《新しい時間》
「これは……」
いつものように新聞を見ていると、気になる記事をみつけた。
【狂女 我が子造り】
とある家の地下室から、大量の肉塊と不気味な機械を発見。そのすぐ傍で、片目から血を流している女も発見。救急車に乗せようと警察が声をかけると、「私の子にさわるな!!!」と叫ばれた。
先日。自分が関わった事件だと気付き、静かにため息をした。
「クロ君。起きてください」
新聞をたたみ、机にのせた。
そして、自分の膝に頭を乗せて眠っている幼児を優しく起こす。
「クロ君」
「ん……や、なぎさん…?」
「はい、おはようございます」
「おは、ようごさいますっ」
まだ眠いのか目をこすり、笑顔で返してくれたクロ君。
それが可愛らしく、頭をなでると、クロ君は目を細めて気持ち良さそうに手にすりよってきた。
「やなぎさん」
「はい。なんですか?」
クロ君は、先ほどまで自分が頭を乗せていた私の膝に向かい合うように ちょこん。っと、座った。
「やなぎさん、だいすきです」
ピッタリと密着しながら、クロ君は言った。
「私も大好きですよ、クロ君」
私は ぎゅーっと抱き締めた。
純粋に愛され、触れられることを知らなかったクロ君。
だからなのか、クロ君は人一倍愛されることを求め、愛を確かめようとする。
「やなぎ。」
静かな水に波紋が広がるように、その声は部屋に染み込んだ。
「アレイ…君」
ニッコリと笑っている少年。
表情が笑っていても、真っ直ぐな赤い瞳が本心を表していた。
「そのチビは何だい?」
クロ君のことを少しも見ずに、アレイ君は言った。
本当はそんなこと、どうでもいいのだろう。
クロ君はギュッと私に回す手に力を込めた。
アレイ君の…威圧感のような何かを感じ取ったのでしょうか……。
「あの、クロ君は…」
「クロ、と言うのか」
「はい…」
一歩ずつ、私とクロ君に近付いてくる。
笑顔で。赤い瞳で私を見つめながら。
「あの…アレイ君…?」
「ん?何だい?」
「あの…怒ってますか?」
「何故怒らなくちゃならないんだ?」
いえ…怒ってますよね?
目が笑っていませんよ…。
アレイ君は私のすぐ前まで来ると、歩みを止めた。
私は正座。アレイ君は仁王立ち。
身長差はなく、すぐ前に顔がある。
アレイ君の赤い瞳を見つめていると、吸い込まれそうになる。
アレイ君の瞳が、チラッと一瞬だけクロ君を映した。
私の膝に座っている、クロ君を。
「とりあえず。そこから降りろ、小僧」
そこから。のところから、アレイ君の声のトーンが下がった。
クロ君はサッと私の膝から降りると、私の後ろに隠れた。
「逆らわないのは良いことだ」
そう言うと、アレイ君は空いた私の膝に座った。
「さて、説明してもらっていいかい?」
「あ、はい」
アレイ君はクロ君と違って、向かい合うようには座らない。
まるで王座に座るように、どっしりと座る。
「あの…みんながそろってからでいいですか……?」
「大丈夫だ。問題ない。もうそろっているよ」
パチンッ。
アレイ君が指を鳴らした。
と、同時に隣の部屋から子供たちが飛び出してきた。
っと言うか、扉を倒して飛び出てきた。
ドーン!!
「痛いよぉ!」
「トーヤサン!退いてほしいッス!」
「あーはいはい」
組体操のように、一人だけ上に乗る体型になっている子供3人。
「トーヤ。キヨ。ミレナ」
アレイ君の声に、三人は反応した。
「おう」
「はいッス!」
「はぁい!」
元気があってよろしいです。
元気がありすぎるのは、よろしくないですが……。
「さあ、やなぎ。全員揃ったよ」
「…そうですね。では、簡単に紹介しますね」
クロ君に隣に座ってもらい、アレイ君を除く子供3人にもちゃんと座ってもらう。
アレイ君は私の膝から動こうとしない。
「この子はクロ君です。新しく家族になりました。我が家では一番年下ですね」
「「「「……」」」」
あらら…無反応ですか…。
「アレイ君。自己紹介をお願いします」
「わかった。僕はアレイ。そこにいる3人のひとり、トーヤの兄。10歳だ」
アレイ君は、組体操型の一番上に乗っていたトーヤ君の双子のお兄さんです。
性格が正反対で、仲が良いのかわるいのか……。
「……俺はトーヤ。」
トーヤ君はヤンチャで俺様でさめやすくて……世間的には問題児。っといった感じですかね。
でも、仲間思いで良い子です。
青い瞳はいつも鋭いです。
「オレはキヨッス。8歳ッス!」
元気や笑顔。そんな言葉が似合うようなムードメーカー的存在。
黄色い瞳は、いつもキラキラしています。
「ワタシゎミレナ。6歳なのぉ」
桃色の瞳が可愛らしいです。
ミレナちゃんはアイドル、ですかね。
私はなぜか嫌われているような気がします……。
「みなさん。私はクロ君の部屋の準備をしてきますので、クロ君のこと、お願いしますね」
立ち上がると、クロ君は黙って私を見上げていた。
「すぐ、戻ってきます」
「うんっ」