ざっくり感想「ウルトラセブン」第31話~第40話 | 怪獣玩具に魅せられて

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  『ウルトラセブン』第31話~第40話まで ざっくり感想

【第31話】

「悪魔の住む花」(宇宙細菌ダリ―登場)

 ウルトラ版「ミクロの決死圏」。地球人類の体内という、セブンですら踏み込んだことのない領域への冒険。ダリーの卵を花弁だと思って口づけし、体内にダリーが入り込んで松坂慶子が吸血鬼化、しかも特殊な血液型であるためアマギ隊員が狙われるという流れが非常に自然、かつ説得力がある。そういう特殊な事情を持っているアマギ隊員だからこそ、松坂慶子に対しての葛藤を強調させることができるわけで、本編以上にアマギ隊員の事情を掘り下げることができていれば、より個人的な深いドラマになっただろうし、ラストのロマンスにも特別感が出たかもしれない。。体内への冒険とダリーの戦いは、『ミクロの決死圏』に比べるとちょっと寂しい出来ではあるが、体内に寄生し、血液中のフィブリノーゲンを摂取するダリーのクオリティが非常に高い。ダリー発見のシーンは音楽もあって非常に盛り上がる。また、いつものような爆散型光線を使えないが故の戦い方など、細かいところでの工夫が光る。

 

 

 

【第32話】

「散歩する惑星」(メカニズム怪獣リッガー登場・カプセル怪獣アギラ登場)

 設定が非常に面白い回。ウルトラ警備隊基地破壊のために送り込まれた、それ自体が時限爆弾だという「散歩する惑星」。このアイデアは、今までありそうになかった。なるほど、これなら宇宙人が自分たちの正体を明かさずに、上手く行けばウルトラ警備隊に大打撃を与えることができる。そのためにフルハシ・アマギ・ダンを島に拉致し、しかも番犬? かつ誘導役の怪獣としてリッガーを配置するなど、この謎の宇宙人非常に賢い。その上、自分たちが搭乗していないのを良いことに、妨害電波まで流している。ここまで徹底的に「兵器」化された浮遊惑星を前に、ウルトラ警備隊は相当追いつめられていた。アギラは今回初登場。フィジカルを活かした攻撃でリッガーと激戦を繰り広げる。基地側での葛藤や、いつの間にか頼もしくなっただダンなど、要所要所で見どころが多い。からこそ、ラストの性急な締め括りが少々勿体なかったかな。

 

 

 

【第33話】

「侵略する死者たち」(蘇生怪人シャドウマン登場)

 前半の描写は、ウルトラセブン随一のホラー回。これも謎の異星人による基地への攻撃のパターンだけど、前作との差別化として、また新たな設定で勝負している。地産地消? ってことで、地球人の死体を利用した基地内への潜入。この影の演出が相当怖い。ウルトラセブンというよりウルトラQか、東宝の変身人間シリーズのようなテイストが濃い。9体も一度に死体が集まって、ウルトラ警備隊の基地が、フォルマリンの臭い立ち込める「モルグ」になってしまう、その不穏さが今回最大の持ち味。後半は、死体を操っていた異星人の宇宙船との戦いにシフトしていき、ホラー要素は薄れていくが、個人的には前半の凄まじく不気味な雰囲気の方を評価したい。予算の関係で怪獣や宇宙人が出せないことからの窮余の一策だと思われるが、前半の雰囲気を後半まで引っ張って、不穏なまま終われば最大の異色作としてより高い評価を得たかもしれない。

 

 

 

 

【第34話】

「蒸発都市」(発泡怪獣ダンカン登場)

