「きいてへんのかいなっ、きいとかんかいなー!」テレビを見る、その(2)
2005/7/20(水) 午後 0:39
某月某日 認知症は病気である。病気であるから、看護してやらなければならない。もちろん、介護もである。母と共に暮らすということは、母の世界に私が進んで入って行かなければならないのだ。
「0000あるでー、8時になったら、見よか~?」新聞のテレビ欄を見て私が母に。
「ほんまー、みるわー!」
「そやから、お袋ちゃん、早よ、ご飯食べや~」
「わかってるがな、たべてるわー、あー、またこっちみとるわー、なんでやのん?」
「お袋ちゃんが、ご飯食べへんからな、何ぐずぐずしてるんや、思うて見てるんちゃうかな~」と、水を向けてみた。
「そんなことない、さっきから、みとるねん、わて、わかってるわー」
「え~やんか、見てるだけやから」ちょっとからかい気味に言う。
「はらたつねん!、わーわー、しゃべって、みとるからっ!」テレビ画面を睨みつける母。
「うん、喋べりはんのが、商売やから、仕方ないんちゃうかな~」
「あれ、だれや?」
「コマーシャルやから、分かれへんわ」
「ここどこやのん?」
「そやからな~、コマーシャルやからなあー、、、何処かな~?」
「あんたも、わからんのんかいな~、あかんなー!」と、バッサリだ。ある、クイズ番組だ。どこで、CMが入るか解らない。どうやら、母は食事に飽きてしまったらしい。テレビに釘付けになった。
「はっははー、にいちゃん、このひと、おもしろいな~、わてみて、あたまばっかりさげてるわ~」
「そうやな、腰の低い人やな~」
「うん?なにがひくいてぇ」
「うん、腰がな~低い、言う~てんねん」
「わからん?なにゆ~てんのんか?」解らないことは、キッチリ聞く母。
「なー、にいちゃん、いま、なにゆ~たん?」再度CM。
「う~ん、、、、、、、、、、」(母にどう説明しようかと考えていた)。その矢先に。
「なんやっ!、きいてへんのんかいな、きいとかんかいなー!」なかなか母の世界に入り込めない。(修行が足りん)。母の好きなドラマ(水戸黄門)が始まる8時まで、あと5~6分だ。
ト書き:水戸黄門、懐かしい、母は、これだけは、欠かさず、観ていた。オープニングの歌を、何時も一緒に歌うのだ。