ネタがない、と思いきや、何かと気になるケアハウス。


あれは、まだ暑さの厳しい夏の日のことだった。


17時、さぁ、これから仕事だ!と意気込んでいたら、玄関のインターホンが鳴った。


見慣れた顔の女性入居者。

・・・と、一緒にいるのは警察官?!?!


ど、ど、ど、どうしたの?!?!


「この方が暑い中、歩道にずっと立っていらして、住民から通報がありました。こちらに入居されている方でお間違いないですか?」


「ええ、そうです」


「この方は何をされていたんでしょうか?」


・・・知らん!

私も、知りたい。


この女性、「散歩に行く」と言って外出し、歩道で1、2時間じっと立っている。

暑い日でも、雨の日でも風の日でも関係ない。

毎日だ。


ベンチにでも座っていれば、休憩中にも見える。

しかし、何もない歩道。しかも日陰でもない場所で、ずっと立っている。


そりゃあ、通りかかる人も気になるだろう。

私だって二度見する。


今回は警察への通報だったが、以前は区にも心配する連絡があったらしい。


とても優しい女性だ。

以前、胸痛の訴えで救急車騒動になった女性入居者の面倒を見ているのも、何を隠そう彼女である。


「散歩」は、彼女なりの気分転換なのか。

それとも、私には想像もつかない理由があるのか。


ただ、彼女にとって「散歩」が欠かせないものらしい、ということはわかる。


とはいえ、真夏の炎天下では心配だ。


施設長からは、暑い日は午前中に散歩を済ませてほしい、とお願いをした。


それから彼女は毎日、朝5時から7時まで散歩に出るようになった。


午前中と言えば、確かに午前中だが、

随分と思い切って前倒ししたものだ。


そんな彼女を見ながら、私は考えていた。


今のように身の回りのことができて、ここで暮らし続けられれば、彼女は散歩に出られる。

でも、介護が必要になり、玄関が施錠され、自由に外へ出られない施設に移ったら。


毎日の「散歩」を失った彼女は、どうなるんだろう。









彼女は、統合失調症である。