介護スタッフには男性も少なからずいますが、やはり女性の割合が高いのが現状です。その女性陣に、残念ながら嫌われてしまっている利用者さんがいます。もちろん、全ての利用者さんに分け隔てなく、愛情を持って接したいところではあるのですが……。

 わかってはいても、ごめんなさい。我々も、人間だもの。どうしても、「嫌だな」って、思ってしまう利用者さんも、たまにはいるのです。

 

 大きな声では言えないのですが、轟さん(男性・83歳)はおそらく、ほとんどの女性スタッフに嫌われてしまっています。もちろん嫌いだろうとなんだろうと、やるべき仕事はしっかりやります。でも、轟さんの介助に入る時は、「轟さんかショボーン」って少しテンション下がる……。

 

 そんな方は自立度が高いとありがたいのですが、残念ながら轟さんは中~高程度のアルツハイマー型認知症と心疾患を患っており、介護度は要介護4。ほんの少ししか立位もとれない為、トイレ誘導も、ベッドから車椅子への移乗も、全て介助が必要になります。

 

 嫌われる理由はいくつかあるのですが、一番の理由が、“セクハラ”です。これ、男の性かもしれませんが、やってしまうと、それはもう嫌われても仕方ないですよね。以前に書いた女好きの石井さん程度なら、「あぁ女好きなんだな、やれやれ(苦笑)」で済むのですが、轟さんはレベルが違います。

 

 “抱きかかえる移乗”をする時、轟さん、明らかに喜んでいるんです。スタッフのやり方や背丈によっては、どうしてもスタッフの胸に轟さんの体が当たってしまうようで、そんな時は

『気持ちエエなぁニヒヒ』 

とニヤニヤ。

 

 リハパン内で軟便をされ、便まみれになってしまった局部をトイレで拭いてあげていた時には、

『もっと触って酔っ払い

と、思いっきりニヤけた顔で言われ、思わず介助を途中で投げ出してしまいたくなりました。

 

 轟さんは、積極的に自分から触ってくるようなことはされませんし、そもそも発語が少ないので積極的にセクハラ発言をされることもありません(単にできないだけかもしれませんが)。

 だから轟さんのセクハラなんてまだまだ序の口。私は幸運にもまだ会っていませんが、スタッフにもっとひどいセクハラをする利用者さんなんて、この世の中、たくさんいると思います。

 

「轟さんはまだマシ、轟さんはまだマシ……。」

「轟さんは認知症。やりたくてやってるんじゃない。病気なんだから仕方ない!

 

 何度も自分に言い聞かせ、居室に置いてある、轟さんの現役時代の凛々しい写真を思い起こして、なんとかあまり嫌わないよう、丁寧に介助するように心掛けるのでした。

 

 

 

――― 轟さん、こんなこと言ってごめんなさい。

そして男性の皆さま、どうぞこんな認知症にだけはならないように、お気を付けください(気を付けられるのなら苦労はしないんだけど……。)