楽観できないネット証券の新規口座開設ペース
インターネットを通じて株式取引を仲介する証券会社、いわゆるネット証券の口座開設ペースが鈍化しています。
ネット証券の専業大手5社の10月の新規口座獲得数は、5社合計で4万9635件と、9月と比べてわずか1%弱の伸びにとどまりました。大手5社のうち、10月の口座増加数が9月実績を上回ったのは、楽天証券とマネックス証券の2社のみで、残り3社(SBIイー・トレード証券、松井証券、カブドットコム証券)は、減少傾向が続いています。
ネット証券の口座開設ペースが鈍化した理由として、日本の株式相場が活気づいていない点が指摘されています。日本の個人投資家の多くは、株式投資の場合、株を買い、そのまま保有するスタイルをとる方が多く、短期的に利益を得るためには株価の上昇が必要となります。昨年は、日経平均株価が40%以上の上昇率を記録するなど、日本の株価は上昇基調にあったので、昨年、日本株投資をしていた個人投資家の多くは利益を得たと言われています。そして、利益を得た個人投資家が増えるに従い、今まで株式投資を経験していない方々が、利益が得られる個人投資家になるべく、ネット証券を中心に証券口座を開設したとも言われています。
しかし今年に入ると、ライブドアの強制捜査をきっかけに日本株は大きく下落し、その後も上昇基調に入りきれない展開を続けています。このため、日本の個人投資家の多くは、昨年のように株式投資で利益を得ることができておらず、株式投資の未経験者が証券口座を開設するケースも少なくなったといわれています。
仮に、こうした指摘が正しいものであれば、日本の株価の上昇率と、ネット証券の口座開設ペースは、ある程度、連動性が高いことになります。ただ今後、日本の株式相場が盛り上がり、日本の株価が上昇したとしても、ネット証券の口座開設ペースがすぐに高まるとは考えにくいと思われます。
株価が上昇すればネット証券の口座開設ペースが高まる、という考え方には、「ネット証券に口座を開設しようとする方々は、短期で利益を得たい方々である」という前提があるように思えます。当然のことですが、ネット証券に口座を開設する理由が、短期で利益を得るためだけではありません。
日本景気、ひいては日本の雇用・所得環境が、昨年よりも改善している点にも注意すべきでしょう。所得を得るために、朝から夕方までPCの前で株式投資をしなくても、会社に勤務したり、ビジネスを始めることで、利益もしくは所得を得る機会は昨年に比べ高まっています。言い換えれば、ネット証券で口座開設をし、株式投資から利益を得ようとしなくても、それなりに利益を得るチャンスは増えているといえます。
日本は米国に比べ個人投資家の割合が低く、政府が「貯蓄から投資へ」と掛け声を出していることもあって、日本のネット証券利用者数は今後も伸びるといわれています。たしかに、長期で考えれば、ネット証券の利用者数は今後も伸びることでしょう。しかし、長期的に正しいことが短期的にも正しいとは限りません。昨年、ネット証券の口座数が急激に拡大したことを考えれば、今年は調整局面を迎えても不思議ではありません。日本の株価にかかわらず、ネット証券の口座開設ペースは、今後も厳しい状況を続けると思われます。
村田雅志(むらた・まさし)