 セブンでは珍しい市街地戦。ウルトラマンの「悪魔はふたたび」や「怪獣殿下 後編」「遊星から来た兄弟」などに比べると、建物のクオリティは今一つだけど、それでも市街地でセブンと怪獣が殴り合ってくれるのは嬉しい。強奪した建物を無造作に並べた場所で、セブンとダンカンが追いかけっこするなど空間的な広がりとダイナミズムが、ウルトラマンとはまた違った感じで良かった。そして発泡怪獣ダンカンの設定とビジュアルが非常に興味深い。最後、どでかい怪獣になる前までは非常に知的な感じで話し、しかも地球に来た目的も侵略とかではなく一時的な滞在(許可を得ていない上に建物や人を拉致してるけど)。セブンすらも味方につける強力な催眠術を駆使して、事態を自分の有利な方向に進めていく。ラスト、強奪されたビル街が美しい田園都市に見えることからのメッセージ染みたナレーションがあるけど、これはもう少し事前に言及があった方が、よりグッと来る文面になったのではないだろうか。

 

 

 

【第35話】

「月世界の戦慄」(月怪獣ペテロ・復讐怪人ザンパ星人登場)

 30番台前半の話は、どれもオリジナリティがあって面白くて好きだなあ。この「月世界の戦慄」も好きな一作。何しろ、「V3から来た男」のクラタ隊長が出てくるからね! 相変わらずキリヤマ隊長ときゃっきゃしているけど、今回のザンパ星人は、この二人を狙っている。そのために一瞬信頼関係が崩れかける、ダンとキリヤマ。でもそれが長く尾を引くことなく、互いに最善を目指して行動するあたり、プロフェッショナルの雄姿を垣間見た感じがする。ザンパ星人の企みは非常に個人的かつショボいんだけど、月世界でのペテロの戦いは、零下180度の「月の夜」のせいでセブンがピンチになりかけるなど、中々な苦戦。そこから隕石衝突の爆発熱により、力を取り戻す展開も良いし、何よりそれぞれに脱出したキリヤマ・ダンとクラタ隊長とが最後に交差するところのやりとりが最高。こういうところで軽口を叩き合える彼らの関係が、宇宙人の陰謀になど決して挫けることのない、強固かつ特別なものであるように感じられる。

 

 

 

【第26話】

「必殺の0.1秒」(催眠宇宙人ペガ星人登場)

 「栄光は誰れのために」以来の、功を逸って自滅する若者が登場する回。「栄光はーー」のアオキは最後に償い? のシーンがあったけれど、今回のヒロタ君は割としょうもない理由で宇宙人に借りを作ってしまい、まんまと操られてしまう。しかも最後まで会心の余地もなく、あんま良いところがない。用心暗殺というヒットマン的陰謀を張り巡らせるペガ星人と言い、全体的に小物感が強いなぁ(笑)。あと、地球の気圧に耐えられない奴が、地球をペガ星人の前線基地にするとか言っちゃダメ。この話で良いと思ったのは、「地球の気圧に耐えられない」ペガ星人の手駒となって働く人間が存在しているというところで、そこを上手く掘り下げれば、もっと暗黒感の強い、面白いドラマになったかもしれない。ペガ星人のデザインがけっこう好みなだけに、設定や陰謀をもっと工夫して欲しかったところ。

 

 

【第27話】

「盗まれたウルトラアイ」(マゼラン星人マヤ登場)

 異形のなりの宇宙人も怪獣も登場しない、にもかかわらず、セブンのハードな宇宙感が非常に色濃く出ている傑作。工作員として地球に送り込まれ、母星に迎えに来てもらうはずが裏切られた少女ーーそれほど斬新なストーリー展開ではないのに、どうしてこうも胸を打つのか。上手く言えないけど、全体の画がとかく息苦しくて、退廃的で、その中で繰り広げられる悲劇だからこそ、こんなに抒情的になるんだと思う。何回も見直していると、中盤以降、アングラバーでマヤとテレパシーで会話する辺りから、もう泣けてくる。「こんな狂った星、侵略する価値があると思って?」と嗤う姿や、その星と運命を共にしなければならないことを悟った時の悲しみ、セブンという希望があるにもかかわらず、どうしても他人の星で生きていくことができないがゆえの選択……。辛い! 辛いけど、何度も見返してしまう。これは怪獣や異形の宇宙人が登場しないからこそ作りあげることができた、美しくも果てしなく残酷なドラマであると思う。

