かなり前の話だが、今でも忘れられない出来事がある。

サ高住で週末アルバイトをしていたときのことだ。


ある女性利用者。

社交的で明るく、朗らかな人だった。


1週間ぶりに出勤すると、その利用者がベッドから落ちて骨折したとの申し送りがあった。


――その日から、その利用者は変わった。

以前のような活気も、明るい表情も消えてしまった。

カーテンは本人の希望で閉めっぱなし。

食堂で食べていた食事も部屋食になり、数口味見する程度でほとんど残す。

薬も拒否、入浴も拒否、着替えもしない。

ベッドからほとんど動こうとしなかった。


そんな状態が数日、そして数週間と続いた。

心配になった私はマネージャーに聞いた。

「このままで本当に大丈夫なんでしょうか?」


ーー「そうだね、訪問看護に来てもらえるようアポ取ろうか」


アポがいつだったかは覚えていない。

だが、その利用者は訪問看護が来る前に亡くなってしまった。


死因は、正直よく覚えていない。

けれど、マネージャーの一言は今も鮮明に残っている。


「死ぬ前に訪問看護に依頼かけといてよかったよ。

うちとしては、ちゃんと対策したっていう既成事実があるからね」


福祉の世界。

闇は、深い。