思えないんだよね。「シュガロンの復讐」というくらいだから、何かしらの遺恨をテーマにした話かと思いきや、娘の父親が車を憎んでいて、バイパスを襲う――ってのは、ウルトラマンのヒドラ戦と良く似た構図。ビックリしたのは、まさか最後の最後に、娘が助からない展開を持ってきたところ。いや、そこはさすがに助けようよ。シュガロンが父親の化身だというならなおさら、娘だけは守りたかったけど、力を持て余してウルトラマンに対峙され、そして娘は父親への想いを胸に新しい生活に――という展開の方が、絶対に後味は良かったでしょうに。
【第13話】
「津波怪獣の恐怖 東京大ピンチ!」(津波怪獣シーモンス・竜巻怪獣シーゴラス登場)
やっと……やっと、市街地に近いところでのバトルが展開!! と喜んでいたら、それを遥かに凌ぐトンデモない特撮が観られる回で、今見ても啞然、唖然、唖然。どこかゴジラを思わせる輸送船沈没と、船長への責任問題から始まり、南洋の伝説に触れつつ、シーモンスの存在が現実味を帯びてくる。その部分が少々くどくはあるけれど、中盤以降シーモンスがその姿を現して以降は、もう画面に釘付けになりっぱなし。湾岸の工事現場を元気に破壊するシーンも微笑ましければ、白眉は津波のシーン。これは本当に凄い。押し寄せる水の迫力と重量感。真っ白く泡立った波がしらが、轟々と響きながら迫りくるところや、民家に波がかぶさるシーンなど、ガチの水を使っているところが特に必見。合成による部分も、若干の違和感はあれども、「画」として見た時に良くできていることが分かるし、当時の人たち、ざそ驚いただろうなあと、そんな風に思わせてくれる。二大怪獣の造形も最高で、生物感と怪獣感のバランスが絶妙。特に今回は、「何故怪獣が上陸するのか」から出発して、怪獣の習性が重要なキーになってくるから、しっかり生物然とした怪獣でなければならなかったはず。そういう意味でも100点満点。ウルトラマンは最後の最後にやっと登場。どうやって、この大自然の猛威に立ち向かうのか――最大の期待を残して、次の話に続く。
【第14話】
「二大怪獣の恐怖 東京大竜巻」(津波怪獣シーモンス・竜巻怪獣シーゴラス登場)
前回の置き土産の津波は、ウルトラマンがまさかのウルトラバリヤーで押し返す。その際の、押し寄せる大水が逆行しているシーンとかも、よくできていた。これで「海の怒り」は終了。残る「天と地の怒り」として登場する大竜巻。津波のシーンが凄すぎて、これを超えるスペクタクルってあんの? って思っていたけど、次は竜巻ですよ! そしてこの竜巻が、正直部分部分で「どうやって撮ったの?」って普通に思うくらいによくできている。「空の大怪獣 ラドン」もそうだったけど、円谷は大風による大破壊シーンが本当に上手いよね。MATの戦いも、前回はMATアローによる攻撃、今回は地上戦とバラエティに富んでいる。怪獣の習性を研究したうえで対処するというMATの方針と、時間が過ぎれば過ぎるだけ損失が嵩む民間企業との軋轢や、上層部の焦燥、さっそく出てきた「MAT不要論」など、世間のMATに対する中々の風当たりの強さも、随所に描かれていて、加藤隊長の苦労がしのばれる。二大怪獣の最大の脅威である「自然の猛威を引き起こす」力を無力化するための作戦に打って出るなど、今回は「怪獣の習性」にスポットをあてた話だけに、作戦にも理論が通っている。ならなおさら、あれはやっちゃダメなミスだろう(笑)。最終的には、ウルトラマンとMATで共闘したうえで、二大怪獣を東京から放逐することに成功。これも、今回の怪獣が「荒ぶる自然」の象徴だと考えれば、殺さずに海に返すというところで納得できる。いやー、本当に力の入った、素晴らしい回でした。
【第15話】
「怪獣少年の復讐」(吸電怪獣エレドータス登場)
