2023年3月18日公開の『シン・仮面ライダー』。全国の映画館で先行上映? していますね。
僕はさすがに18時の回には間に合わなかったんですが、21時のレイトショーを見てまいりました。
仮面ライダー関係は、これまで一度も扱ってこなかったので、この『シン・仮面ライダー』から少しずつ間口を広げていけたら嬉しいですね。ここでは、観た直後の「徒然なる感想」を、ざっくり綴っていこうと思います。
公開から日が浅い――っていうか、公開当日なのでネタバレはしません。予告編で分かる範囲には触れていこうと思います。お読みいただければ嬉しいです。
【僕と仮面ライダー】
『シン・仮面ライダー』の感想の前に、個人的な仮面ライダーへの思い入れをざっくり書いておくと、ウルトラシリーズとは違って、僕は仮面ライダーについては完全に門外漢です。もちろん、どんな仮面ライダーがいるのかは、1号・2号・V3・ライダーマン・アマゾンなど昭和ライダーから、クウガ・アギト・ブレイド・響鬼・W・ウィザード・オーズ・ゴーストなどの平成ライダーまで、全部とは言いませんが、一応名前とビジュアルは一致しますし、ビジュアルだけで昭和であればV3、平成以降であれば響鬼とウィザード、ゴーストが好きなんていう自分の中での順位もあります。が、それぞれの仮面ライダーがどのような物語で、どんな世界観で、どんな敵役が出てきて、どんなストーリー展開になっていくのかとか、そういったことについては全然知りません。下手し、本編を1話まるまま纏めて観たのって、こうもり男が登場する初代仮面ライダー第2話を最近見た、その1回だけかもしれない。ゴジラやウルトラシリーズについては、そこそこ語る物を持っている僕ですが、仮面ライダーについては、本当に今まで縁がなかったと言ってきて良いでしょう。
だから僕にとっては『シン・仮面ライダー』って、初代仮面ライダーとの関連、もっと言えば庵野監督らによるオリジナルへの目くばせに全く気付くことができない、だからこそストレートな「初見」で楽しめるかどうかがカギになってくる作品です。前知識なんて、本当にない。主人公の名前が本郷ってくらいしか知らない。そんな状態で、『シン・仮面ライダー』の世界観やキャラクターが、自分の琴線にどのように響くのか。もっとざっくり言うと、この『シン・仮面ライダー』を観て、ライダーをカッコいいと感じて、フィギュアが欲しくなるか。そういったことが評価の基準になると思って劇場に行きました。以下に、鑑賞直後の印象や感想を、書いていきます。
【鑑賞直後の感想】
まず思ったことは、この映画、どっからどこまでがこの映画独自の設定で、どっからどこまでが往年の仮面ライダーに準じたものであるか、その線引きが見えないまま鑑賞したことによる、情報の氾濫と廃棄度のすさまじさです。たとえば「仮面ライダー」のビジュアルそのものについては往年のライダーを踏襲したものですが、昆虫との合成? 改造? 人間を「オーグ」と呼ぶのは今回独自の設定なのだろうか。そもそもライダーが強いことの理由として、何か難しそうな文言が立て板に水の如く並べられていましたが、あれも今作独自のものなのだろうか。『シン・ゴジラ』では、ゴジラの生体的な部分の「理屈」に関しては『シン』独自の設定が多い。それが『シン・ウルトラマン』では、「スペシウム」というウルトラマンの設定を独自にアレンジした「スペシウム133」という超重元素が登場してくる。仮面ライダーは、どれくらい本作独自によるものが多いのだろう。序盤で、仮面ライダーの「改造」の設定と、彼を含めた「オーグ」の設定と、彼らが何故強いかという「設定」が素人耳には聞き逃し必須なほど怒涛の如く説明されます。それらの設定のうち、どれを覚えておいたら良いのか――。
