2014年12月23日に救急搬送され、一番最初に行ってもらった治療が
t-PA(組織型プラスミノゲンアクチベーター)
と呼ばれるものでした。
一応、説明はされたんですが、詳しいことはよくわかりませんでしたが、先生は解りやすく説明をしてくださいました。
このt-PAと呼ばれる脳梗塞の治療ですが、先生の説明いわく、
脳梗塞は、動脈硬化で脳の動脈が狭くなったり、心臓などから血栓が剥がれて流れて来たりして、脳の血管が詰まる病気です。
脳細胞に栄養や酸素が送られないと細胞が死に、半身麻痺などの後遺症や死亡に繋がります。
とのことです。これは、理解できました。
ここからが少々専門的な説明だったのですが、この治療において、
血栓溶解剤 t-PA は、組織型プラスミノゲンアクチベーターの略で、血管を詰めた血栓に付着して、効率よく血栓を溶かす働きがあります。
血栓に親和性が高く、手足の静脈から通常の点滴で十分な効果が得られるとされています。
この t-PA は、
効果が強い分、副作用も大きい、両刃の剣
でして、
施設基準が厳しく制限されているようでして、基本的には、治療講習を受けないと使うことが出来ません。
そして、血栓が溶けたときに、もろくなっていた閉塞血管から出血することが多いので、出血がひどくなった場合に、手術対応が出来る脳外科設備のある施設で、脳卒中専門医が用いることが原則です。
とのことでした。更に続けて、
ここで、特に出血をきたしやすい重症脳梗塞患者として、
- 神経症状が重篤な方
- 75歳以上の高齢者
- CT上広範囲の早期虚血性変化
- 高血糖
- 抗血栓薬使用
- 低血小板数
などでは、十分な注意が必要で、 t-PA の有効性と重篤な出血の危険性についても、治療開始前に患者および家族と話し合うことが必要とされています。
脳出血を起こしても、脳梗塞で壊れた部分に、にじむ程度に出血するだけなら症状の悪化はないので、心配いりません。
逆に言えば、血行が再開すれば、脳が痛んだ脳梗塞巣に出血するのは、ある程度やむを得ないことでもあるのです。
これを最小限にし、助ける虚血部位を最大限にすることが、治療のゴールになります。
時間が経って、梗塞が完成してしまった部位に再開通すれば大きな出血を引き起こすことになります。
危険をよく見極めつつ早い投与が望まれます。
このような説明を受け、この治療ができる施設で、且つ、専門医が在籍している、この病院に搬送されたことは非常に良かったのだと、この時点で感じました。
とにかく今の現状は、
- 左半身不随状態
t-PA 使用基準として、CTだけで治療を開始できますが、当院では、さらに診断を確実にし、危険を評価するため、病院に搬入後、CTで梗塞の診断がついたら、MRI 特にDiffusion(脳のむくんでいる範囲:助けられない部分)とMRA(詰まっている太い血管が判る)を20分程度で撮り、この間に患者家族に十分にインフォームドコンセントをした後、可能なら患者自身の了解も得て、3時間以内に t-PA を静脈投与することにしています。また、脳梗塞で増える毒素の吸着剤(ラジカット)を直ちに使用し、 t-PA 投与後は、高気圧酸素療法(HBO)を実施して、脳浮腫を防ぎ、再開通まで脳細胞の死を先延ばしにするようにしています。
治療は、脳梗塞発症後、出来れば1時間以内に開始したいものであり、早期の判断が必要です。しかし、落ち着いて判断するようにしてください。また、心臓に近い太い血管ほど、再開通せずに広い範囲の脳梗塞になって命の危険が24時間前後で発生してきます。この時には、開頭手術も必要になる場合があります。
その後、治療予定について説明を受けたのですが、怒涛の1週間になる予定でした。
一般的な治療予定としては、
入院 | CTやMRI 血液検査 | 診断確定・治療方針説明 |
脳梗塞確定 30分 | ラジカット開始 |
脳梗塞による毒素の軽減
高齢者・腎不全注意 |
t-PA の実施 60分 |
一部静注
その後、1時間かけて点滴 |
危険と効果のバランスの説明を受け、本人家族の了解 |
高気圧酸素療法の実施 90分 |
加圧15分2気圧
100%酸素1時間減圧15分 |
危険と効果のバランスの説明を受け、本人家族の了解 |
3時間後のMRI | 血栓溶解再開通〜変化無し・出血まで判断 | 経過説明 状況により追加の治療、血圧管理 |
24時間後のMRI | 血栓溶解再開通〜変化無し・出血まで判断 | 経過説明 抗血小板剤や抗凝固剤など開始の判断 |
24時間から3日 | CTなど脳浮腫判定、リハビリ本格化 |
広範囲梗塞では脳ヘルニアの危険
時に手術が必要 |
7日から10日目 | リハビリ治療経過 |
説明
リハビリ病院の選定 |
この治療予定の中には、
高気圧酸素治療
も含まれており、酸素カプセルに入って行う治療なんだそうです。
この頃には、スポーツ選手が怪我をしたときなどに、酸素カプセルで療養することで、自然治癒力を向上させるものと同様の考えの元、この治療が行われているとのことです。
ただし、 t-PA と高気圧酸素治療を同時に行う場合、リスクもあり、血管が弱い人の場合、高気圧酸素治療中に出血をして、手術に移行する場合があるそうです。
ここで、出血をした場合、他の後遺症が発症してしまうこともあるとのことです。
たまたま、父の場合、血管が強かったようでして、 t-PA も高気圧酸素治療も上手くいき、後遺症が最小限に抑えることが出来たという運もあったようです。
この投薬治療ですが、結果が見えてくるのが3日程度かかるようで、その間、母共々、ドキドキしながらの数日を過ごしました。
3日後、主治医の先生からの説明とのことで、父・母・私が呼ばれ、治療経過を伺いました。
その結果、父のMRI画像を見ながら説明を受けたのですが、投薬・高気圧酸素療法を併用し、本来2本ある血管のうち1本が再開通しましたとのことでした。
これにより、完全に左半身麻痺になることはなく、これからのリハビリに励んでくださいとのことでした。
先生からの説明の後、一旦、待合室に通され、これからのリハビリの治療計画を専門チームから伺うことになりました。
2014年12月26日