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サッカー小説「蹴り屋」



      
第一章 場当たり的、その場しのぎ、手探りの介護



     「ここどこや?あれだれや?なにしてるん?」テレビと母、その(5)


  2005/8/12(金) 午後 0:51 
 某月某日 会話が出来ると言うことは素晴らしいことだ。認知症であっても、関係はないのだ。私は「言霊」を信じている。

「あーっ、何してるん、また、入れ歯はずして、はずしたらあかんやんかー?」母は入れ歯を嫌がる。合わないようだ。

「ふん、、、ふん、、、」母は平然と、聞く耳もたぬ表情で。

「ほれー、そんなとこ、置いて、また失くしたら、どうするねんや、歯医者さんが、言うてたやろ~、入れ歯はずしたら、歯茎が痩せて、もの食べられんようになるから」と、母に私の口を見せて説得するのだが。

「しらん、はずしてない、いぃーやっ!」と負けずに母は、大口開けて私のほうに顔を向ける。

「ほ~ら、下の入れ歯ないやんか」案の定、下の入れ歯が無い。

「いぃーやっ!そんなおこらんでもよいでしょっ」と、悠々たるものだ。

「怒ってないで~、ご飯食べられへん、言うてんねんで~」

「たべてるわー!」

「噛まれへんやろ~、下の入れ歯無いんやから」

「かめへんのっー!」余裕綽々だ。

「あかん、あかん、ちゃ~んと、入れ歯しとかな」こちらの方が焦る。

「ここどこや?」と、素早く話をそらし、母はテレビを指差す。

「うん、何処かな~、ちょっと、分からんわ」

「あれだれや?」

「アナウンサーや」

「なにしてるん?」矢継ぎ早に話題を逸らす母。

「大阪な、昨日、37度もあって今年一番暑かったんやて~、そう言うたはんねん」
テレビの画面が変わる都度、似たような会話が続き、半時間後、母はようやく下の入れ歯を装着した。省略したが、この間に、入れ歯のことで「アホー、バカタレー」と母は面白そうに何度、私に言ったことか。ようするに、母は私を相手に会話で遊んでいたのだ。



ト書き:認知症を忘れ、親子二人で、茶の間での会話だ。当時を、思い出す都度「楽しかったな~、おふくろちゃん」と、私は、思うのだ。