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サッカー小説「蹴り屋」



      
第一章 場当たり的、その場しのぎ、手探りの介護



     「なんでこないなったんやっ!」テレビと母、その(3)


    2005/8/10(水) 午後 1:14
 某月某日 忘れると言うことは、限りなく、不安なものなのである。

「あめふってきたんちゃうかー?」と母が突然。

「降ってないよ、ああ~っ、テレビやんかー!」

「そうか?、くら(暗)いで~、ふってないか~?」

「ほ~ら、見てみぃ、なっ、此処は、降ってないで」ベランダを指さし、母を促す。

「なんで、こっちはふってるん?」母がテレビ画面を顎で指し。

「それはな~、テレビのドラマで、雨の場面やねん、こっちは降ってないから」

「ややこしいな~、こっちふってんのにな~、なんのドラマや?」

「2時間ドラマや、見てんのんかいな~」

「だれかな~、しらんひとが、あたまから、ちぃーだしてんねん、どうしたん?」

「なんか、事件でも起きたんちゃうか?」

「どこでやー?」

「東京やろ~、此処は」

「はは~ん、にいちゃんな、さっきから、ず~と、わたし、みとんねん」

「あの人がかー?、何で、お袋ちゃん、見るんや~?」

「しらんねん、おおきな、め~して、みとんねん、あほちゃうかーっ!」

「そう言うな~、ドラマの役をやったはんねん!」

「やく?、ってなんや?」

「お芝居してはんねんやん!」

「しばいか?これわ~」

「そうやんか、テレビの芝居やで~」

「なんでこないなったんやっ!」ドラマの展開が、母には腹立たしいのだ。私も同感だ。

「芝居やから、そんな、怒鳴らんでもえ~やん」と、一応言ってみたが。直ぐに。
しまった。母には、見たものは、全て現実なのだ。この後、口角泡を飛ばす勢いの母の口撃にたじたじとなった私(ほんまに修行が足りん)。




ト書き:テレビと母、と、題したが、普段の母は、殆ど、テレビを観ない、私が野球観戦する時と、ニュースを乍観する時だけなのだ。