別にその説明がしっくりこなくても、ストーリー自体は追えるようにできているとは思います。が、いくつかの設定は、後半に重要な意味を持つことになる。そして「仮面ライダー弱者」としては、テスト勉強が下手な子供みたいに、教科書に全部ラインを引いて、結果どこが重要なのかさっぱり分からなくなる――みたいなそんな感じで、とにかく観ている間中、どの設定が次に活きてくるか分からないもんだから、アクションシーン中であっても変に頭を使いました。この頭の使い方は、ある程度世界観が呑み込めていて、「おっ、今回はこういう形で来るか」っていうところが注目ポイントであった『シン・ウルトラマン』にはなかったですね。
ということで、僕のような仮面ライダーに縁がなかった人が見る場合は、まず何を差し置いても序盤の説明をしっかり聞いて、無理やりにでも覚えておくことが大切。ここ、確実にテストにでますよと、授業で教えられているようなものですね。
そういった戸惑いが序盤にありましたが、以降のドラマは概ね楽しめました。最初が蜘蛛男(クモオーグ)との戦いなのは、シリーズ最初の怪人が「蜘蛛男」だったことを踏襲しているのだろうとか、やっぱりこうもり男(コウモリオーグ)はウイルスなのねとか、今回は薄弱すぎますが、そのシリーズについて「知っていること」がふわっと浮き出てくる感じは、『シン』シリーズならではの楽しみ方かもしれませんね。アクションシーンについては、中盤の連続大ジャンプを活かしたぶつかり合いが良かったです。全体的に、バッタの改造人間である仮面ライダーの脚力が活かされていて、すごく見ごたえがありました。
あと、これも凄いと思ったのが、舞台的なショボさを全然感じなかったことです。ウルトラシリーズだと、巨大ヒーローと巨大怪獣同士のぶつかり合いだから、舞台は市街地そのものとなって非常に規模が大きくなる(=金もかかる)。そこに、地球を狙う怪獣たちとそれを阻むウルトラマンという、スケールの大きな話に説得力が与えられる余地があります。一方、等身大のヒーローは、地球侵略という大層なお題目を掲げている割に、舞台が公園だったり商業施設前のロビーだったりと、空間的なスケール感がない。昔流行りましたが、「世界征服を掲げているショッカーがやっていることって、公園で近所のガキをいじめているだけじゃないか」って指摘がありましたよね。そういうところからの「偏見」で、仮面ライダーについてはストーリーに見合うだけの「舞台」を用意することの難しさみたいなものがあるんじゃないかと思っていたんです。
が、『シン』にのみついて言うと、そういった舞台の安っぽさは全然感じなかった。少なくとも実景を舞台としたバトルは、どれも空間的な広がりがあり、その場所ならではのアクションが多用されており、非常に見ごたえがあるものになっていました。「地の利」を活かして戦うのは、何でもかんでもでかくなる「ウルトラシリーズ」が逆にできないことなのかもしれない。少なくとも、今回の様々な敵役とのバトルは、極端に強化された人体の「画面に収まり切れない」感が出ていて、それが凄く良いと感じました。これがテレビシリーズでもできているんだったら、凄いことです。
ただ一方アクションについては不満もあって、上記のような「ワイド」での見せ方の一方、接近戦となると極端に見えづらくなる。序盤は、その「見えにくさ」も計算のうちだと思っていました。つまり、暴力的なカメラの動きやブレによって、改造されたてホヤホヤのライダーの抑えきれない暴力衝動を表しているのではないかしらん、と。けど、けっこう終盤、それこそ彼が自制できるようになって以降も、接近アクションになると殊カメラが近寄りすぎて、ここぞという決め画のところ以外は、誰が何をしているのかが分かりにくい。ここはやっぱり本郷=ライダーの精神的な成長と共に、アクションも流麗に進化していかないと。そして、それでもなお絶対的な力を持つ相手として、今回の大ボスとの戦闘を持ってくるべきだったのではと思います。
