「かいごさぶらい上巻の続き、下巻。
「あまない!、おいしないわー!」母の気力、その(27)
2006/8/25(金) 午後 0:34
某月某日 衣食住。私は、全く料理が出来ないので、母に何を「食」させるかで、毎日悩む。母の食が細くなっていくのも無理はないのだ。
「出来たよう、お袋ちゃ~ん、さあ、食べましょか~」
「うん」母が、食事に興味を示さなくなってくるのも当然か。
「どうしたん?、ほら、熱いうちに食べようや~」
「これしてんねん!」と、母は、ティシュペーパーを箱から一枚一枚取り出しては、丁寧に折り畳んで、積み上げる作業(母の大好きなお仕事)の真っ最中。
「そやからな~、ご飯食べてからしたらえ~やん、僕も手伝うからな~」
「うん、あんたもするんか~」
「やったるよう、そやから、食べてからしよう」最近は、母の仕事を「手伝う」と言わなければ、食事を摂ってくれなくなって来た。
「これか~!、なんや~?」
「五目ご飯やでぇ、熱いうちに食べや」
「ごもくぅ!」
「あっ、ちょっと、待って!」母が、入れ歯をしていないのに、気づいた。
「なんやのん?」
「お袋ちゃん、入れ歯どうした?」
「しらんでー?、してへん」私は、急いで、母の座っている周りを探し始めた。(入れ歯の紛失は何度も経験している)。
「なにしてんのん!?」私が、ばたつくと、母はしっかり見ている。
「うん、お袋ちゃんの入れ歯探してんねん」
「いらん!」
「いらん、って、しとかな、ご飯食べられへんやん、何処やったか、お袋ちゃん分からんかなあ~」
「わからん!」
「あっ、あったーっ!」母のティシュペーパーの箱の中に、幾重にもティシュで包んだ堅いものの手応えがあった。中から母の入れ歯が無事出てきた。
「どうすんのんそれ?」入れ歯を見入る母。そんな、母に、口元へ、入れ歯を装着させようとしたら。口元で、入れ歯を食べ物と勘違いしたのか、舌先でなめ回し始めた。
「ちゃう、ちゃう、そんなして、舐めるもんちゃうやんか、口にはめなあかんねんでぇ」
「あまない!、おいしないわー!」(うん、お袋ちゃんの言う通り、入れ歯は甘くもないし、美味しくもない)。「入れ歯、何とか甘~うならんかな~」と思ったこともあった。
ト書き:捨てたりはしない、母は昔人間、物を、ことのほか、大切にするのだ。入れ歯も、母なりに、大事に、しまっていたのだ。
