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サッカー小説「蹴り屋」



      
第一章 場当たり的、その場しのぎ、手探りの介護



     「からこ~て~、どついたろかっ!」知らんねん、その(4)


   2005/8/4(木) 午後 0:26
 某月某日 認知症、人によりその症状は千差万別。症状に応じた対応を迫られる。それも瞬時に判断しなければならない。

「お袋ちゃん、服、着替えようか?」

「ふん、そやな~」

「これにしょうか、今日は?」

「あいよ」

「わー、よ~似会うは、格好え~な、え~色やしぃ」

「わて、このいろスキきやねん、にいちゃんよ~しってたなっ!」

「ひらひら、付いてるで~、あっ、そこは、ボタンないねん、それはなあ、飾りやからなっ!」

「でけへんねん?して~、ここ!」と、母が顎を上げる。

「そやからな、そこは、ボタンついてないねん、飾りやねん、そやから、シャレてんねんやん」

「なんか、おかしいんちゃうん、こないなってんでぇ?」母は服をひっくり返そうと。

「二重になってんねんやん、この上のヒラヒラのやつは飾りやから、ボタンないねん」

「そうか、おかしいな~、ちゃうで~、みてみぃ、こんなんやでぇ、だれがこうたん?」

「うん、姉ちゃんが、買~うてきてくれてんやで~」

「ねぇ~ちゃん!、なんでやー!」

「いつも、買~うてくれるやん、これも、そうやで~」

「しらんねん、そうゆ~ことか???」

「そうやで~、よ~似合~うてるで」

「なんぼ、したん?」

「聞いてへんけど、格好え~から、高かったんちゃうか?、分からんけど、お袋ちゃん、色白いからな~、よぅ~似合うわ!」

「からこ~てー、どついたろか、ふふ~ん」

「わっー、どこで、覚えたん、そんな言葉!!」

「しらんわー」
ヒラヒラを気にしていたが、どうやら、ご満足の様子だ。表情が和やかである。




ト書き:笑顔が、一番で、母から、これを引き出せれば、認知症の介護していることなど、私は忘れてしまうのだ。