怪獣と子供が近しい存在であることがよく分かる一作。怪獣が日常的に出現する世界の中で、少年の妄想が具現化したか、偶然の一致か、姿を現して少年の父親を殺したエレドータス。怪獣の仕業だと誰からも信じてもらえない少年は、その恨みを、自分の父を殺した怪獣に託す――。好きな怪獣が「エレドータス」であり、嫌いな怪獣も「エレドータス」であるという、この答えの切なさ……。やるせなさと怒りを、怪獣に仮託するしかない少年の姿が悲しい。怪獣出現シーンは、山中とはいえ第一発電所のセットが組まれていて、ようやっと人口建造物の大規模な破壊が見れて嬉しい。少年は怪獣に心を寄せるが、怪獣はただ暴れるだけだという容赦のなさも良い。足が不自由だからと言って、それを免罪符にしようとしないが、自分に非があった時は即座に謝罪するなど、郷の人柄が良く分かる作品。今作は少年の怒りと、怪獣による破壊のシーンとが密接な繋がりを持つため、ドラマパートと特撮パートが互いに呼応し、最後までしっかりとした物語を紡ぐことに成功している。怪獣を乗り越えた史郎少年が、最後、あんなに反目していたMATに迎えられる形で締めくくられる。一人の人間にスポットを当てた怪獣物語として、非常に完成度が高いものになっている。
【第16話】
「大怪鳥テロチルスの謎」(始祖怪鳥テロチルス登場)
ヨットのダイナマイト事件を導入として、怪獣の仕業か否かを調査するミステリー仕立てな展開。ダイナマイトをしかけた犯人に話を聞きに行ったりと、中々な探偵である郷秀樹。そうこうしているうちにも被害が拡大していくなど、鳥怪獣繋がりで『空の大怪獣ラドン』に繋がる部分も多い。それぞれの手がかりを繋ぎ合わせながら真相に近付いていくMATのシーンも、ようやっとチームワークが見えてきて嬉しいところ。今回は坂田家でのやりとりも真相に近付くための一場面として機能している。そこに男女の複雑な人間関係が錯綜してくる辺り、前作くらいから人の「業」にスポットを当てた話で、秀逸なのが増えた気がする。東京のドドドど真ん中にでっかい巣が作られるなど、13・14話にも負けないくらいスケールが拡大された感じがある。舞台も頻繁に変わり、東京から悪島まで、大忙しの郷秀樹。テロチルスは『ウルトラマン』のヒドラ以来の鳥型怪獣で、これが本当に強い……。ごつごつした岩場を舞台とした戦闘は既視感があるものの、テロチルスの空中操演がそれなりに見物なので、けっこう見入ってしまう。肝心の、東京を舞台にしたスケールの大きい戦闘は、次回に持ち越しとなった。
【第17話】
「怪鳥テロチルス 東京大空爆」(始祖怪鳥テロチルス登場)
テロチルスは本当に強い……。空中戦で一度はウルトラマンに勝ったほど。そのテロチルスが東京に棲み処を移す理由が、公害等による東京の気温気温上昇というのも、かつて怪奇大作戦が得意としていた世相と空想科学の混淆が垣間見えて良い。途中、男女の痴情のもつれみたいな話が絡んでくるけど、このスケールの大きな話の中では、やや食い合わせが悪かったかな。あの阿呆が脱走したのも、もとはと言えば前作で郷が口を滑らしたからだしね。これから巣を焼こうって時に、タイミングが悪すぎる。そうこうしているうちに夕焼けになっちゃったけど、夕焼け空を舞うテロチルスが美しかったから、OK。でもその後、よくわからないナマハゲが出てきて、よく分からんことになってる。そんな思い出話は良いから、テロチルス退治にもっと時間を割いてほしかった。満を持しての東京を舞台にした戦闘は、ビル街に埋もれるようにして睨み合い、戦いを繰り広げる画にセンスオブワンダーがあった。特撮自体は非常に見ごたえがあったけど、あの強敵になぜか勝てたのかについては特に言及がないのが残念なところだし、戦闘時間そのものが短い。夜中の籠城戦のくだりを、もっと端折ればその分、MATの活躍やウルトラマンとテロチルスの死闘を長くやれたのでは? 返す返すも、あの男女関係のもつれがノイズに……。ただラストの郷とアキの仲直りはこのシリアスなドラマの清涼剤になっていることは間違いなく、こういうのがあるからこそ、坂田家の活躍がもっと見たくなる。
【第18話】
「ウルトラセブン参上!」(宇宙大怪獣ベムスター登場)
