第三「世話と介護とは?」テレビを見る、その(8)  


           
        「ここどこや?あれだれや?なにしてるん?」テレビを見る、その(8)


2005/8/12(金) 午後 0:51
某月某日 会話が出来ると言うことは素晴らしいことだ。認知症であっても、関係はないのだ。私は「言霊」を信じている。


「あーっ、何してるん、また、入れ歯はずして、はずしたらあかんやんかー?」母は入れ歯を嫌がる。合わないようだ。


「ふん、、、ふん、、、」母は平然と、聞く耳もたぬ表情で。


「ほれー、そんなとこ、置いて、また失くしたら、どうするねんや、歯医者さんが、言うてたやろ~、入れ歯はずしたら、歯茎が痩せて、もの食べられんようになるから」と、母に私の口を見せて説得するのだが。


「しらん、はずしてない、いぃーやっ!」と負けずに母は、大口開けて私のほうに顔を向ける。


「ほ~ら、下の入れ歯ないやんか」案の定、下の入れ歯が無い。


「いぃーやっ!そんなおこらんでもよいでしょっ」と、悠々たるものだ。


「怒ってないで~、ご飯食べられへん、言うてんねんで~」


「たべてるわー!」


「噛まれへんやろ~、下の入れ歯無いんやから」


「かめへんのっー!」余裕綽々だ。


「あかん、あかん、ちゃ~んと、入れ歯しとかな」こちらの方が焦る。


「ここどこや?」と、素早く話をそらし、母はテレビを指差す。


「うん、何処かな~、ちょっと、分からんわ」


「あれだれや?」


「アナウンサーや」


「なにしてるん?」矢継ぎ早に話題を逸らす母。


「大阪な、昨日、37度もあって今年一番暑かったんやて~、そう言うたはんねん」
テレビの画面が変わる都度、似たような会話が続き、半時間後、母はようやく下の入れ歯を装着した。


 省略したが、この間に、入れ歯のことで「アホー、バカタレー」と母は面白そうに何度、私に言ったことか。ようするに、母は私を相手に会話で遊んでいたのだ。




ト書き:食事中、このような、会話が弾み、その後も、母の表情は、綻び笑顔は、続いたのだ。