 

 

【第28話】

「勇気ある戦い」(ロボット怪獣クレージーゴン・強奪宇宙人バンダ星人登場)

 これも市街地戦が楽しい一本。そしてセブンの「満身創痍になりながら、それでも戦い続ける」英雄像の走りとなった一作でもある。少年との約束を胸に、ぼろぼろになりながらも戦い続けるダン。彼の前に立ちはだかる鉄壁ロボット。このクレージーゴンの人間っぽくない造形が最高。ウルトラセブンに登場するロボットの中で一番好きなのが、このクレージーゴン。しかも非常に強く、ウルトラ警備隊の攻撃を一切寄せ付けない。だからこそダンも傷つくし、セブンも捨て身の戦法で戦うしかなかった。今回は、セブン=宇宙人という枠を忘れるくらい、少年への思いに熱くなっているダンを見ることができる。ダンがオサム君に言う、科学を信じる心も、これまでウルトラ警備隊と戦いを共にし、時にその行き過ぎた科学に不安を感じた彼だからこそのセリフですごくグッと来た。全体的にお気に入りの一本だけど、気になるのがキリヤマ隊長らの妙にドライな態度。あれは25分程度の短尺ドラマだからオミットされた部分も多かったと思う。

 

 

 

【第29話】

「セブン暗殺計画 前編」(分身宇宙人ガッツ星人・強力怪獣アロン登場)

 キングジョー以来の前後編。こっちに関しては前編の方が好き。何せ冒頭からアロンと殴り合い、夜の市街地でガッツ星人と出会い、夜の街中でウインダムが登場し、そしてセブンとガッツが戦う。――何気に豪華。これまでの宇宙人とはちょっと違って、今回のターゲットセブン一人。セブンを直接狙ったのは「蒸発都市」以来でそこまで新鮮味はないけど、今回は本気で殺しにかかっているところが、ガッツ星人の恐ろしさを際立たせる。分身を駆使して、セブンのエネルギーが尽きるまで翻弄するなど、中々の知能犯。これまで激戦を繰り広げてきたセブンの初敗北。拘束の上、処刑を待つなど、絶望的なラストが待っている。話の流れは悪くないと思うけど、やっぱりキングジョーの時のような、凄まじいセットの中での肉弾戦が拝めないので、前後編になってもイマイチ気分が盛り上がらないのが最大の弱点かな。

 

 

【第30話】

「セブン暗殺計画 後編」(分身宇宙人ガッツ星人登場)

 中盤、何かの宝石を持っている女の人を狙うガッツ星人の影の描写が中々怖く、あのコミカル? な頭部を印象的に使っているのが凄いと感心させられた。が、それ以外のところはイマイチパッとしない。空中に浮かんでいるセブンが幻影? だったりとそれなりに凝ってはいるものの、ガッツ星人との最終決戦などが描かれるわけではなく、セブンが復活した後は円盤とのバトルに終始している。市街地でもないし、せっかく復活したのに盛り上がりに欠けるんだよなと。前作のラストが絶望的な終わり方をしたからか、今作は重苦しい空気が続く中で、フルハシ隊員を中心にちょっとしたコミカルな演出が加えられている。これが、何ともまあ食い合わせが悪い(笑)。科特隊のイデさんだったらすごくあっていたところが、ウルトラ警備隊にそうしたメタ的なコミカル演出を加えられると、世界観にそぐわんと言うか……。中々難しいところだ。視聴率が伸び悩んで、お金もないし、満足に作れなかった頃ではあったと思うけど、やっぱりガッツ星人というこの上なく面白い宇宙人との直接的な最終対決を、やっぱり求めてしまう。