まさかのクラタ隊長再登場! ――かと思いきや、今度はカジ隊長。しかも冒頭で退場という、贅沢な使いっぷり。その敵を討とうとする加藤隊長の執念が光る回。人間ドラマがたるかった前回と違い、今回はアクションに次ぐアクション。特に今回は空中戦も含めて、ベムスターとの激戦が見物。正直、どうやって一話で完結できたか分からないくらいの密度で、ベムスターとの市街地戦も、ウルトラマンとの格闘も、しっかりとしたボリュームがある。その上、ウルトラセブンの登場と来たもんだ。特に今回も大規模な市街地被害が楽しめる。鳥型怪獣の例にもれず、今回のベムスターも超強い。MATの隊員も次々と重傷を負い、ついには確執のある加藤隊長一人に。この恐るべき相手に、たった一人でも奮闘を続ける隊長の姿が勇ましい。そしてベムスターって、初めての宇宙怪獣でもあったのね。宇宙からの来訪者が辺鄙な岩山にやってくるはずはないから、大きなスケールの市街地での戦闘に必然性が出てくる。前半から出し惜しみせず怪獣を登場させ、その怪獣との戦いに時間をめいっぱい使い切る本作。一度は敗れたウルトラマンが、セブンから新たなを授かって「帰ってきた」時の、加藤隊長のセリフにグッとくる。最後はウルトラブレスレットで勝利をおさめ、郷と隊長は二人でカジ隊長の奥さんの元へ――。漢気の感じる、ハードな展開に見ごたえがある。
【第19話】
「宇宙から来た透明大怪獣」(忍者怪獣サータン登場)
ウルトラセブン「勇気ある戦い」に通じる、少年と大人の約束の物語。特に今回は、MATの失態で次郎君が傷を負っている分、その約束にも悲痛感がある。忍者怪獣サータンは、ビジュアルはそれほどカッコよくないけれど特撮部分がとても面白く、透明の表現や、影の表現が秀逸。ゴルバゴスよりもちゃんと透明怪獣している。中性子怪獣という、これまでにない設定を持ってくる辺りも見事で、宇宙怪獣を登場させてきた辺りから、より空想科学的な理屈が補強されるようになって、毎回のアイデアが楽しい。セブンの「勇気ある戦い」では、セブンは満身創痍になっても自らに課した約束のために頑張ったけど、そこまで徹底できない弱さも含めて人間らしい郷秀樹。特に前回と前々回、ベムスターという宇宙怪獣や、テロチルス相手に一度は敗北しているので、自信を持てなくなるのは無理ないかも。しかしそんな郷だからこそ、彼を厳しく叱咤し、次郎君が理想とする大人であれと強く背中を押す坂田兄の存在が大きくなる。実際今回は坂田家の物語であり、郷やMATと精神的なところでつながる次郎、郷の精神的な支えとなる坂田兄、そんな彼らを常に案ずるアキと、それぞれのキャラクターがしっかり描きこまれている。市街地戦が増えてきたのと並行して、見ごたえのある重厚なドラマも量産されるようになってきて、いよいよ「帰ってきたウルトラマン」、脂が乗って来たな、という感じ。
【第20話】
「怪獣は宇宙の流れ星」(磁力怪獣マグネドン登場)
MAT内でのチームワークが凄く良くなってきたのに、上層部に恵まれていないことが分かる話。何かにつけ解散解散って、これまでのMATの功績を考えたら、そんなこと言えるはずがない。事実、マグネドンへの対応だって科学的な根拠に基づいてのものだったはず。まあ、爆破したあとに死体をほっぽらかしておくなとは思うけど……。あと、あのダムって結局ダメだったのかなとか思うけど……。ここ数回、飛行怪獣や宇宙怪獣が登場してきたので、今回はどっしりと地面に重く構えた地球産の怪獣――ってか、地球の磁力そのものが武器っていうのが、強者感あって良い。マグネドンのデザインも秀逸で、ちゃんと重そうだし、強そう。身体を突き出るようにして生えている、不相応に巨大化した角が素敵。実際ドラマとしては、ここ数回に比べると若干浅く、結局MATがリベンジを果たせないままに終わってしまった感は否めないが、どうやったって地球では倒せない怪獣を、他所の星に連れてって倒すなんてのはウルトラマンにしかできない芸当なわけで、今回ばかりは相手が悪かったかも。今回、市街地戦はないけれど、大規模なダムのセットが組まれており、これが中々リアル。冒頭、山中に飛行機が異様な形で墜落するシーンなど、山間を舞台にしているからこその特撮が光る。