今回の敵役の怪人について言うと、ビジュアル的な部分はカッコよかったですね。蜘蛛男も蜂女も、みんな新しめのパワードスーツみたいな感じになってましたが、身体の線が見えるデザインというか、全てを装甲で覆い切らずにけっこう生地が薄い部分もあって、そうしたところの歪さや危うさが、バトル一つ一つの緊張感にもつながっていた。一方、戦闘員? の人たちのいかにもなショボさは、あれは往年へのオマージュなのか予算がなかったのか、改造人間を引き立てるためなのか。ちょっと『キル・ビル』っぽくもありましたね。
ただ、敵怪人についての最大の不満なのですが――ってか、『シン・ウルトラマン』でも同様の不満を覚えたのですが、ショッカーがやっていることが暗躍に次ぐ暗躍で、市井の人々へのマイナスの影響が全然語られないんですね。今回だって、かろうじて蜂女がテリトリー内の市井の人々をコントロールするシーンがあって、あそこはそれなりにゾッとしましたが、建物一つ破壊しただけで洗脳が解けてしまった。それ以外は基本的に死ぬのは戦闘員だったりショッカー関係者だったりで、「これが社会に蔓延したらトンデモないことになる」という、絶望的予測の繰り返しなんですよ。今回PG12なんだから、ショッカーにおける「目も当てられないような大惨事」を、一回くらい見せてくれれば、それによっていかにかれらの目的が間違った方向に向いているものであるかが、より強調されて良いと思ったんだけどなあ。まあ、それもこれも、今回の「ショッカー」の立ち位置の問題なんでしょうけど。現代はストレートな「悪役」を描くのが難しい時代です。「敵側にも事情がある」とか、むしろ敵側の方が信念や大義を持っている場合とかね。それによって「ショッカー」という組織が、より魅力的に見えれば問題ないんですが、個人的に今回の敵役の立ち位置は、微妙……の一言でしたね。これは『仮面ライダー』に関係なく、全てのヒーローものに言えることなのかも知れませんが。
話の展開については、個人的には『シン・ウルトラマン』より違和感なく観れました。ここは「ショッカー」という、作品全体を通した敵の設定がある故の強みですね。『シン』の場合は、それが外星人だったり怪獣だったりで、一回一回出現のシーンからウルトラマンとの死闘までを話の中で追わないといけなくて、中々前に進まない感がありましたが、今回は端から「オーグの排除」という使命に基づいて、こっちを倒そうあっちを倒そうという「ミッション」形式なので分かりやすい。その中でそれぞれの人物――と言っても殆どは浜辺美波ですが、彼女のキャラクターが深彫られるのも良いです。が――浜辺美波さんが演じるキャラが意外にもぶれ気味なのは驚きました。始めはお決まりの、冷然としたキャラで行くのかと思いきや、途中から妙に感情を露にし始める。悪く言うと、キャラ変しはじめる。これはさ、最後の最後まであくまで本郷に対しては冷然たる態度を崩さす、しかし実は――という風にしておいた方が、より盛り上がるのではと思いました。
ざっくり感想としては、こんな感じだと思います。何度も良いますが、僕は仮面ライダーに関して知識は薄弱なので、これくらいのことしか思いつきません。作中にちりばめられていたイースターエッグだって、全然気づいていないでしょう。この作品を観て、「こんなの仮面ライダーじゃない!」と怒る有識者の方がいたとしたら、「ははあぁ……」と返すしかない。そうした立ち位置からの感想です。
ここまでお読みいただいて、ありがとうございました。この記事の最初にあった、「仮面ライダーがカッコよいと思えるか、フィギュアが欲しくなるか」についてですが――。
これ、安くなったら買おうと思います。
2号とか、蜘蛛オーグとか蜂オーグとかの怪人も、フィギュアライズスタンダードで出れば買おうと思います。
アーツは高いと思うので、ちょっと様子見です。
仮面ライダーはぐりぐり動いてナンボだと思うので、ソフビは買いません。
他のライダーについては――沼にハマるまでは行かなかったので見送ります。
ただ……仮面ライダー1号と2号のビジュアルが相当好きになりました。めっちゃカッコいいです。
以上、『シン・仮面ライダー』公開当日(むしろ前日)ざっくり感想でした。