私、本っっっ当に、この仕事に就いて良かったと思っているんですよ。以前、全く違う仕事をし、もう少し良いお給料をもらっていた過去はありますが、それでも思う。本当に介護を選んで良かった。

 

 なんだか「介護士をしている」と言ったら、『すごいね』『偉いね』と口で言いつつ、気の毒そうな目で見られることもある現状。

 介護職と言えば、3K(キツイ、汚い、給料が安い)のイメージが強すぎて、“良い仕事”というイメージが全く持たれない残念な現状。でも私は、声を大にして言いたい。

 

 

介護は本当に良い仕事です。

 

 私がそう思う理由を述べます。

 

 

 

①人間が生きるために必要な力が身に付く。

 例えばパソコンスキルがいかに凄くても、営業成績がいかに良くても、レジ打ちがいかに早くても、いざと言う時になんの役にも立ちません。

 

 この疫病が蔓延り、自然災害も多い時代、命の危険を伴う“いざと言う時”は残念ながら案外身近なもの。その時に自分を、そして大事な人を守れる力があるということは、なんと素晴らしいことでしょう。弱った人を介助する力があるということは、なんと素晴らしいことでしょう。

 

 “介護スタッフ”がどこまでのスキルを身に付けられるかは、正直自分の努力次第ではありますが、医師や看護師、理学療法士などと共に働き、実際に人を看られるということは、とても貴重な経験です。

 

 

②自分自身や親の“老い”に対する覚悟と準備ができる。

 よっぽどのことがない限り、“老い”ばかりは避けて通ることができません。“老い”とはどういうものなのか。それに襲われたら、具体的にどうしたらいいのか。

 これを予め知っているかどうかで、親御さんや自分自身の終末期が、大きく変わることもあるでしょう。

 

 認知症とはどういうものなのか。半身麻痺はなにが大変なのか。負担を軽減するために、どういった制度があるのか。介護職は、それらを自然に知ることができます。

 

 

③本来の人間らしさを取り戻せる。

 四季を感じることができる。ご飯を食べて、人と「おいしいね」を共有できる。楽しかったら笑える。辛かったら、涙を流せる。

 

 もちろん仕事にもよりますが、ただパソコンとにらめっこをして1日過ごしたり、なにひとつ“自分の言葉”と“自分の感情”を発しないまま、ひたすら“笑顔の仮面”を貼り付けて“定形文”を話して毎日終わる仕事って、結構多いと思うんですよ。

 私、介護の前の仕事がまさしくそんな感じで。それはそれで好きな仕事でしたし、疑問も持たずに頑張ってやっていたのですが、介護を始めて、「あぁ、私、なんか今人間らしく生きてる。」って思ったんですよね。

 

 介護は、利用者さんとの会話なしにはできませんから、否応なく、自分の言葉を話す必要があります。利用者さんの性格もいろいろ、疾患もいろいろなので、“定形文”じゃ済まされないんですよ。

 自分の言葉で話し、自分の顔で笑える仕事。それはもしかしたら、案外貴重かもしれません。

 

 

④笑顔が増える。

 少し②と被りますが、この仕事、とにかく笑うことが多いんですよ。まぁ全員が全員とは言えませんが、この仕事にある程度慣れることができた人は、どんなに忙しくても結構笑ってる。

 それは、利用者さんが笑わせてくれたり、みんなで楽しむ季節のイベントがたくさんあったり(四季折々の老人ホーム参照)するから。スタッフみんな、仮面の笑顔じゃなく、自分の笑顔で笑ってます。

 

 

⑤“死”を感じることができる。

 メメント・モリって知っていますか?ラテン語で「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句。転じて、「いつか必ず死ぬのだから、今を楽しみ、今を大事に生きよう。」ということ。

 

 “死”って、人間にとって当たり前に訪れること。なのにもかかわらず、現代においてそれは、まるで夢物語のよう。特に若者にとっては、イレギュラーに早死にしてしまった方の遺族か、特殊な仕事に就く人以外にとって、滅多に関ることがないことです。

 それを身近に感じるようになるのは、大抵、自分が老いた時。でも、「今を楽しみ、今を大事に生きる。」には、気付くのが遅すぎることもあるようで……。

 

 若くして人の“死”に関わるのは、人間としてとても大事で、とても貴重な経験だと、私は思います。

 

 

 

 

 

 いかがでしょう。この仕事は、人として有意義で、貴重な体験がたくさんできるって、少しは伝わりましたでしょうか。デメリットはあっても、真摯に取り組めば、メリットの方がずっと大きい。それが介護職です。

 

 常に人材不足に喘いでるこの業界。「仕方ないから介護職」ではなく、「やりたいから介護職」を選ぶ方が、ひとりでも良いから増えることを祈って……。